絵本探究講座第2期(ミッキー絵本ゼミ)第1回目振り返り(9/11)

いつもは毎朝読んだ絵本を簡単にご紹介している、こちらのページですが、長文の投稿もたまにすることになりました。

というのも、この9月から、東洋大学の竹内美紀先生(ミッキー先生)の絵本探究講座第2期を受講することにしたんです。
講座の振り返りが課題として出されていますので、こちらのアカウントで振り返りをアップしていこうと思います。
自分のために書くものでもありますが、講座内容に興味がおありの方はどうぞ。

0.受講動機というか受講までの流れと目標

現在、絵本の里けんぶち町(北海道にあります)の教育委員会に在籍していまして、今年度から剣淵高等学校で始まった「絵本探究」という授業を外部講師として担当しています。

教育委員会(特に教育長かな?)とミッキー先生が以前からつながっておられて、7月には一緒にミッキー先生に会いに、層雲峡へ行きました。
その時に絵本ゼミの第2期が始まるというお話を伺いました。
8月には絵本ゼミの第1期生のみなさんが剣淵町まで来てくださいました。

出席できない日もあるので、講座への参加は難しいなと思っていましたが、絵本セラピスト協会代表のたっちゃんと絵本ゼミの話をした次の日に出勤すると、教育長のメモが。
「(ゼミを)受講するかどうかは各自で決めてください」と。
ミッキー先生からのメールの中に私の名前があり、もうこれは受けちゃうしかないなとその場で申し込みました。

今は絵本セラピストとしても活動していますが、30年以上続く「絵本の里けんぶち」に4年半前にやってきたばかりで、絵本歴はまだまだ浅く、知識も経験も足りないと感じていました。
どれだけ一生懸命学んでも30年という歴史には勝てません。
勝てはしないけれど、自分なりに絵本に関する学びを進めたいと思っていました。
これが動機です。

この絵本ゼミでは「絵本の知識を増やすこと」「ゼミの中で得たことをきっかけに知識や経験、活動をさらに広げること」「一緒に学ぶ仲間とのかけがえのない時間を大切にすること」この3つを目標に取り組みたいと思います。

1.チームでのブレイクタイム

私はFAがめめさんのチーム3です。
2期からの参加者は好きな絵本を紹介しながら自己紹介を行いました。

小袋(おぶくろ)朋美(おぶちゃん)さん@長崎
『アレクサンダとぜんまいねずみ』作・絵:レオ=レオニ 訳:谷川俊太郎 好学社
小2に読んだとき、紫の小石が出てくるシーンで子どもたちがハッと息をのみ、それが絵本の醍醐味だと感じて、絵本にはまるようになった。

青木いず美(zumi)さん@群馬
『ぼくを探しに』作・絵:シェル・シルヴァスタイン 訳:倉橋由美子 講談社
小さいときに出会った絵本。自分を探しにいろいろなところに行き、合うものを見つけるというお話。
絵本についてきちんと勉強したいと思ったことと、まとめる、分析するが苦手なので、論理的にレポートを書けるようになりたいので、「挑戦する」のがこの絵本にピッタリだと思った。

小西里佳(ペンちゃん)@剣淵
『まいごのペンギン』作・絵:オリヴァー・ジェファーズ 訳:三辺律子 ヴィレッジブックス
ペンギンが大好き。日本語版が絶版で、スペイン語と英語バージョンだけあるというのが特別感があるので好き。主人公の男の子とペンギンが最後に分かり合うシーンがいいなと思った。

畠山理美(りみ)さん@札幌
『ハナちゃんのトマト』作:市川里美 BL出版
パリ在住の作家さんが昭和感のある日本の田舎を描いているのがミスマッチでおもしろい。ハナちゃんとおばあちゃんがトマトを育てる。おばあちゃんがそのトマトを大切に料理をするところが共感できた。

