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展示会出展に失敗する時/よくある5つの事例


出展すればいい、というわけでない

展示会には、ターゲットとなるお客様(来場者)が会場に大勢やってきます。1社1社営業にいく必要がないため、効率的に営業活動ができる、という点においてとても効果的な販促活動、と言えることができます。
しかし、以前「展示会出展のメリット・デメリット」の稿でも解説しましたが、多くの出展社がいる展示会場において、出展したからといって、必ず見込み客の方が自社ブースに訪れてくれるとは限りませんし、出展すれば確実に出展成功する、というわけではありません。
本稿では、少し耳の痛い話になりますが、私が日頃出展者の方と接している中で「展示会出展に失敗した事例」についてお話したいと思います。

まず、当然のことではありますが、数百、数千の出展社がいる中で「ただブースを作って出展しただけ」では、結果が出るはずがないことはご理解いただけるかと思います。通常、東京ビッグサイト等の大型展示会場で開催される展示会には数多くの出展社が参加されています。来場者の多くは、限られた時間の中でブースを回っていますし、もし時間があっても全てのブースを回るわけではありません。通常は「会場内を歩き回って、気になったブースのみに話を聞く」ことになりますので、限られた時間内で効率的に会場を回ろうとする来場者に「いかに足を止めてもらえるか」、このことが、重要になるのです。
とは言うものの、「出展すれば、何とかなる。出しさえすれば結果は出るだろう」と安易に考えてしまっている出展社の方は想像以上に多くいらっしゃいます。具体的な対策を行わず、用意した展示台になんとなく商品を並べ、壁面にA1サイズのパネルやポスターを貼っただけ、といった出展の仕方をした場合には、まず間違いなく失敗する、と考えておいた方がよいでしょう。何百、何千という出展社の中で立ち止まっていただくためには、何らかの対策が必要となるのです。
これらを考えた時、「ブースのつくり方が出展結果に大きな影響を与えるので、ブースのつくりはとても大事」、このことには多くの方が共感をしてくださるのでないでしょうか。そのことから私は日頃セミナーや著書によってブースデザインのデザイン方法についてお伝えしているのですが、一方で、ブースをデザイン良く作っても来場者が集まらないことも多々あります。そして、いかに戦略的なブースを考えても、失敗することが実際には頻繁に起こり得ます。それはどんな場合なのでしょうか。少し例を挙げて説明をしましょう。

出展に失敗する「5つのパターン」

当社は、日頃出展社の方向けに展示会集客セミナーを行っているのですが、セミナーにお越しいただいたお客様の中に、このような方がいらっしゃいました。

1.「デザインはよいが来場者があまり寄って来てくれなかった」

もっとも多いのが「デザインのよいブースを作ってもらったが、結果的に来場者がほとんど寄って来てくれなかった」という方。
出展経験者の中には、このような経験をされた方は多いのではないでしょうか。これは、ブースがきれいに作られているだけで「人を集めることを考えていない綺麗なだけのブース」だった可能性があります。「デザインが好きなデザイナー」がデザインしたブースにありがちなことで、「集めること」よりも「デザインがよい」ことを優先してしまっている場合にこのようなことになります。

2.会期中の「接客方法」が良くなかった

また、このような声もあります。
設営会社が、「このように集客しましょう」とロジカルに説明してくれてブースを作ってくれたが、お客さんが近づいて来てくれない。といった内容です。これは、その集客のロジックが間違っていた、ということもあるかもしれませんが、それ以上に可能性があるのは、ブースは集客ができるように考えられてはいても、出展社の方自身の会期中の「立ち方・待ち方」つまりは「接客方法」がよくなかったがために集まらなかったという理由です。

