真女神転生で読み解く思想

人は、学校という浜辺で社会という海について学ぶ。

そして学習した後、海へ飛び込み、遊び、そして波を作り出す。

その波が干渉しあって、沖の波止場の壁に染みを作り、思想という名の模様を生み出す。

人はその模様を見て、自らの立ち位置を決め、壁へ向かって泳ぎながら激しく波を打ち立てる。

いつか真実と言う名の壁へと辿り着けると信じて。


皆さんは、真女神転生と言うゲームを知っているでしょうか。ゲームメーカーのATLUSが開発しているゲームシリーズで、ファミコンの女神転生から数えるなら、35年以上も続く名作ロールプレイングゲームです。

今だとペルソナシリーズの方が知名度高いかもしれませんね、あのペルソナシリーズと同じ会社の作品です。

真女神転生には、アライメントと呼ばれる、思想のパラメータが存在します。それぞれ、LAW(秩序)、NEUTRAL(中立)、CAHOS(混沌)の横軸と、LIGHT(善)、DARK(悪)の縦軸があります。

真女神転生が発売したのは、31年も前になる1992年で、スーパーファミコンのソフトでした。そんな昔のRPGといえば大体はドラゴンクエストシリーズやファイナルファンタジーシリーズのように、ストーリーは一本道で、善と正義の主人公たちが、悪の帝国や魔物軍団を倒して世界に平和を取り戻すといった作品が主流でした。

そんな中、この女神転生シリーズはとても異質で、核戦争等で壊滅状態となった東京を舞台に、ごく普通の少年たちが突然現れた悪魔や天使たちに翻弄されながら、自分たちの立ち位置(アライメント)を決めて、荒れ果てた東京を生き延びるという、バラバラな価値観の世界の中を彷徨うおよそ子供向け作品とは思えない内容となっています。

今回はこの真女神転生のアライメントを使って、古今東西様々な思想家、政治家に登場してもらい、筆者の個人的な主観で当てはめて考えていこうと思います。

まずはアライメントについて個人的な解釈をしていきます。

LAW(法、秩序、全体主義)
 決まり事やルールを重視し、場合によっては絶対視する思想。個人の幸福     よりは社会全体の安定を優先する。社会性が高く社交的で、保守的な思想を持つ者が多い。

NEUTRAL(均衡、不断、半端)
 横軸:法と自由をバランス良く取り入れ、考え方に偏りを持たない。他者との衝突を避けつつも、極端な馴れ合いも避ける傾向にある。

 縦軸:善悪にとらわれず、直感的に生き、事象に対して深く考えず、ありのままを受け入れる。

CHAOS(力、自由、個人主義)
 自由と個人の幸福を至上とし、個々人が高い能力を持つことができれば法の檻すらも超越できると考える。社会よりも個人を優先して考える。革新的な考え方をする者が多い。

LIGHT(愛、献身、奉仕)
 他者へ貢献することを生き甲斐とし、善の性格を持つ。

DARK(利己、排他、攻撃性)
 自分の目的を優先し、他者を軽んじる。悪の性格を持つ。

筆者の勝手な主観アライメント表

それではそれぞれ何故その位置なのかを解説していきます。

イエス・キリスト

どちらかというとイエスの思想というよりは聖書の教えていることと捉えた方が良いです。イエスの思想となると、LIGHT-NEUTRALなのかもしれないと思います。
イエスは父である神を絶対とし、神の法を人々に守るように説きます。それと同時に、人が人を裁くことを戒め、法の上に立って善を行いなさいと説きました。


山本太郎

最近巷で人気(?)の全国行脚街頭演説の政治家、れいわ新選組の代表山本太郎氏。
彼は社会の幸福のために貧富の差を埋め、収入の少ない者を下支えし、収入の多いものはその富を社会に還元すべきだと説いています。全国を回りながら、社会的弱者(彼は弱者など居ないという思想を持っています)を救済する社会の実現を訴えて活動しています。


アドルフ・ヒトラー

もはや知らない人は居ない、ドイツのナチス労働党の総裁です。独裁的で排他的、自分に従わない者は容赦なく斬り捨てます。
強い全体主義思想で、個々人の幸福のためではなく、強い国を維持するために、個を捨てて国に貢献して戦うように民を扇動し、支配しました。


大日本帝国

軍国主義で世襲制の帝国時代の日本の、多数派の思想です。
ナチス同様、個人の幸福よりも社会全体への奉仕を強要しました。


ポル・ポト

カンボジアの政治家。強権的な独裁で民を支配し、その支配力強化のために、自分に逆らいかねない知恵者を虐殺、挙句の果てにスパイが国内に紛れ込んでいるとして大量の人民を虐殺した狂気の独裁者として知られます。


自民党

言わずと知れた日本の与党第一党。日本国内で最も権力を持つ政党。経済の自由を是としているため経団連や経済学者などの意見を主に取り入れ、市場への極端な介入を避ける。財政に対しても消極的で、公共事業をあまり増やさず、インフラの民営化を進めています。


現代日本人の平均(多数派)

自民党を支持している人が多い。政府の負債は国民の負債と考え、基本的に自己責任を是とします。社会全体のためにというよりは、個人の幸福を追求する姿勢があります。昔は礼儀や滅私奉公といった全体主義的思想を持つ人が多かったですが、近年は他者への関心より自己の安定を重視する人が増えました。


フリードリヒ・ニーチェ

伝説の狂人超人。
ツァラトゥストラはこう語った、善悪の彼岸などを執筆。かなり独特な思想を持ち、他人をあまり信用せず、人を超越して神への依存を捨て、超強い人間になることを目指すべきだと語りました。

釈迦

ゴータマ・シッダルタ、ブッダという名でも知られる、古代インドのクシャトリヤの家系、シャカ族の王子という生い立ちを持ち、家を捨て原始仏教の開祖となった方です。彼の思想を理解するのは並大抵の事では不可能であり、人の関係は諸法無我であり、それ故すべては諸行無常である、という意識の境地に到り、悟りを開いて涅槃寂静を得なくては理解することは出来ないと語り継がれています。
この原始仏教、釈迦の思想に詳しい方から話を聞く限り、釈迦は事象のすべてをあるがままに受け取り、素直に感覚的に捉え、解釈というものを捨て去っているのだそうです。まさに、無我の境地。我々凡夫が理解するにはあと1000年はかかるかもしれません。

大体の人間はどこかに偏りますが、平凡で順風満帆な人生を送り、今も特に悩みが無いという方の中には、釈迦と同じようにど真ん中の思想を持ってる方がいらっしゃるかもしれませんね。

社会全体の安定を図り、波風立てず、他者を意識して生きるLAW。
精神的に強くなり、社会や神を超越し、依存を完全に捨て去るCHAOS。
そして、思想の偏りに左右されず、あるがままを受け入れるNEUTRAL。

あなたのアライメントはどこでしょうか。


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