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短編小説『深海魚の憂鬱』3

煙草を吸い終えた時、ヘッドライトが小堀の足元を撫でるように照らした。顔を上げるとハイビームの車が近付いて来る。まるで脱獄犯がサーチライトを照らさされみたいに目映い白い光の輪の中で小堀は目を細めた。

車はそのまま小堀の目の前をスピードを落とさずに通り過ぎて行くと数百メートル先の赤信号で停車した。

目が慣れると、それがタクシーだという事が分かった。助かった…という心の安堵感から湧き起こる声よりも早く、小堀の足はタクシーへと走り出していた。

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