45.はたらくってなんだろう。
はたらくってなんだろうと考える。
すぐに思考が停止し、「はたらくって何だろう??」と、はてなだけが増えました。
なぜ働くのか、といったタイトルの本を何冊かみたことあるぞ!と思い、本屋さんに行こうとしたけれど、やめました。
本を読むのが面倒になったわけでも、このことについて書くのを辞めよう、と思ったわけでもありません。
僕は社会人4年目のサラリーマンです。
入社以来、同じ会社で働き続けています。
この4年間、生活のどんなことよりも多い時間を「はたらく」ことに費やしてきました。
そんな状況下で、「はたらくってなんだろう」の答えを自分の頭で見出せないようでは、かなりマズくないか!と思ったのです。
このままズルズルズルズルと、はたらくことが何なのかわからないまま、定年を迎えるのは、たぶん悲しいことだと思います。
(そもそもそんなメンタルでは定年まで働けないような気もする。)
まずぱっと思い浮かぶのは、「お金」です。
働いて、対価としてのお金を頂いて、そのお金で生きる。
「稼いだお金で有意義な生活をしたり、家族を養ったりする。そのために働いているんだ。」
至極まっとうな意見だと思います。
では。
食うに困らぬお金が突然降ってきて、億万長者になるとしましょう。
はたらくことを、やめますか?
この問いは意見が分かれるかもしれません。ここで、「はい。辞めます!」ときっぱり答えられたら、
「はたらくってなんだろう」の答えが「生活をするためにお金を稼ぐこと」となるかと思います。
でも僕は悩んでしまいました。そして今の会社は辞めるかもしれないけど、はたらくことは、やめないだろうと思ったのです。
はたらくってなんだろう。また、スタート地点に戻りました。
頭の片隅に、どうして働いているのか、を置きながら僕はコツコツと働き続けました。
そんな日々の中。
僕は好きな作家のインタビューをネット記事で読んでいました。
小学生の頃は国語のテストが苦手だったんです。なぜかというと、たとえば「『風がぴゅーぴゅー歌っている』とはどういう意味ですか」という問題の意味が分からなくて。
風はぴゅーぴゅー歌うもんだと思っているから、何を訊かれているのか理解できないんです。「いや、歌ってるじゃん。そう書いてあるのにそれ以上何を答えるんだ」って。
中学生になって塾に入って、「『風がぴゅーぴゅー歌ってる』というのは、風が音を立てて吹いているという描写である」と答えるものだよ、と教えられた時に、「あ、国語のテストって文章の解像度を下げろってことなのか」と分かって、そこからもう、信じられないくらい成績があがった。
すとん、と腑に落ちるものがありました。
大学を卒業して、会社に入って、働いて。
いったい何が変わったのか。
月並みではありますが、社会が誰かの仕事で成り立っていることを実感しました。
こんなことを言うと「何をいまさら」と笑われるかもしれません。
でも僕は、はたらくことでしか、その実感は得られませんでした。
はたらくってなんだろう。ようやく自分の意見がまとまりました。
前述した作家さんの言葉を拝借させて頂きます。
「はたらくってなんだろう」 それは 「社会の解像度を上げること」だと思います。
例えば、皆さんの家にハガキの通知物が、よく届くかと思います。
なんでも構いません。
クレジットのご利用明細、公共料金のお支払い通知、よくわからないキャンペーンのDM。
それらの宛名の面にQRコードが印刷されてある場合があります。
そのQRをスマホで読み取ってみても、よくわからない数字の羅列が表示されます。
実はこのQRコード、印刷会社が個々人のハガキの印刷や加工の工程がきちんと行われたかのログをとるためのものだそうです。
誰のどの通知物がいつ、印刷されたのかを管理し、品質を保証しているそうです。
僕はこのことを知るまで、ハガキにあるQRコードの存在すら知りませんでした。
はたらいていると、今まで気にも留めなかったモノやコトに目が留まるようになりました。
今までいかにぼんやりと、解像度の低い視野で社会を見ていたのかを実感させれました。
はたらいてみて、今まで名前も知らなかった会社が、その分野ではとても有名な会社だった、ということが多々ありました。
はたらいてみて、普段食べている食物が、着ている衣服が、生産者、物流会社、小売店などの長い長いリレーの末、自分の手元にやってきていることを理解しました。
はたらいてみて、間接的ではあるけれど、でも確実に、誰かの仕事が誰かの生活を助けていることがわかりました。
はたらいてみて、世の中が、少しだけ鮮明になりました。
ほんの少しずつ解像度があがってきました。
もちろん、そんなことは働かなくてもわかる人には、わかることなのかもしれません。
でも僕は賢い人間ではありません。
一般企業に勤めて、「社会」と言われるものの内側に身を置いて、必死に働いて、ようやく、自分が社会を見る解像度があがっていることに気が付いたのです。
僕はこれからも、はたらきます。社会の解像度を上げるために。
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