伊佐山清実(いさっち)さん@三重
私立の中高の先生。1期から参加。絵本には全く縁がなかった。ミッキー先生の話に興味を持ち、専門ではなくてもみんな受け入れてくれる感じで安心して受けられたので、2期も参加することにした。

森景子(めめ)さん@札幌
みんなの共通が絵本、知識や情報の共有に喜びと感激を味わい、2期も継続することにした。とにかく人が大好き。みんなで学びを深めるチーム3にしたい。

2.ミッキー先生の講義

第2期の目標「いい絵本とは何か?」選べるようになること

選書の基準を学ぶ。
いい絵本の条件とは?
ジャンル別のアプローチをする。

・昔話
・科学絵本
・ファンタジー
・言葉(オノマトペ)?

絵本の定義(バーバラベーダ)第1期の復習
文章、絵、トータルデザイン、大量生産される商業製品
社会的、文化的、歴史的な記録、子どもにとっては体験
言葉と絵が補い合う。見開きで1ページ。ページをめくることによるドラマ。

昔話の定義
Folktales
・伝統的な書式の散文
・口承により世代を超えて
・作者不明
 →グーデンベルグが活字を発明したことで大量印刷が可能に→著者ができ  
 た→再話者(声から文字に書き取った人)
・昔話の型(カタログ)AT型→シンデレラや赤ずきんのように世界中に似た
 ような話がある

参考文献
藤本朝巳『昔話と昔話絵本の世界』
発端句、発句(むかしむかし あるところに)
伝聞(~だそうな、~とさ・・・)聞き伝えである
結末句、結句

例:『三びきのやぎのがらがらどん』(ノルウェーの昔話)マーシャ・ブラウン 絵、瀬田貞二 訳、福音館書店
発端句:「むかし 三びきの やぎが ありました・・・」
    「しあわせに くらしましたとさ」
結末句:「チョキン パチン ストン はなしは おしまい」
    →無意識に近い言葉。話の終わりを示している。区切られた世界の 
     話と区別させるためのもの
※昔話絵本には必要!

昔話絵本とは、絵本の一形態。物語絵本に属する。

絵と文字が相乗効果で補い合い、1+1=2ではなく、3にも4にもなるのがいい絵本

昔話研究におけるアプローチ
・構造論・・・課題(外側から)と出発→課題解決
・型・・・AT型(アーネル・トンプソンのタイプ・インデックス)
 『国際昔話話型カタログ-分類と文献目録』ハンス・イエルク・ウタ-
 著、小澤俊夫監修、小澤昔ばなし研究所、2016年
   →日本の昔話の第一人者
・様式論→話法
 『ヨーロッパの昔話-その形式と本質』マックス・リュティ著、小澤俊夫訳、岩崎美術社、1969年→岩崎文庫
◎『昔話の話法』小澤俊夫著、福音館書店、1999年

3.チームでのブレイク(昔話絵本)

持ってきた昔話絵本の紹介(チーム3)

・いさっちさん
『アリババと40人のとうぞく』を3パターン
「ひらけゴマ」が問題解決を示唆する言葉と子どものころから思っていた。
2つは「むかし」から始まっていた。「しあわせにくらしたということでした」で終わっていたので、昔話を選べたのかな。

・めめさん
『みるなのくら』赤羽末吉 絵、小澤俊夫 再話、福音館書店
一番好きな昔話、小澤俊夫再話で作者不明になっている。
11のくらまで見てよいが、12はダメと言われていた。
1月からの季節の風景。12のくらを開けてしまう。
「解決」のとらえ方が疑問。
先人の知恵や教えも入っているのが「昔話」の定義に入るのでは?

