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ラスボスの微笑み〜私が豊島区民になったわけ〜

初投稿なので私がnoteを書いてみようと思い立ったきっかけについてお話ししたい。

将棋というゲームに皆様はどのような印象をお持ちだろうか。団塊ジュニア世代いわゆるロスジェネと呼ばれる世代の私にとって将棋は七三分けにした貫禄たっぷりのおじさま達のものであり女性の私には縁遠いものという認識でしかなかった。もちろん所属集団や家庭環境により同世代でも全然異なる事は承知の上だが。

しかしそんな私でさえ羽生善治先生だけは名前と顔を存じ上げるほどの活躍ぶりだった事は説明するまでも無い。七冠達成のニュース当時、私は大学生だった。賢くハンサムな青年に賞賛と憧れの気持ちはあったがそれでも自分にとっては遠い世界の出来事だった。

それから20年の時が流れ私もすっかり貫禄のある女性に成長した。一通りのことは経験した。もうちょっとやそっとな事では驚かない私が驚愕と共に将棋に注目するようになったのは2017年藤井聡太少年との出会いだ。ABEMA「炎の七番勝負」非公式戦だが羽生先生が14歳の少年と対局するという。いやいや勝てるわけ…えっ⁈勝ったの!嘘だ、どうして?この少年はいったい何者…?

そこから錆びついたタンスに仕舞い込まれていた私の知識欲がむくむくと湧き上がる。いや14歳の少年にできるなら私も満更でも無いのでは?本気出してないだけで頑張ればいけるのではないか?無知ほど恐ろしきものは無し。無論その無謀すぎる自信過剰はものの見事に数日で打ち砕かれた。将棋、ムズいぞ。なんだこれ…。勝てやしないししかもなぜ初手から100数十手動かした手を記憶している⁈そうかこの人たちは天才的な特殊能力者なんだ。瞬時に消えた驕りはリスペクトに変わりそれからは将棋棋士の先生方を神様を拝むような気持ちで観るようになった。

それからは連勝を続ける藤井聡太くんというスーパーヒーローの誕生を全国民と共に応援した。日本人は(と一括りで表現したくはないが)判官贔屓である。大の大人を打ち負かす小さな少年が熱狂を呼ばないわけがない。連日対局結果が大きくニュースで取り上げられる中、1人の青年に目が留まった。彼の名は豊島将之。

聡太くんと同郷の愛知県出身の彼はどうやら序盤・中盤・終盤隙が無いという恐ろしいキャッチコピーで語られる最強の将棋棋士であることが判明した。何度聡太くんが挑んでも勝てない。初めて豊島先生の対局姿とお顔を拝見したのは2019年第32期竜王戦本戦トーナメント。終局して悔しげな聡太くんに対して嬉しそうな顔ひとつせずクールに振る舞う、時の名人豊島先生。この時はまだ将棋が礼節を重んじる文化を守り、みだりにガッツポーズなど喜びを表現するものではないという事さえ知らなかった私は勝ったのに何この人、にこりともせずになどとお門違いな感情を持っていた。怖い。強い。クール。その3つが豊島先生の印象として強く焼き付いた。

そこから更に2年後の2021年。聡太先生は前年に王位棋聖を奪取し立派なタイトルホルダーとなった。子どもの卒業を見届けたような達成感があった。あどけなさも消えて可愛いと呼ぶのは失礼な青年だ。もう補助輪無しで自転車に乗れる。そんな後ろ姿を見送る母のような気持ちだった。そんな中で第4回ABEMAトーナメントの放送が始まった。チーム動画が続々と公開される。私が神と仰ぐ先生方が無茶振りに対応してくださっている!毎週楽しみに観ていた中、衝撃が走った。チーム豊島のはじめての共同作業、チームグッズ制作のVTRである。

対局中の厳しい表情からは想像もつかない笑顔で大橋貴洸先生、佐々木大地先生と並ぶ豊島先生。見るからに優しげで親しみを感じる好青年。え?豊島先生ってこんな感じだったっけ?私の頭の中でそれまでの強いクールな先生の印象が崩壊していく事に焦った。いったん整理しよう。このかたはラスボスで強くて聡太先生の天敵だ。だけど…。

VTRが進むにつれ私はどんどん豊島先生の笑顔に引き込まれていった。こんな完璧なかたなのに絵は…そして自分は大橋先生のデザインに横からごちゃごちゃ言うだけでいいと思ってた、と可愛い不満を仰るお姿。何もかもが斬新過ぎて私の心にグサリグサリと刺さった。正確には悶絶レベルだった。こんなに正直で朗らかな青年だったんだ…むしろ対局中のあの姿が別人だったなんて…。20分弱の動画が終わる頃、放心状態の私はすっかり豊島先生の虜になっていた。

そこからは急転直下、私は恋に落ちたかのように豊島先生の情報を貪った。豊島先生のこれまでの歩みと苦労を知れば知るほど涙ながらに心を掴まれた。静かな外見からは想像もつかない強気な攻め将棋にも痺れた。そしてこれまで誤解し続けた2年間を猛烈に後悔した。よく知りもせずに私、こんな素敵なかたに気づかず敵視したまま過ごしてしまった!後悔先に立たず。それなら何か私にできることは無いのか。考えた結果私が出した結論は「同じように誤解しているかたに豊島先生の素晴らしさを伝えよう。1人でも多くのかたに!」だった。

とはいえ田舎住みの一会社員では発信力が無さすぎる。これまでは目を通すだけだったTwitterで勇気を出して呟いてみる事にした。約半年間、実際に素敵なご縁に恵まれ大変楽しみながら豊島先生を応援する事ができた。しかしTwitterでは限られた140字に自分の気持ちを凝縮させる必要があり文字数ではまとめきれない事もあった。そこで関西将棋会館公式の棋士先生方のコラムでも馴染みがあったnoteに注目した。これなら文字制限がなく感じた事をお伝えできる。

豊島先生の事をよく知らないかたに良さを伝えること(世間では沼住民の布教活動と呼ぶ)が目的ではあるが、目を通してくださるかたの時間の無駄になってはいけない。読んで良かったと思って頂けるような記事を書く、と大層な決意表明をして初めてのnoteを閉じたい。

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