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山のおばあちゃんたちみたいに

「はるかちゃん、あっこの高いとこの取っていてや~」と、身長150センチの私さえ頼られる、ちびっ子おばあちゃん多めのキウイ取りバイト。私より大きいおばあちゃんからも、背伸びがしんどいらしく声がかかる。
そうは言っても、みなさんよく動いて手も早い。そして何より口が達者。
普通の会話なのに方言のおかげか漫才聞いているみたいに面白い。競って冗談言いあってよく笑う。
休憩時間に、杉の木に巻き付いてるむかごを取らせてもらう。ポケットにたくさん入れて戻ると、「ようけむかごがでけとるけん、今年もはるかちゃんが取っていんなはるぞ、いうて言いよったんよ~」と笑ってもらう。
私自身、もういいおばちゃんであるのについそのことを忘れて娘っ子みたいな気分でいてしまうのは、こんな風にお年寄りと関わって可愛がってもらう機会が多いからかもしれない。
バイトから帰ると、そのおばあちゃん達より少しだけ年上の父が、キウイを届けてくれていた。祖父が植えたキウイの木が数本あって、棚は崩れてしまっているけれど、竹で支柱してあって、毎年なんとか少量取れる。
よそのキウイ取りに行きよる場合じゃない日も近いなぁと、ふと思う。
お年寄りに支えられている山の仕事。
父が山に入れなくなる日は遅かれ早かれ必ず来る。
まだはっきりとはイメージできないけれど、心の準備だけは始めておこうと、まだ硬いキウイを、その硬さを確かめるように握りしめるはるちんであった。


山はミゾソバとイヌタデが花盛りで、大地は薄っすらピンク色。ビワの花も少しずつほころんできて、甘い匂いが漂っている。めぐる自然は、ただただあるがまま。

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