コーヒーブレイク

検査データ改ざん事件にみるパートナーシップ

納期か、品質か

 先日、免震対策の商品を取り扱う企業が検査データの改ざんを認めました。納品先に、官公庁、病院、施設のほか、重要文化財に指定されている建物まで含まれているため、大問題になっています。

 報道によると、納期に間に合わせるために、データを改ざんしたのだとか。ここ数年、こうした問題が噴出し、企業の信頼のみならず、日本ブランドの信頼も失墜させる結果につながっています。

 以前、コンフリクト(葛藤)とパートナーシップについて触れましたが、ここにも、「納期に間に合わせる」ことと「確かな品質を保証すること」が天秤にかけることがおき、パートナーシップが損なわれる事態となりました。

取り戻せない損失

 今回、問題となったA社は、下請け企業の社員の方が、データ改ざんに疑問を感じ、是正を訴えていたようですが、どうやら納期が優先され、その声は封殺されたのではないかと推察されます。

 その社員の方が、どのような方なのかは存じません。しかし、自分の仕事に誇りを持ち、商品の品質に責任をもち、そのことに働きがいを感じ、家族を養っていたのかもしれません。

 ピンと来て、自分たちの言っていることとやっていることを一致させようと行動した社員は、自分が製造・販売している商品を使う顧客と、その商品を使った建物を使用する人々の命を守るという点で、パートナーシップを発揮していたのでしょう。

 そのパートナーシップをなきものにしたのは、まぎれもなく彼の声を封殺した人と組織です。いや、正確には、パートナーシップが欠落した人や組織だったからこそ、このデータ改ざんがおき、社員の声を封殺し、その社員も会社を去ったのでしょう。

嫌気がさす組織

・これは是正しましょう!と提案したことを放置する
・これはまずいですよね?という声に取り合わない
・誠実さのあるいい社員ほど辞めていく

 こんなことが起きているところには、パートナーシップが欠けているのだと言えます。そんな組織で働いていると、嫌気がさしてくるでしょう。
 そこに染まり、目を逸らし、モラルが低下してしまっている人が集まる組織は、新しい人が入ってきても育たないし、提供するサービスの品質も低下が免れず、早晩、会社の体をなすことが難しくなるだろうなと思います。

 それでなくても人手不足が叫ばれている時代です。
 良い人材は、パートナーシップあふれる良い組織へ。
 そうではない人材は、パートナーシップに欠ける組織へ。

 パートナーシップの専門家としては、そんな世の中のトレンドが見え隠れするデータ改ざん事件でした。

記事に価値があると認めてもらえることは、何より嬉しいですし、とても力づけられます。いただいたサポートはパートナーシップの価値が大きくなる使い方につなげます。