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2024年9月のSES業界レポート

 みなさんこんにちは。9月が終わりました。いや、なんというか、とにかく暑い9月でしたね。日が出ていれば「あれ、太陽10センチくらい地球に近づいた?」っていうくらいジリジリするし、ようやく曇ってくれたかと思えばまるで梅雨のように夏の蒸し暑さでジメジメ。暑いのが比較的得意な私でもこの長い暑さにだいぶぐったりしてしまいました。10月もまだ気温が高い状態が続くとはいいますが・・・少しでも秋らしくなってほしいものです。

とまあ、天気のお話はこれくらいにして、そんな灼熱の9月、SES業界を振り返ってみましょう。

9月のSES業界

分析対象件数

案件の有効分析対象件数:2533
要員の有効分析対象件数:2066

平均単価

案件単価平均:70.64万(前月比+0.75万)
要員単価平均:67.20万(前月比+2.26万)
案件と要員の単価平均差:3.44万

Fig.1

2024年4月からの推移をFig.1に示しております。先月の記事で指摘した、要員単価が急激に下がった現象は、9月に入って戻っています。一方案件の平均単価も上がっているので、戻ったとは言え引き続き乖離が大きい状況は続いています。

 Fig.2に、今月単月の、案件と要員の価格分布を示しています。先頭で述べましたが、数量的には案件が2533、人材が2066と、案件の方が多い状況です。しかし金額レンジ別にプロットしてみると、50万円以下では人材の方が過多で、案件では最も要求が多い60〜80万円のレンジでは圧倒的に人材が不足している状況です。この傾向はここしばらくずっと続いております。

Fig.2

平均年齢

 次に、要員単価を年齢の視点でみてみます。Fig.3が、平均年齢の月ごとの推移です。前月より少し高くなっていますが、それでも他の月と比べると低めですね。
 そして各月ごとの年齢層(10歳区切り)別単価平均をプロットしたものがFig.4です。8月、ほぼすべての年齢層で単価が下がっていたものが、9月に入ると全体的に戻ってきています。特定の年齢層が単価を引き上げているといったことはなさそうです。

Fig.3
Fig.4


スキル

 スキルごとのデータを見ていきます。Fig.5が募集案件内で言及されているスキル、Fig.6が提案される人材が言及しているスキルの頻度を数えてランクにしたものです。それぞれの月ごとの推移をFig.7,8で示しています。上位のスキルの推移は比較的安定しています。気になる点としては、開発言語だとPythonが少し上がってきているのと、インフラ系では一度下がったAzureがまた順位を戻したというあたりですかね。
 それでも、なにか技術面での要求や提案に大きな変化があったというのはまだ見られません。もうしばらく注視していくと何らかの推移が出てくるかもしれません。

Fig.5


Fig.6


Fig.7


Fig.8

スキルごとの単価分布

 続いて、スキルごとの単価分布です。数が多いので、めぼしいものをピックアップしてお伝えします。
 開発系は、Java(Fig9,10)、C(Fig.11,12)、Python(Fig.13,14)を取り上げます。Javaは、要員の方について、50万円以下が余剰気味というのは変わらないのですが、80万以上で人材過多が起こっています。一方でそれ以下のレンジの案件が余ってしまっているように見えます。要員が単価を下げて現場に入ることをよしとすれば問題ないのですが、難しいところですね。この傾向もあってか、Javaは案件と要員の単価平均差が小さいです。
 Cは60万以下レンジで若干要員が余り気味。先月ほどではないですが、平均単価に開きが出ています。
 Pythonはどうでしょうか。Pythonは左右に裾の広い感じで分布しています。そして50万以下の要員はだいぶ余っており、中盤レンジおよび高単価レンジで案件が余っているのがわかります。Pythonは、簡単な作業からWebフレームワーク、データサイエンスに至るまでさまざまなレベルで要求されるのでレンジが広くなるのでしょう。そしてデータ分析系の案件単価が比較的高いこともあり、案件および要員の平均単価も他の開発言語と比べて高くなっているのが特徴的です。高い中でも、今月で見ると、案件平均が72.8万、要員平均が68.7万と、4万円ほど開きが出ています。
 

Fig.9
Fig.10


Fig.11


Fig.12
Fig.13
Fig.14

 続いて、インフラ系技術。クラウド系メジャー技術として、AWS(Fig.15,16)、Azure(Fig.17,18)、GCP(Fig.19,20)を取り上げます。AWSは50万以下のレンジと70万〜80万のミドルレンジで要員と案件に需給の差が出ています。案件と人材の単価平均差は3.32万。人材がローに寄っています。
 Azureは、案件も人材も高単価に裾が広いのが特徴的ですね。この高単価は技術というよりも、Azure導入にあたってのコンサル的なスキルを有している人(案件)の可能性もあります。技術だけでこの単価というのは滅多に聞かないですので。
 そして面白いことに、その傾向がもっと強く出ているのがGCPです。特にGCP系の要員は、他のスキルとは大きく異なり、要員の単価分布の方が右に(高い方に)歪んでいます。つまり、高単価エンジニアが多く案件を要求しているということになります。時系列推移(Fig.20)を見ても、ずっと案件より人材の方が単価が高く推移しているのがわかります。高単価人材が余り気味ということです。

Fig.15
Fig.16


Fig.17


Fig.18


Fig.19
Fig.20


考察

 以上、2024年9月のSES業界をまとめてみました。今回データを見ていて特徴的だったのは、
 1. 8月に急に下がった人材の単価が戻った
 2. GCPの人材の単価、高い

ということでしょうか。
 1は、先月のポストで、8月以前に入社した人材のなかで案件が決まらずに8月まで持ち越してしまった人が多かったのではないかと推定しました。その真偽はともかく、9月に入って単価がある程度戻ったということはやはり一時的な理由によるものだったかと思われます。9月は上期末で、案件が終了になるケースも多く、10月からの新規案件を求める人材も増えた結果、通常の単価平均に戻ったのかもしれません。そう仮定すると、次は1月2月あたりに単価平均が下がり、そのあと3月には単価が戻るという傾向が見られるはずですが、どうなるでしょうね。このあたりは推移を注視していきましょう。
 2は、今回取り上げて初めて気がつきました。GCPのエンジニアはずっと単価高かったんですね。全体的に、インフラ、とりわけクラウド系のエンジニアの案件単金は言語系の案件単金よりも高い傾向にあるのですが、GCPはその中でも別格でした。
 Fig.8を見てもらえればわかるかと思うのですが、AWSは人材としても人気の技術です。つまり人が多い。なので、案件の単価も必然的に下がるということになります。最近はAWSに特化したSES企業なども出てきているくらいですからね。一方、AzureやGCPは、AWSほどエンジニアも多くなく、必然的に単価が高くなっているということもあるのでしょう。
 メジャーではない技術を追うというのは勇気がいることではありますが、一方で単価が高いという恩恵を受けられるというメリットもあるということですよね。
 ただ、この傾向もいつまでも続くわけではないと思いますので、どう変化していくのか、楽しみに見守りましょう。

 というわけで、2024年9月のSES業界レポートでした。
 

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