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腰痛予防のための重量物持ち上げ方法 〜stoop法とsquat法〜

皆さん、お疲れ様です。
北海道千歳市の病院で勤務する理学療法士の澤野です。

今回は腰痛予防のための重量物持ち上げ方法 〜stoop法とsquat法〜  についてお話します。

前回、重量物持ち上げ動作と腰痛という記事で、重量物持ち上げ動作は腰痛や腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患の発症リスクを高めるため、重量物持ち上げ動作方法などを改善する必要があるのではないかというお話をしました。

以下に前回の記事を添付しておきます。

持ち上げ方法には、stoop法 と squat法 の2種類の持ち上げ方法があります。stoop法とは「膝を伸ばしながら前屈みで物を持ち上げる方法」です。一方squat法とは「膝を曲げてしゃがみ込むように物を持ち上げる方法」です。

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厚生労働省は理想的な重量物持ち上げ方法としてsquat法を推奨しています。しかし、「職場における腰痛予防対策指針」1) において、squat法を推奨する理由については明確にされていません。

1)厚生労働省 2013 , 職場における腰痛予防対策指針

今回紹介する報告は、重量物持ち上げ方法のstoop法とsquat法、どちらの方が腰の脊柱起立筋(腰背部の筋肉)の筋活動が少ないか、体幹前屈角度が小さいか、です。もちろん、脊柱起立筋の筋活動が少ない場合や体幹前屈角度が小さい場合は腰痛発症のリスクが低いということになります。

結果はsquat法です。

詳しく紹介していきます。

1.stoop法とsquat法の筋活動

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stoop法とsquat法の筋活動を見てみると、squat法の方が脊柱起立筋の筋活動が少なく、大腿直筋(膝の筋肉)の筋活動が高くなっています。これは、脊柱起立筋の筋活動を膝の大腿直筋で補っていることとなります。そのため、しっかり脚と腰を使って持ち上げることができています。一方でstoop法では脊柱起立筋の筋活動が高く、繰り返す持ち上げをすると腰痛発症のリスクが高いことがわかります。

2.持ち上げ方法別の脊柱起立筋が最大に活動する際の体幹前屈角度

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もう一つ、脊柱起立筋が最大に活動する際の体幹前屈角度(身体が前屈した角度)も報告しています。

脊柱起立筋が最大収縮する際の体幹前屈角度もsquat法の方が小さく、45°以上前屈する対象者はいないとなっています。一方でstoop法では平均で41°前屈し、60°を超える対象者は8例いたと報告されています。

因みに、前屈角度60°を超える作業では腰痛発症リスクが1.5倍に高くなる2)とも報告されているため、体幹前屈角度の大きさも腰痛予防には重要となります。

2)Hoogendoorm WE 2000 , Spine

以上より、腰痛予防ための重量物持ち上げ動作は、膝を曲げて持ち上げるsquat法の方が、脊柱起立筋の筋活動やその際の体幹前屈角度が小さいという報告です。squat法の方が腰痛発症リスクを抑えられる方法ではないかと可能性を示唆する報告の紹介でした。

藤村 2004 , 日職災医誌

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


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