Ippei Nakamura

Tokyo(22)

Ippei Nakamura

Tokyo(22)

最近の記事

傷の真実性

忌憚のない問いに耳を疑った。 気がついていたのかも。一度引っ掻くと暫くは赤く拒否反応を起こすような脆弱性を。 慈愛に満ちているはず。丁寧に織って構成されている心。 進んできた道を少し早歩きで追いかけていたんだ。 違って真っ直ぐなその道はその人を表していて 幾何学的なむず痒ささえ覚えた。 傷に塗れた記憶を塗り替えてあげたかったんだ。 そんなことは必要なくて、傷の周りをなぞってあげるだけで良かったんだ そのものが美しいから、

    • 呼応

      記憶の断片を取り出して上映会を始めた 視覚領域というフィルターを通して 暖かな記憶が上映された この記憶は遥か昔の冬のこと 過去を起動点に現在を生きていて 未来を基準点に定める 現在では息をひそめて、誰かの音へと変わっていた。 呼応

      • 軌道に乗せて、輪郭を描く

        軌道に乗せて、輪郭を描く 経験こそが道となり、この道は一方通行です。 憶いが原動機となり、描いた輪郭は人生そのものです。 一人ひとり積んでる原動機の積載量は様々で 描く輪郭も様々です。 進むための原動機が故障したら燃料を変えましょう。 たとえば、軌道そのものが慌ただしい外気に攫われて 犇めき合う一つの道に飲み込まれたら 何を思いますか。 描く色が混ざり合うとそこには暗闇が生まれます。 暗闇に飲み込まれたらあの刹那に光る星を頼りに進み 描き始めましょう。 やがて小鳥が鳴き

        • immersion

          煩悶は時代を問わず人々の精神を蝕んできました。 例に漏れず私もそのうちの一人で、 それは自己療養の一手にはなり得ません。 そんな精神の亀裂から覗き込んだもう一人の私は 気がつくと凶暴性を失っていて 音だけが反響する空間芸術の中で動物になっていた。

        傷の真実性

          refrection

          ここは静かな場所でした。空気中の埃でさえ大きな断層となりえるくらいには。私が再び席を立つとその断層は再び水を得た魚のように行動を始め、不透明なヴェールをまとった空気中の大気へと吸い寄せられていました。 ”それ"は形を変え攻撃性をもって再び私の前に現れました。 〈素晴らしい芸術は奴隷制度を持ってして生まれます〉 独り善がりなギリシャ人は本の中でこんなことを言っていました。人間の思想は一夜にして淘汰されるものです。(のちのギリシャ人がそうであったように) 過去の思想のほとんどが