page2
俺はこれを書き終え、予知の力が入った袋を出して、そこらへんの茂みに隠しておいた。手記も一緒に。
俺の予知の能力は、あまり使われなかった。なぜなら、全くあてにならないから。ぼやっとしかわからない。明日が晴れるかも。そんなことしかわからないからだ。
ただ今ははっきりと分かる。あの男が、仲間の女と、この『α地点』に来るということが。
そこからこの世界はどうなるのだろうか。見てみたい気もする。期待外れかもしれないから、見てみたくない気もする。
でも、
「もう遅いか」
後ろの方から、兵隊たちの叫び声が聞こえる。俺はボロボロ。もう動けない。万事休す。
「頼んだぞ」
パンッ!
「一人殺しました!」
「北原の信者の奴らか」
「まあそんなことです。げっ」
「どうした?」
「こいつ、笑ってますぜ。まるで、何かをやり遂げたかのように…」
「ちげえだろ。そろそろ死んじまうって諦めたんだ」
「ですよね~」
手記はもうぼろぼろになっていた。それもそのはず。外に何ヶ月も風に吹かれ、雨に濡れていたら、ボロボロにもなるだろう。かろうじて、まだ文字は読めるが…
その手記は待ち続ける。何かを変える、二人の存在を。
国境廃止 第一話へ続く。