展示会における「壁面グラフィックデザイン」の手法
今回の事例は、2024年4月24日~26日まで東京ビッグサイトで開催されたJAPAN IT WEEKでのブースデザイン。本記事では、壁面のグラフィックデザインの考え方についてお伝えいたしましょう。
空間系のグラフィックデザイン
一言に「グラフィックデザイン」と言っても、平面でのグラフィックデザインと、空間系でのグラフィックデザインでは考え方が多少異なります。また、同じ空間系のグラフィックデザインでも、住宅系と商業系ではまた考え方が異なってきます。そして、さらに、商業系の中でも、店舗などの商業施設と、展示会におけるグラフィックデザインはまた異なるのです。
さて、今回は、その展示会におけるグラフィックデザインの中でも、ブースの壁面、もっと細かく言うなれば、「通路に面した場所」にある壁面に描くべき壁面グラフィックデザインについてお話しいたします。
「引き寄せる」という機能を軽視しがち
展示会ブースにおいて、「通路際に掲示する壁面」に持たせるべき一番の機能は、離れた場所を歩く来場者を自社ブースの前に引き寄せること。
多くの展示会出展社がブースデザインを検討する際に、「どのように説明するか」については検討していますが、どのように来場者を引き付けるか、という点については、「目立つようにして集める」という程度にしか考えていない、と日頃多くの出展社の皆さんと話していて感じています。
通路幅が3mの場合、来場者は概ね真ん中辺り、つまりブースの前から1.5m程離れた場所を歩きます。通路幅が5mの場合には、ブース境界線から2.5mの辺り。つまり、通路の幅が広ければ広い程、通路を歩く来場者を自社ブースに引き寄せることは難しくなるのです。
そのために、ブースにおいて、通路に接しているいる部分をどのようにデザインするかは、集客の成否を分ける重要なポイントとなります。
この観点から、通路に面する部に分にある壁面のデザイン、今回の場合、グラフィックデザインとしてどのようなデザインを選択するかは、重要なポイントとなるわけです。
今回のJAPAN IT WEEKにおけるブースは、通路際に「来場者引き付け用」の壁面グラフィック(及び展示台)を設け、そのために、壁面の記載内容、文字の大小、色などを使い分けるようにします。
今回のこちらのブース。ますは、その壁面には何が描かれているかが、遠くからでも分かるように、来場者の「頭より上」に、少し大きな文字で記載しています。イメージは数メートル前から読めるように。背景に余白を広めにとった黒のベースを敷いて視認性を高める工夫を。
一方で、来場者が読みやすい高さの部分の文字は、50-60㎝程度前から読むことを想定した文字サイズに。ただし、遠くから「何だろう?」と思ってもらいたいので、今回は「16.3%」の文字は大きく。そして、その数字が何なのかは、近づかないと分からない文字サイズにしています。
ブース壁面には白・黒のモノトーン系の他に、黄色を活用しています。「黄色」は展示会において視認がしやすい色。そこでアクセントカラーとして使用しました。
さて、 これら壁面に記載しているものは、「引き付ける」役割。おそらく展示会への出展が多い方であればあるほど、「これだけの情報のみで大丈夫?」と思われることでしょう。しかし、壁面にどれだけ書き込んでも来場者は多くの時間、その場で読んではくれません。
では、どうするか?
それは、壁面は基本的に「引き付ける」役割に徹したデザインにして、詳細な説明は、その下にバインダーで閉じているパワーポイントの営業用資料やパネル化した図などを使用する、という形式をとるようにすると効果的です。
多くの出展社は、壁面をデザインする際に「その壁面だけで情報を完結させなければいけない」と思いがちなのですが、大切なことは情報を書き込むことではなくて、その情報を相手に「伝えること」。
この「伝えること」が目的であることを理解すると、何も壁面だけでなく、その下に設置した閲覧資料や配布資料などを合わせて、壁面全体として考えればいいのだ、ということに気が付きます。
ちなみに、ブースの奥は詳細説明のエリア。ここの壁面デザインの方法はまた異なります。ここは、見込み客に対して、具体的なことを話すエリア。なので、カバンを置いたり座ることができる「箱イス」を設置して、壁面には、説明時に使いやすい便利な図などを入れておくようにします。
展示会において、通路の真ん中を歩いている来場者を自社ブースに引き寄せることは、想像以上に難しいこと。だからこそ、壁面グラフィックにおいても、戦略的に構成することが必要です。
〇もう少し詳しい説明は下記より
〇もっと詳しい説明は下記にて
ちなみに、今回のブースのお客様は、ウェブ制作、業務システムの開発を手懸けられている株式会社ベイジ様のブースです。
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