・いさっちさんの発表から思ったこと

りみさん「同じ絵本を3冊というのが興味深い。絵と文の相互作用がどうだったのか比べた感想を聞いてみたかった。」

zumiさん「読み比べの視点から1年生で取り上げる『おおきなかぶ』を2、3冊読み比べる。子どもは同じところと違うところを言う。似た話の本を読むこともある。読み比べはいい。」

おぶさん「口承で絵がないものを絵本にするときに画家のイマジネーションで自由に絵を付けられるのが魅力であり、怖いところもある。

ペンちゃん「3冊の中でいさっちさんが一番好きなものはどれなのか?」
いさっちさん「絵のかわいさで、いもとようこさんの絵が気に入った。隣にあった『ブレーメンのおんがくたい』も借りてきた。」

・めめさんの発表から思ったこと
課題解決について

おぶさん「課題解決は一つの方法ですべてが型に当てはまるとは限らない。『行って帰る』だけでも型にはまっているのではないか?」

いさっちさん「『うらしまたろう』や『つるのおんがえし』に似ていると感じた。やっちゃダメなことをやってしまう。最後しょんぼり。」

めめさん「しょんぼりした後も結末句で現実世界に戻すという意味があるのでは」

りみさん「ダメって言われることをやってしまうのは男性が多い」

おぶさん「したきりすずめはおばあちゃんがやってしまう」

zumiさん「行って帰ってくるのも課題解決なのでは」

ペンちゃん「『うらしまたろう』が出てきた。課題解決というより悪い結末が日本の昔話に多いような気がする」

いさっちさん「『うらしまたろう』は課題を解決した感じがない。何を成長とするのか。意味を考えたい」

4.チームブレイクの共有とミッキー先生コメント

チーム1(ゆりゆりさん)

『かちかちやま』小澤俊夫 再話、赤羽末吉 絵 福音館書店 「残酷性」
ミッキー先生→おばあさんの死体はない。空っぽの着物を描くことで残酷なものを残酷でないように見せている(平面性)

『かさじぞう』赤羽末吉 絵、せたていじ 再話、福音館書店 「扇形の絵の枠」「雪のタッチ」
ミッキー先生→赤羽末吉の最初の絵本。扇面はこれだけ。枠が強すぎる。子どもは世界に入り込むので、枠があると作り事になってしまう。

『てんぐのそばまんじゅう』深山さくら 作、長谷川義史 絵、ひさかたチャイルド 「作者がいるので昔話絵本ではないのでは?」
ミッキー先生→昔話を真似た創作。例:ピーターラビット


チーム5(おこちゃん)

『うまかたやまんば』おざわとしお 再話、赤羽末吉 絵、福音館書店 
残酷だが子どもは楽しい。子どもはあまり残酷さを感じないのでは?
ミッキー先生→「足を切って捨てる」と事実のみ書かれている。血は出ていない。「折り紙のように語る」→平面性の一つ。「かわいそう」が表現されていない。残酷性を避けている。

『だいくとおにろく』松居直 再話、赤羽末吉 画、福音館書店
きれいな色合い。どうして目玉が欲しかったのか。
ミッキー先生→赤羽さんは日本画の画材を使っている。結句がないのは松居さんと小澤先生の差。桃太郎の運命が戦時中に特攻隊などの士気をあげるのに使われた。財宝を取り返すのは侵略者と同じなので、お姫さまだけを取り戻した。松居さんは子どもに何を伝えたいのかを大切にした。小澤先生は昔話の研究者なので、結句も忠実に表現した。

チーム4(ちえこさん)

『三びきのやぎのがらがらどん』(ノルウェーの昔話)マーシャ・ブラウン 絵、瀬田 貞二 訳、福音館書店
ミッキー先生→三度の繰り返しが重要。掛け合いがすべて全く一緒。昔話の場合は変えない。同じ文言こそ大事。声の文化では盛り上がる。同じ言葉で繰り返すのが鉄則。

『スーホの白い馬』大塚 勇三 作、赤羽 末吉 絵、福音館書店
民話を元に再話。
ミッキー先生→広い意味のフォークテイル。狭い意味では昔話は名前と場所が特定しない。固有名詞がついているので、細かく分けたら昔話ではない。

