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日本も他人事ではない - 生成AIがもたらす選挙の脅威(そして陰謀論…)

米国CBSニュースのこの記事を読み、昨今のTwitter(X)の酷い状況を踏まえ、「日本も他人事ではないな」と感じています。

現代の技術進歩により、生成AIやディープフェイク技術が急速に発展しています。これらの技術は、映画やゲームの制作、教育、医療など様々な分野で活用される一方で、大きなリスクも孕んでいます。特に選挙においては、これらの技術がどのように利用されるかが今後、重要な問題となっていくでしょう。

生成AIは、高度な画像、音声、動画を生成する能力を持っており、これによってディープフェイクと呼ばれる偽の映像や音声が作り出されます。例えば、著名なポッドキャスターであるジョー・ローガンが「地球に衝突する小惑星が存在し、政府がこれを隠している」という偽のメッセージを発信したとする動画が拡散されたことがあります 。この動画は、実際にはローガンの映像にAI生成の音声を重ねたものであり、全くのデマでした。このようなディープフェイクは、視聴者に強い印象を与え、多くの人々に真実だと誤解させる可能性があります。

この現象は日本でも他人事ではありません。生成AIの技術が進歩するにつれ、選挙における情報操作やデマの拡散が容易になり、民主主義の根幹を揺るがす可能性があります。特に、SNS上での情報拡散が迅速に行われる現代では、一度拡散された偽情報を訂正することは非常に困難です。

さらに、生成AI技術の発展により、陰謀論が広まりやすくなっています。陰謀論は、例えば「政府が秘密裏にエネルギー兵器(または地震兵器)を開発し、それを使って意図的に災害を引き起こしている」といった内容で、これらもAIによって生成された偽の証拠映像や音声、偶然撮れた"それっぽい"画像などが使われることが多いです 。こうした情報は、特に情報リテラシーの低い人々にとっては非常に説得力があり、簡単に信じられてしまいます。

このように、生成AIとディープフェイクの技術は非常に強力であり、その利用には大きなリスクが伴います。日本においても、これらの技術が選挙や社会全体に与える影響を深く考え、適切な対策を講じることが急務です。情報リテラシーを向上させる教育や、SNSプラットフォームの監視強化などが求められます。

ディープフェイクと情報リテラシー

ディープフェイクは、その高度な技術により、見る者に強いリアリティを感じさせる力を持っています。しかし、ある程度生成AIに触れていたり、情報リテラシーを持っている人々は、これらの偽情報を見抜くことができます。現状のAIの精度であれば、私はほとんどを見分ける、もしくは疑うことができると思います。なんとなく使用されたプラットフォームがMidjourneyなのか、DALL·E 3なのか?という感覚もありますし、内容によっては「あぁ◯◯◯というプロンプトかな…」といった想像も可能です。

問題は、そうでない人々が相当数存在し、彼らがディープフェイクやAI生成の画像を何の疑いもなく、まるっと真実であると誤認する点にあります。

特にTwitter(現在はX)上では、ディープフェイクやAI生成の画像が拡散されることが多々あります。このようなコンテンツは、視覚的に非常に説得力があるため、多くの人々がそれを真実だと信じてしまいます。特に、ショッキングな内容やセンセーショナルなストーリーが含まれている場合、その影響力はさらに増大します。

陰謀論もまた、こうした環境で広まりやすくなっています。ディープフェイクによって作成された偽の証拠映像や音声は、陰謀論者たちにとって非常に強力な武器となります。彼らは、これを利用して自身の信念を裏付ける「証拠」として提示し、それを信じる人々を増やしています。このような状況を助長しているのは、多くの人々が情報の取り方を知らないことにあります。

特に高齢者においては、ここ数年でインターネットに触れる機会が増え、それまでの情報源であったテレビや新聞では見えなかった情報に触れるようになっています。しかし、新たに得た情報を正しく評価するリテラシーが不足しているため、「知らなかった情報=真実」として受け入れてしまうことが多いのでしょう。これにより、陰謀論や偽情報を簡単に信じてしまうリスクが高まっています。

また、陰謀論の中に一つでも正しい情報が含まれていると、それが全体として正しいと判断してしまう傾向があります。これは、部分的な真実が全体の信憑性を高める効果を持つためです。プロパンガンダを流布させる際は意図的にこのような効果を狙っている…ということも理解しておくべきでしょう。

一定のリテラシーを持つ人々は、発信されたプラットフォームによって情報にバイアスがかかることを理解しています。例えば、朝日新聞と産経新聞では論調が異なり、スプートニクからの情報はロシアの政府系メディアであり、Telegramはその特性から他のプラットフォームを追われた危険なユーザーや、偽情報の拡散者、陰謀論者や過激派、違法薬物取引者が集まる場になっているということを理解した上で読む必要があります。しかし、こうした感覚を持たない人々が多く存在し、その結果、偏った情報を鵜呑みにしてしまうのです。

このように、ディープフェイクや情報リテラシーの問題は深刻であり、特に選挙などの重要な局面においては、その影響力が非常に大きいのです。

※フェイクではなく、事実の範囲内であっても異なる印象で情報を流布する術もある。ユーザーはそれを見抜かなくてはならない。

情報弱者のリスク

昨今の情報社会においては、情報を適切に取得し、評価し、利用する能力が求められます。しかし、情報リテラシーが不足している人々、いわゆる情報弱者は、特に生成AIやディープフェイク技術の進化に伴い、ますますリスクにさらされることになります。