3.会期後の「後追い」の体制が出来ていなかった

その他にも、事前検討をしっかりと行い、ブースをロジカルに作った、結果として来場者が多く集まり、多くの名刺を獲得できた、という場合でも、最終的な結果としては出展が失敗した、という例もあります。
例えば、展示会に出展をして多くの来場者と名刺交換をしたが、「後追い」がうまく行かず、結果的に効果がなかった、という出展社の方。この方の場合の理由として考えられることは、展示会に出展すること自体が目的になってしまっており、展示会終了後の「後追い」の人員計画等の方法を事前にきっちりと詰め切れていなかった、という原因が考えられます。

4.事前の目標設定が甘かった

また、こんな方もいらっしゃいます。
ブースに多くお客さんが集まったが、思っていた客層と違っていて、「本当に来てほしい来場者ではなかった」という場合。他にも、思った通りの客層が来てくれたが、結果的に「売上」にはつながらなかった、ということもあります。これらは展示会前の目標設定等が曖昧だった場合で、ブースに掲げたキャッチコピーの内容等がずれていた可能性があります。これはブースの検討を始める前に、どんな来場者と出会いたいのか、どんなターゲットに訴求すればよい結果が出るのか、どんな受注ができれば自社の経営層が納得するような会社の売上に結びつく結果が手に入るのか、「事前の目標の設定が甘かった」ということになります。

5.「出展すること」自体が目標になっていた

これらの他に、このような事例もあります。会社から展示会出展の担当者に指名され対応したが、なぜか結果が出ない。このような場合、その企業が頻繁に展示会に出ていて慣習的な手法で毎回出ており、「いつの間にか惰性で出展しており、出展すること自体が目標になっていた」という場合です。日頃、様々な出展者の方とお話していると、意外にこの事例も多くあることに驚かされます。担当者ご本人はやる気があったとしても、会社自体がそのような雰囲気になってしまっている、という場合もありますので、この場合、自社の状況を改めて見直してみることも大切です。

出展に成功するためには

このようなことからお分かりのように、展示会出展に成功するためには、効果的なブースを作ることがまず基本的にあり、そのブースを活かすために「事前の目標設定」等があり、展示会を得た後の結果を確実なものとするために、「展示会後の後追いの工夫」が必要、ということがお分かりいただけたかと思います。
どんなに戦略的なブースを考えても、ターゲットが曖昧であれば、大きな結果は得ることはできません。また、何を得たいのか明確になっていなければ、結果が出ても会社の利益につながらなかったということも多分にあります。戦略的なブースをつくるためには、「会期前」にどれだけ社内で話し合っておくかはとても重要で、とくに経営者が何を望んでいるのか、なぜ出展しようとしているのかをヒアリングしておくことは、必ず行うべき項目になります。そして、それらの内容を展示会担当者の中で共有し、ブースへと反映します。これら「会期前」の検討内容は、ブースに設置または掲示する商品・サービス説明が影響を与えるだけでなく、ブースに掲げるべきキャッチコピーやスタッフ達のお声がけの言葉までにも影響を及ぼします。これらキャッチコピーや会期中のスタッフの動きについては、別の記事にて改めてお伝えしたいと思います。
展示会出展に関わる一連の流れを「会期前」「会期中」「会期後」に分ける考え方は、これまでにも様々な展示会関係者の方によって話されてきました。当然と言えば当然の考え方なのですが、展示会出展を決めた時点で、この3つの段階について抜かりなく検討を行っておく必要があります。
私が日頃お話する内容は主に「会期中」に関わるブースの考え方をお伝えしています。一方で、「会期前」や「会期後」の行動に関してはほとんど触れません。目標設定の詳しい内容や自社分析の方法、また会期後のフォローの仕方については、マーケティングや企業ブランディングを専門分野とする展示会コンサルタントやブランドマネージャーの方々が行うセミナーや本がありますので、そちらも合わせて見ていただければと思います。

ここでは、まず展示会出展には、「会期前」「会期中」「会期後」という3つの段階があり、最終的に出展に出展するためには、この3つの段階それぞれをしっかりと検討していなければいけない、ということを覚えておいてください。


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