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2024年7月度のSES業界 by TSUMUGU

 みなさんこんにちは。今年の夏も暑いですね。加えて、関東では今年は随分とゲリラ豪雨の頻度が多いように思えます。北の方では随分とひどい水害が起こってしまっています。極端な気候に、ますますの注意が必要な時代になってしまいました。夏休みを控えて楽しみな部分も大きいですが、気をつけて夏を満喫しましょう。
 さて。そんなわけで7月も終わりましたので、7月のSES業界概況についてお伝えさせていただきます。

7月のSES業界

対象件数

案件の有効分析対象数:2309
要員の有効分析対象数:1660

単価平均

案件単価平均:70.52万
要員単価平均:67.94万

平均単価の4月からの推移は以下のグラフのようになります。
引き続き、需要と供給の単価の間に差が見られます。

Fig.1 平均単価推移(4~7月)

7月単月の、レンジごとの単金分布が以下です。50万から上のレンジは案件の方が多いですが、それ以下のレンジは要員の方が多い。つまり初級あまりの状態が続いているということです。案件自体は十分あるのですが、そこに入れる技術者が不足し、そのレベルに至らない技術者がスタックしてしまっているような感じですね。

Fig.2 2024年7月 案件/要員単価分布

年齢平均

要員の2024年7月の年齢平均は、37.2才です。Fig.3に4月からの4ヶ月間の推移を載せてありますが、前のポストで述べた通り5月の、平均年齢が少し下がっているところは新人が多く投入された痕跡のように見えます。

Fig.3 平均年齢推移(4~7月)

スキル(案件)

 続いて、スキルについて見ていきます。まずは案件が要求するスキルのTOP40です。
傾向は前月までとそんなに変わらず、言語だとJava、インフラだとAWSの案件が多い印象ですね。

Fig.4 案件要求スキル(7月)

 そしてこちらが4ヶ月のランキング遷移。上位の技術は大きな動きはないですね。安定した需要を見せています。中位群以下を眺めると、Azureが順位を戻してきていたり、Vue.jsが順位を上げてきていたり。
あとは、VBAやExcelの順位が上がっているのは、事務ツール系開発の案件が増えていたという感じでしょうか。

Fig.5 案件要求スキル遷移(4~7月)

スキル(要員)

 続いて、要員のスキル状況です。案件との差異がどのあたりにあるかをよくよく見ると、AWSというスキルキーワードが、案件は2位だったのに対して、要員では9位となっているところですかね。ただ、気をつけてもらいたいのは、あくまでもスキル内での相対順位なので、決して案件に対して要員が不足しているというわけではありません。実際、案件の方のカウント数は436、要員の方のカウント数は571となっており、要員でAWSというスキルを明記している方が多いです。

Fig.6 要員提案スキル(7月)


Fig.7 要員提案スキル遷移(4~7月)

スキル需給差

 続いて、スキルごとにみた需給差です。1が需要と供給のバランスが取れている状態。1以上が案件が余っている状態、1未満になると人員が余っている状態だと解釈できます。
 今回、ECS(アマゾンAWS上の1サービス)が高い値を出しています。絶対数は関係ないので、たまたまECSの案件が数件あったのに対して、要員でこのスキルをアピールしているエンジニアがほとんどいなかったということでしょう。こういう案件があるというのは注目に値するでしょう。
 それと、引き続きGCP,Azureといったクラウド系案件は需要の方が多いですね。AWSも1は下回っているものの、比較的高い需要があることを示唆しています。AWS技術者は最近かなり増えている印象ですが、要求する現場も増えているのでしょう。

Fig.8 2024年7月 スキル需給差


スキルごとの単価分布

 需給差はあくまで、それぞれの案件(人材)の単価を考慮にいれない総量での比較なので、ここで、単価の視点を導入して見ていきたいと思います。
まずはインフラ系、とりわけ人気の高いクラウドを見てみましょう。
Azure
 
まずはAzureから。Azureは需給で需要の方が多かったのですが、需要のピークが60万から80万のあたりと、あとは100万を超えたあたりに小さなピークがあります。一方の要員の方も同じく60万から80万のあたりにピークがありますが、100万を超える要員提案は少なく、そして60万以下の要員提案が多くなっています。

