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26.クリスマス会

年末が近づいてくると、クリスマスがやってくる。我が母校はカトリック系の学校だったのでクリスマスは重要なイベントだ。毎年、全校生徒が函館市民会館に連れて行かれ、何がしか(内容はほとんど忘れてしまったが・・・)のイベントを観賞する。あれは1年の時だったか、2年の時だったか忘れてしまったが、「炎のランナー」と言う映画を観た。「炎のランナー」は、1981年公開のイギリス映画で、監督はヒュー・ハドソン。第54回アカデミー賞作品賞他3部門受賞作品。英国アカデミー賞でも3部門を受賞した作品である。
ストーリーは、走ることによって栄光を勝ち取り真のイギリス人になろうとするユダヤ人のハロルド・エーブラムスと、神のために走るスコットランド人宣教師エリック・リデル、実在の二人のランナーを描いている。舞台は1919年、エーブラムスが入学するケンブリッジ大学と、リデルが伝道活動をする北スコットランド・エディンバラから、1924年のパリオリンピックへと移ってゆく。
いかにも宗教的・キリスト教的な映画である。ここでスコットランド人宣教師エリック・リデルを演じたイアン・チャールソンは、カンヌ国際映画祭で演技賞を受賞し、イギリス映画界のホープへと祭り上げられた。しかし、イアン・チャールソンは、一般にこの「炎のランナー」がデビュー作とされているが、実はそれ以前に映画デビューを飾っている。その役柄は、「炎のランナー」でのいかにもキリスト教的な清廉潔白の役とはまるで違うエンジェルと言う象徴的な名前を持つホモセクシャルの若者と言うものだった。それも単なるホモセクシャルではなく、兄弟どうしの近親相姦という設定が加わっていた。その映画は1977年のデレク・ジャーマン監督の「ジュビリー」と言う作品である。
「ジュビリー」は、イギリスのエリザベス一世が魔術師によって送り出された未来の旅の模様を描く。「ジュビリー」とはカトリックにおける50年ごとの聖年をさし、一般的には50年祭、祝典などの意味を持つ。簡単にストーリーをまとめると、1587年の冬のイギリス。偉大な魔術師であり錬金術学者でもあるジョン・ディー博土(リチャード・オブライエン)の家に招かれたエリザベス女王(ジェニー・ラナカー)はその晩、未来のすべてを見る旅に出発した。道案内のエンジェル・アリエル(イアン・チャールソン)は大きな雷鳴と共に姿を現わし、暗黒にみちた見知らぬ世界へと女王を連れていく。辿り着いた未来のロンドンは堕落と荒廃の街と化していた。そして混乱と無法を愛するボルジア・ギンツ(オーランド)という男が、金の力ですべてを支配しているのだった。
デレク・ジャーマンはロンドン大学キングス・カレッジで美術などを学んだ後、映画監督ケン・ラッセルのもとで美術スタッフを勤める。その後、スーパー8ミリで撮影した作品 "In the Shadow of the Sun" で映画監督としてデビュー。特異な映像作品が先端的であるとして若者の間でも徐々に評判を呼び、80年代以降はロックミュージックのミュージッククリップなど映像制作でも活躍した。彼の作品は、主に、同性愛や荒廃した近未来イメージ、耽美性などをテーマにした作品が多い。また、ルネサンスの画家カラヴァッジオや哲学者ウィトゲンシュタインといった歴史上の人物を映画の題材にした。生前、自らがゲイであることを公表し、1986年にHIVへの感染が判明。1994年にエイズにより亡くなった。死の前年に制作された『BLUE ブルー』は、自らを蝕んだ病エイズをテーマにした作品である。
また、イアン・チャールソンも、スコットランド・エディンバラ出身。エディンバラ大学で建築を学んでいたが演劇に興味を持ち、卒業後にロンドンのLondon Academy of Music and Dramatic Artで演技を学んだ。その後、テレビ、舞台と幅広く活躍したが、1990年、舞台でハムレットを演じている最中にエイズで亡くなった。もしかしたら彼自身もホモセクシャルではなかっただろうか?

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