熱調理する料理であれば魚は長めの熟成が最適説
サバサンドの質をあげたくて、サバだけでなく魚の周辺知識について調査&調理を実践しているのですが、熟成と熱調理についてある程度方向性が見えたので、まとめます。
結論としては、魚は熱調理をする場合は、長期熟成が最適なんじゃない?という話です。理由はざっくり2つです。
① 熟成によって旨みは最大含有量に達したあと減少するが減少はゆるやかで、別の甘みなどの美味しい成分が増える
② 熟成で身はどんどん柔らかくなるが、熱調理するのであれば身の柔らかさはさほど重要ではなくなる
この結論にいたった話をざーっと書きます。長いです…
熟成における仕立てで重要なのは大きくは2つ
・魚は元気な状態でシメて、神経締めもする
・血や内臓をきっちり取り除く
この二つです。
魚は元気な状態でシメて、神経締めもする
魚は細胞内のミトコンドリアで生成されるATPが徐々に変化してイノシン酸という旨み成分に変わっていき、さらに美味しくなります。つまり、ATPが豊富に残っている魚ほど熟成したときに旨みが強くなると言うことになります。これは他の食肉についても同じだと思います。
ATPはエネルギー源のようなもので、シメる前に大暴れしたり、苦しんだ場合や、シメても神経締めまで行わなかった魚が輸送中に痙攣したりすることでATPが消費されてしまいます。
なので、魚はシメる前の状態と締め方が大事で、いかにATPを豊富に含んだ状態でシメられるかが重要になる。
ちなみに、ATPは魚を休ませれば復活するそうで、大暴れして疲弊した魚はそのままシメるのではなくて、シメる前に水槽などで休ませた方がいいと言う話もあります。みんな美味しく食べるために工夫してるんですね。
血や内臓をきっちり取り除く
魚の熟成に置いてもう一つ重要なのは血と内臓の処理。血や内臓には細菌や微生物が多く含まれていて、それらが残った状態だと、魚の酵素による分解ではない不適切な分解が進んでしまい、食べられない状態になってしまいます。
(腐敗についてはまだ腑に落ちてない部分も多いですが、ざっくりはこんな感じだと思います)
なので、シメてからなるべく早く内臓を抜き取り、血を抜き、血合いなどをかきとります。血を多く含むエラなどもしっかりとります。血抜きは徹底的にやるのがいいとされていて、最近は津本式という血抜きの仕方が話題になっています。
魚を水につけて自然に血を流し出すのではなく、動脈にホースで水を注ぎ込んで血管の隅々まで血抜きをするやり方です。
特別な器具がなくてもホースさえあれば出来そうな気がします。
内臓には細菌だけでなく、白くてウネウネしたアニサキスという寄生虫もいる場合もあり、やつらはシメて時間が経つと内臓だけでなく身まで移動してきて、それを生のまま食べると食中毒を起こします。なので内臓はさっさと抜いてしまうのが重要です。
熟成を進めると旨みが増え、身は柔らかくなる
ATPは段階的に成分が変化してイノシン酸に変わるのですが、ATPが尽きると死後硬直が始まります。死後硬直直後が魚の身が一番硬く、時間が経つにつれ徐々に身が柔らかくなっていきます。
また、時間経過とともにイノシン酸含有量が増えますが、イノシン酸も別の成分に変化していくので、含有量が最大になったあとはゆるやかに減少していきます。そして、さらに熟成させると、酵素分解によりイノシン酸とはまた別の甘みなどの美味しい成分がでてくるようです。長期熟成はイノシン酸の減少がゆるやかであることを利用した調理です。
魚を生で食べる寿司や刺身などは、旨みのコントロールだけでなく、食感のコントロールも重要になります。しかし、熱調理する場合は、熱し過ぎなどを避ければ適切な食感にもっていくことは難しくないはずなので、長期熟成をしてより美味しい状態にもっていくのがベストなのではないか、という考えに至ったというわけです。ふぅ…
料理において重要な水分が熟成によって足りなくなる
熟成について、別角度からもう少し深掘りします。
水分量が十分にあると、口内で美味しさを感じやすくなるので、料理においては水分量のコントロールがかなり重要になります。鰹節をそのままたべるよりも、出しをとってお吸い物にした方が旨みを感じやすいですよね。それです。
魚を熟成する過程では、魚の体液が出てきます。エキスなんて言われがちな液体のことです。そいつをペーパーなどに吸収させながら熟成させます。なので魚の身は水が徐々になくなり、水々しさを失っていきます。
なので、長期熟成するとしても、魚の身にある程度の水分量が確保できる範囲内で熟成するのがよいのではないかと思います。熟成で水分を失い過ぎた場合は、熱調理前に水分を補えばいいのだと思いますが、どうなんだろうか…今後試してみます。
熟成はちょっと危険
まとめ…の前に、注意喚起です笑
熟成は悪い菌が繁殖する可能性もあります。熱してもダメなやつもいるようです。私はそこらへん自己責任でやってますが、正直ちょっと怖い部分もあります。そこ含めて楽しんでますが…
もし熟成してみようという方いましたら、危険性などを十分に調べて、自己責任でお願いします。私では責任取れません…
危険性などについては、またの機会にまとめてみます。熟成では温度管理も重要なようなので、熟成の周辺知識についても、また書ければと思います。
鮮度が落ちる魚の代表格で、当日食べるのがベストと言われるいわしも適切に下処理をすれば3~4日寝かせても問題なかったので、サバについてもうまくやれば美味しく熟成させられるかもしれませんね…
以上です!
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