Fig.9 2024年7月 Azure単価分布

AWS
 
次にAWSです。AWSも同様の傾向ですね。案件のピークが60万から90万くらい。一方要員は60万から80万くらいまでは、若干案件の方が多いもののカバーできていますが、それでもこの価格に届かない60万以下の要員が多くいて、ピークが少し左にずれています。

Fig.10 2024年7月 AWS単価分布

GCP
 続いてクラウド御三家の最後、GCPを見てみましょう。GCPは、件数自体が少ないのですが、先の2つと違って要員の分布のほうが右に偏っているのがわかるかと思います。ただ、これはこれで、高い単価を要求しているエンジニアが入れる現場がないという点でミスマッチが起こっているという点は変わりませんが、GCPの案件も今後は伸びていくと思うので、どうなっていくか要注目です。

Fig.11 2024年7 GCP単価分布

 さて、続いて言語系を見ていきましょう。
Java
 まずはJavaから。案件は60万から80万あたりにピークがあり、要員も同じくらいのところにピークがありますが、案件をカバーするほどにはありません。一方、80万から100万にかけてと、60万以下のあたりで要員の方が多い感じですね。数としてはある程度バランスが取れそうな感じなのですが、単価を含めてみるとアンバランスな感じになってしまっています。

Fig.12 2024年7月 Java単価分布

PHP
 次にPHP。PHPも似た傾向が出ていますね。案件のピーク帯にはエンジニアが足りず、その前後でエンジニアの方が多いです。

Fig.13 2024年7月 PHP単価分布

Python
 続いてPythonです。Pythonは70万から80万あたりに案件のピークがある一方で、要員はそれよりも下の方でピークを作っています。これはインフラと同じく、現場が求める価格帯に達しないエンジニアが多いという傾向です。Pythonはデータ分析系と関連が深いため、それなりにスキルフルであることが求められます。人気があるので参入してくるエンジニアは多いのですが、そのエンジニアの多くがまだ要求レベルに至らないという状況が垣間見えます。

Fig.14 2024年7月 Python単価分布

React
 言語系、最後にフロント系で人気のReactを見てみましょう。Reactもピークのずれがあり、案件は70万から90万がピーク、要員が50万から70万がピークとなっています。

Fig.14 2024年7月 React単価分布

PMO
 最後は、PMOの案件、人材の分布を見てみることにします。PMOは他の技術よりもよりはっきりと要員と案件の分布差が見られます。要員の分布が明らかに安い側に偏っています。

 これは、要員提供側(SES企業)がイメージするPMOと、現場が要求しているPMOの役割に明らかに差があることを示しているんじゃないかなあと。
SES企業側は、どちらかというと初級クラスをPMOとして売り出すことが多い。でも、現場側がPMOというポジションを要求するときにはもっと高度なレベルを求めている。その乖離がこのグラフに表れているように思えます。

Fig.15 2024年7月 PMO単価分布

外国籍受け入れ状況

 外国籍に対して明確にOKかNGかを表明している案件についての比率を出したのが下のグラフです。比率は0.089と依然低い値が続いています。

Fig.16 2024年7月 外国籍受入状況

まとめ

 以上、7月のSES業界の状況についてお伝えしました。先月までと同様、やはり総じて単価低め、ロースキルの要員が余っているということが一点。どの技術についても、もう少し単価が上げられるくらいのスキルが身につけられれば十分に案件はあるので、いかにロースキル要員を中級エンジニアに育てるかということが課題になります。
 もう一つ、今月気がついたことは、スキルによっては案件の価格帯よりも高いレンジでの価格を提示しているエンジニアが結構いるということです。先ほどとは逆に、もう少し単価を下げれば入れる案件はたくさんあるのにという状況です。この背景には、最近フリーランスが急増してきていることと関連があるのかもしれません。長くこの業界でビジネスを展開している企業とは異なり、フリーランスはそこまで経験が多いわけではなく、市場価格の設定を高めに設定した結果であるということも考えられます。
 この仮説が正しいかどうかはまた別途機会があるときに分析をしてみたいと思いますが、いずれにせよ、どのスキルについても需給のアンバランスが発生しているのは間違いがなく、「技術を希望する現場すべてに、それにふさわしいエンジニアを送る」という状況を達成するには、何らかの手立てが必要そうです。

 参考になれば幸いです。まだまだ暑い日が続きますが、体調には気をつけて夏を乗り切りましょう!
 それではまた来月!

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