情報弱者とは、情報を正しく評価し、信頼性を判断する能力が不足している人々のことを指します。彼らは、信頼性の低い情報源からの情報を無批判に受け入れ、虚偽情報や陰謀論に騙されやすくなります。特に、日本においては高齢者がこの情報弱者の大部分を占めており、彼らは多くの票田を形成しています。

情報弱者のリスクは、多岐にわたります。まず、虚偽情報や陰謀論を信じることで、不必要な不安や恐怖が生じ、社会全体の安定が脅かされます。例えば、陰謀論に基づいた行動が増えることで、社会的な対立や分断が深まり、社会の調和が乱れることがあります。また、情報弱者が選挙において重要な役割を果たす場合、虚偽情報に基づいた投票行動が行われるリスクも高まります。

日本の高齢者は、特にこのリスクにさらされています。多くの高齢者は、これまでの情報源であったテレビや新聞からインターネットに移行し、新たな情報源に触れるようになっています。しかし、インターネット上の情報は玉石混交であり、信頼性の低い情報も多く含まれています。情報リテラシーが不足している高齢者は、これらの情報を無批判に受け入れてしまうことが多く、陰謀論や虚偽情報に影響されやすいのです。

Twitter(X)には荒唐無稽な陰謀論を心の底から信じている人が多数存在する。SNS上のやりとりを見るとわかるが、彼らは本気だ。本当にイーロンとトランプが木星で異星人と会議をしていると思っているのだ。

※ここ最近では、このような陰謀論を本気で信じて発信するユーザーがフォロワーを数万人、数十万人獲得している事例も少なくない。大きな事件などが起こらないと良いが… 陰謀論は次々と他の陰謀論と重なり、いまやフラットアースなども加わって全部盛り状態になっているが、彼らはそれを信じて疑わない。かなりの数をチェックしたが、おそらく高齢者であろうというアカウントが本当に多く感じた。


また、日本における選挙制度は高齢者の投票行動に大きく依存しています。高齢者は投票率が高く、その一票一票が選挙結果に大きな影響を与えるため、彼らが虚偽情報に基づいた判断を下すことは、民主主義の健全性を損なう重大なリスクとなります。特に、生成AIやディープフェイク技術による情報操作が行われる場合、その影響は計り知れません。

このような状況を改善するためには、情報リテラシーの向上が急務です。教育機関や公共機関、メディアが連携し、情報の正しい評価方法や信頼性の判断基準を普及させることが求められます。また、SNSプラットフォームや検索エンジンなどのインターネットサービス提供者も、虚偽情報の拡散を防ぐための対策を強化する必要があります。

情報弱者のリスクを軽減するためには、社会全体での取り組みが必要です。特に高齢者に対しては、情報リテラシー教育を強化し、彼らがインターネット上の情報を正しく評価できるよう支援することが重要です。そうすることで、情報操作や虚偽情報による影響を最小限に抑え、健全な民主主義を守ることができるでしょう。まぁ簡単なことではありませんけどね。

まとめ

生成AIとディープフェイク技術がもたらす選挙への脅威は、日本にとっても決して他人事ではありません。これらの技術は、巧妙な偽情報を作り出し、それを信じ込む人々を生み出す力を持っています。特に、情報リテラシーが不足している層に対する影響は深刻であり、民主主義の基盤を揺るがしかねません。

まず、私たちはディープフェイクのリアリティに対する警戒心を高める必要があります。技術の進化は止められない一方で、その利用に対する倫理的なガイドラインや法規制の整備が求められます。また、教育現場や社会全体で情報リテラシーの向上を図り、特に高齢者を対象とした対策は急務でしょう。彼らがインターネット上の情報を正しく評価し、虚偽情報に惑わされないようにすることが、社会全体の安定と健全な民主主義の維持に直結します。

さらに、SNSプラットフォームやメディアは、虚偽情報の拡散を防ぐための技術的対策を強化する必要があります。なお、私は従来からプラットフォームに責任を押し付ける論調には反対の立場を取っています。しかしながら、この状況ではなんとかプラットフォームの協力を得たいところです。
AIを利用した偽情報検出システムの導入や、ユーザーへの情報リテラシー教育の普及が考えられます。これにより、情報の真偽を迅速に判断し、誤った情報が広まる前に対処することが可能となります。

ユーザー自身も、情報の受け手としての責任を自覚し、疑問を持つことが重要です。疑わしい情報に対しては、複数の信頼できる情報源を確認し、自分自身の判断力を鍛えることが求められます。これにより、偽情報や陰謀論に踊らされることなく、冷静な判断を下せるようになります。

総じて、生成AIとディープフェイク技術の影響を軽減するためには、社会全体での包括的な取り組みが必要です。政府、教育機関、メディア、そして私たちユーザーも協力し、情報リテラシーを高めることで、健全な民主主義を守り抜くことができるでしょう。情報の取捨選択において、一人ひとりが主体的に行動することが必要でしょうねぇ。

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