見出し画像

SUNTORY将棋オールスター2021③・完 エキシビション リレー将棋

SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2021ではエキシビションマッチとして東西ファン投票選出棋士によるリレー将棋が行われた。

東軍からは羽生善治九段と永瀬拓矢王座、西軍からは藤井聡太竜王と豊島将之九段。初手から一手20秒で5手毎に棋士が交代するリレー形式だ。

前の棋士の指し手の意図をうまく読み取って指さなければチグハグになるのでピッタリと息を合わせる必要がある。途中一度だけ作戦タイムを申し出る事ができ、チーム5人で3分間一緒に作戦を相談できるというルールだった。

この対局では残りのチームメンバー6人が序盤・中盤・終盤と2名ずつ解説をしてくださった。それぞれの先生方のコメントがとにかく面白く、盛り上げようと楽しく話してくださるので、勝敗はもちろん気にはなるものの、観客席から笑いが絶えることはなかった。

組み合わせは藤井先生VS永瀬先生、豊島先生VS羽生先生で、まずは藤井先生と永瀬先生で対局開始した。対局者から1mほど後ろに控えてきちんと正座で相対する豊島先生と羽生先生。トップ棋士4人が同時にお辞儀をして対局が始まる構図は豪華でオールスターならではだ。

5手指す毎に交代するのだが、その棋士の入れ替わりの動きがまるでシンクロナイズドスイミングのようで、なんともシュール極まりない。最初の交代のタイミングではまた豊島先生と羽生先生が一礼を交わす。

そしてまた5手指す毎に同じように立ち上がって入れ替わる。
先生方の所作が美しければ美しいほど、丁寧にすればするほど、見たことがない独特な雰囲気がツボにハマり、会場では棋士交代のたびに笑い声が漏れた。

私も真剣に指されている先生方には大変申し訳ないのだが、普段から冷静沈着なポーカーフェイスで指しておられる豊島先生が真面目な顔で「作戦タイム」の札を持ってアピールする姿に大笑いしてしまった。

私はこれまでずっと緊迫感あふれるタイトル戦を観戦してきた事もあり、こんな風に笑ってしまってもいい雰囲気で対局を観戦する事自体がとても新鮮だった。決して勝敗がどちらでもいいわけではないが、エキシビションということもありエンターテイメント要素が強く、シンクロな動きもそうだがただ純粋に、楽しむことができた。

一番面白かったのが、西軍が作戦タイムを取って再開して3手後すぐに東軍も取ったことにより、ちょっとしたハプニングがあったことだ。東軍の作戦タイム中、直前の解説で西軍の澤田真吾七段と現局面について語り合っていた横山泰明七段が気まずそうに仰った。

「先ほど澤田さんからちょっと西軍の内容を聞いてしまいまして…(チームメンバー一斉に横山先生を凝視)ちょっと答えられないです」きまじめに自己申告する横山先生がなんとも気の毒やら可笑しいやらで、会場は大爆笑だった。

結果は西軍の勝利となったが、この豪華なメンバーによる解説、対局者の先生方の不思議なシンクロな所作にも笑いをこらえつつ観戦できた事がとても嬉しかった。

勝利チームには優勝賞金として500万円が贈られ、もちろん準公式戦なので勝敗も大切な要素ではあるが、どの先生方も普段よりも明るい表情が印象に残った。きっと肩の力を抜いて将棋を楽しむ気持ちが強かったのではないかと感じた。ファンへの感謝という趣旨に相応しい素晴らしい棋戦だった。

私は昨年(2021年)、幸運にもセルリアンタワー能楽堂での竜王戦観戦も経験し、真剣にしのぎを削りあう姿と、この日のリラックスして楽しく将棋を指される姿の両方を拝見する事ができた。

タイトル戦で感じた静かな気迫に満ちた表情も、楽しく作戦タイムに参加される表情も、どちらも先生方ご自身の飾らない本来のお姿であり、先生方がただ将棋を愛しておられる事が語らずとも伝わってくる。

同じように将棋を愛する人間として、先生方やたくさんのファンの方々と同じ空間と時間を共有出来たことは本当に幸せな経験だった。

正午から始まったイベントが終了したのは夜7時前。長丁場を全く感じさせない濃密な内容だった。終わった瞬間に強い空腹感に襲われたが、夕食は必ずここにしようと決めていた場所へと向かった。

PRONT 

本当は予選トーナメントが行われた神田店に行きたかったのだが時間の都合で断念し、歌舞伎座近くのPRONTO東銀座店で夕食をとった。もちろん当棋戦のスポンサーSUNTORY様の系列店であることから、心からの感謝の意をあらわす為のささやかなこだわりだった。

参加者全員にはA4クリアファイルと参加棋士紹介を兼ねたオールカラーのプログラムが配布された。これをゲットできただけでもファンとしてはかなり嬉しい。

A4クリアファイル
ファン投票選出棋士紹介(第1位)
ファン投票選出棋士紹介(第2位)

こんな幸せな1日を体験することができたのも、新棋戦を立ち上げ、企画してくださったSUNTORY様のお陰だ。また趣向を凝らした演出も、オールスターに相応しいものだった。

主催者挨拶ではSUNTORY執行役員のかたが、紅白歌合戦のように将棋の年末恒例イベントにしたいと仰っていた。少し気は早いが今年の年末にはまたこの棋戦を観戦することを楽しみにして、2022年の一年間を頑張っていこうと思う。

解説会のレポートはこれで完結となるが、今年も可能な限りのイベントに参加していきたいと考えている。次回以降もお読みくだされば本当に嬉しい。
(終わり)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?