『ねずみのすもう』神沢 利子 作、赤羽 末吉 絵、偕成社
山梨のお話。語り手によって違う。

チーム2(ゆかぽんさん)

『ちからたろう』今江 祥智 作、田島 征三 絵、ポプラ社
くり返しが2回。「フハハハハ」が結末句。
ミッキー先生→田島征三(画家)の出世作。豪快で迫力のある絵。昔話絵本というより絵で評価された作品。結句がないから昔話ではないということではなく、何を表現したいかで違うのでこだわりすぎる必要はない。

『くわずにょうぼう』稲田 和子 再話、赤羽 末吉 絵、福音館書店
絵に迫力がある。

『わらのうし』ウクライナの昔話 内田莉莎子 作、ワレンチン・ゴルディチューク 絵、福音館書店

『てぶくろ』ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ 絵、内田莉莎子 訳、福音館書店

チーム3(いさっちさん)

『アリババと40にんのとうぞく』3パターン準備した。固有名詞が出てくるので昔話でよいのか。
ミッキー先生→神話や英雄譚の方。固有名詞、地名が入っている。

『みるなのくら』小澤 俊夫 再話、赤羽 末吉 絵、福音館書店
12の蔵で繰り返しが使われている。教訓のよう。
ミッキー先生→禁止譚(『つるにょうぼう』など)の話。赤羽末吉の絵が素晴らしすぎて言葉を削った。尻切れトンボのような結末。西洋の人はえっと思う。日本の場合は行って終わり。日本人の美学がこんな話を作った。
ということを『昔話と日本人の心』河合隼雄、岩波書店に書かれている。
昔話には文化性が出る。

まとめ

リューティの様式論
(1)一次元性『かさじぞう』
(2)平面性『うまかたやまんば』
(3)抽象的様式
(4)孤立性と普遍性『しらゆきひめ』
   主人公は内面性を持たない→成長しない

昔話検討のポイント
(1)昔話と残酷性
(2)昔話の絵はどこまで描くべきか
(3)昔話絵本における絵と言葉の関係は
(4)昔話の聖数、昔話に出てくることの多い数字とは
(5)昔話にはなぜ3度のくり返しが多いのか
(6)昔話の主人公に末っ子が多いのはなぜか

5.講座その後

これまで昔話絵本にフォーカスしてこなかったので、意識して昔話絵本を読むようにしました。

読んだ昔話
『アリババと40にんのとうぞく』いもとようこ 文絵。金の星社
『かちかちやま』おざわとしお 再話、赤羽末吉 画、福音館書店
『うらしまたろう』時田史郎 再話、秋野不炬 画、福音館書店
『かさじぞう』瀬田貞二 再話、赤羽末吉 画、福音館書店
『おんちょろちょろ』瀬田貞二 再話、梶山俊夫 画、福音館書店
『うりひめとあまんじゃく』稲田和子 再話、小西英子 画、福音館書店
『くった のんだ わらった』ポーランド民話、内田莉莎子 再話、佐々木マキ 絵、福音館書店

講義の中で出てきた絵本も多く、発端句と結末句、主人公の孤独さなど講義の中にあった設定通りだなと思いました。

『おんちょろちょろ』は確かに孤独な登場人物からスタートするのですが、男の子からおじいさん、おばあさんとメインの登場人物が入れ替わっていくのがユニークだし、泥棒がきたピンチも追い払ったことも知らずに物語が終わるのがおもいしろいなと感じました。

日本の昔話、世界の昔話、昔から続いてきたお話にはたくさんの魅力が詰まっているのだろうと思いますので、今後も手に取って楽しんでいきたいと思います。

あと講座の中でお名前が出ていた、藤本朝巳先生の
『子どもに伝えたい昔話と絵本』平凡社 
を読みました。
特にここで紹介させていたロシアの昔話『おだんごぱん』とグリム童話『こびとのくつや』を読んでみたいなと思いました。

次回は残念ながら欠席なので、録画で楽しみます。


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