ホキ美術館に行け
僕は音楽が大好きだ。それはそれはもう凄まじく好きだ。気に入った曲の耳コピをウォークマンに録音して毎日聴く程度に僕の神経は音楽に向けられている。が、昨日それが過去形になりかねない大事件が起きた。この記事ではその話をする。
きっかけはツイッター、「この絵まるで写真みた〜い」的なツイートが流れてきたことが全ての始まりだった。リプ欄を辿ること10秒足らず、あるリプが僕の目に刺さる。
「これホキ美術館に飾ってそうですね」
正直その後のことはあまり覚えていない。ただ奇怪なネーミングが気になった事と夢中になって「ホキ美術館 アクセス」をGoogleの検索欄に打ち込んだ事だけは覚えている。
どうやら千葉の中でもクソ田舎な場所にあるそうだ、それに一時有名になった上の絵も見れるらしい。せっかくの夏休みだ、東京と比べてもコロナの感染リスクは低いし行くしかないと決めてから後は早い。完全予約制となっていたので行く日付と時間を確定させ明日に希望を抱きながらアラームをセットして眠りにつく、これで完璧だ。
僕は朝の10時から(開いてすぐ)で予約を取っていた。そのためか僕が入場待ちの先頭だった、それどころか僕以外に客がいない状態だったのだ。この実質貸し切りの状態に軽い優越感を覚えながらチケット代を払い入場する。順路に従い、歩いてみる。さっき開かれたばかりの空気をかき分けてまず見えたのは
女!裸!女!
それはミロのヴィーナスのような神聖で荘厳で宗教的で…の類ではなく、触ったらスベスベしてそうで体温や息づかいさえ感じられる「本当にいる人」の絵であった。中学生の自分が行ったなら鼻血200mlは間違いなかっただろう。マジで可愛かった、マジで。(反復法)(最重要事項)(語彙力)
1つめのフロアは1人の写実主義画家(見た物をそのまま描く主義)にフォーカスされた企画展だった。というよりこの美術館には写実主義の絵画しか展示されてないと言っても過言ではない。なんと言っても館長が写実主義コレクターだからね
階段を下りた先にある2つ目のフロアでは応募された作品に来場者がいいと思ったものに投票して何か賞を決めるスタイルがとられていた。そこで冒頭で述べたパラダイムシフトが起きてしまったのである。(パラダイムシフト:価値観が大きく変わること)
どの絵に投票しようかなんて事を考えながらフロアを周っていた僕は2歳くらいの子がこちらを見入ってる絵を見つけた。柔らかな背景とふさふさとした眉毛、潤んだ大きな瞳に目を取られ「可愛いな、ビデオカメラの広告でありそうだな」なんて思いながらタイトルを見た。さっきまでの印象は過去になった。
「二歳、○○○○」
(タイトルを載せて感想を共有したい気持ちもあるけれど実際見ないと感動10割引になってしまうので一部隠しました)
その瞬間この絵に描かれた全てが繋がった、と同時に
自分の顔と目と足がその場から動こうとするのをやめたことを認識した。
この子の考えてること、この子がどう見られているかばかり頭に浮かんで目が離せない。次の絵までの一歩が踏み出せない。少なくとも
そのとき時間は止まっていた
金縛りはこんな状態なのだろうか、一目惚れなら人生でハジメテ…
それからというものの僕の「暇な時に行く所リスト」に美術館が殴り込んで来たのは言うまでもない。耳しかない僕に目がついたと言い換えることができるだろう。それゆえ僕は音楽が好きな人にここへ行って欲しい。芸術へのセンスがそれなりにある状態で行くと見える景色が変わってくるんだよ、きっと。
注:本文は8月中に書いた物ですので現在の状況と異なる場合があるかもしれません
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