忍び寄るシュリンク

シュリンクフレーションをご存知でしょうか。
企業がひっそりと商品の内容量のみを減らし、実質的な値上げを実施することです。
企業側はこれに様々な理由を付けますが、消費者側がこれを好意的に捉えることは少ないでしょう。消費者は「裏切られた、騙された、損をした」と感じ、企業の見苦しい言い訳に顔をしかめます。私自身も同じ気持ちです。

さて、私が仕事の日には、ダイエットと節約を兼ねて、妻がおにぎりを持たせてくれます。なんとも素晴らしい、できた妻です。
そんな妻からある日「おにぎり足りてる?」と聞かれました。
「足りてるよ」と私は答えました。正直に言えば、毎回代わり映えのないラインナップのため物足りなさは否めませんでしたが、それを補って余りある妻の愛情で私の胃袋は満たされていました。

しかし私が物足りなく感じていたことを、知らず知らず妻に気取られていたのでしょうか。

「なんで?」

不安を打ち消すかのように、台所に立っていた妻に問いかけると、妻はこちらを振り返り答えました。

「おにぎりの量減らしてるから」

振り返った妻の顔がほんの一瞬悪魔に見えた気がしましたが、妻はいつもの笑顔をこちらに向けていました。

ひきつった笑顔を妻に返しましたが、私は動悸に襲われ、やや遅れて両手の痺れる感覚を覚えていました。

妻にシュリンクフレーションをかまされていた。

物足りなさを感じていたのはラインナップのせいではなく、単純におにぎりの量が足りていなかったからだ。しかし今更足りていないなどと言えるわけがない。

裏切られた、騙された、損をした。

予期せぬ出来事にカッとなり冷静さを欠いていましたが、それも少しの間ですぐに落ち着きを取り戻しました。
妻はこれまで文句ひとつ言わず、私のためにおにぎりをこさえて、私に持たせてくれました。感謝こそすれ、不平不満をぶつけるなどという愚行に及べるわけがありません。

許す許さないの話ではありません。
それも企業と消費者との健全なお付き合いのひとつなのです。

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