言ってはいけないMリーグチーム紹介3(EX風林火山・雷電)

全4回連載の3回目です。

※年明けの試合も始まりましたが、ptは年末までの結果です

EX風林火山 -23.4pt


二階堂亜樹 -110.6pt
ザ・地蔵。チームメイトの滝沢の我慢も凄いが、二階堂の我慢はそれ以上。とにかく前に出ない。鳴かない。とにかく我慢してカウンターのチャンスをじっと待つ。点棒が少なくなると前がかりになりがちなものだが、彼女の場合はそれが無い。「チャンスが来なかったらしょうがない」という割り切り。天鳳のラス回避麻雀にも似て、修行僧的な雰囲気すら感じる。女流プロの世界を長年牽引してきて人気実力ともに今でもトップクラスだと思うが、そういう人がMリーグでこういう麻雀を打つのは意外だった。昨シーズンはラス回避成功していたが、今シーズンは地蔵ラスもそこそこ食らっている。腰の重さが極端すぎるようにも見える。ただ、Mリーグの足切りシステムにおいては正しい戦略なのかもしれない。「崩れさえしなければ他のエース2名が稼いできてくれる」というのもあるだろう。ここからのシーズン終盤戦、セミファイナル、ファイナルと進んでいく中でどのように打ち方を変えてくるのか、あるいは変えないのか、興味深い。

滝沢和典 +21.2pt
やっぱりみんなの人気者のタッキー。麻雀はザ・王道のバランス派。基本は柔らかく守備的に構えながら、押すべき時にはしっかりと押す。見ていて打牌選択にまったくと言っていいほど違和感がない(と言っても、自分が同じように打てるかと言ったらたぶん打てないのだけど)。見ていて思うのは、我慢が凄いところ。行きたくなるところでもおさえながら淡々と打つ。記録的なラスも引いたけれど、その時を除けば安定感抜群の麻雀を打っている。Mリーグを見ている限り、ここ数年不調が続きリーグ戦もC1まで落ちているということが信じられない。
堀内事件の時に、解説の滝沢が堀内の所作に対して物言いをつけていたことが引っかかっていた。改めて滝沢の麻雀を見ていると、麻雀に対して非常にストイックな人なのだと思う。所作に気を使っていて、顔芸やため息などはまずしない。強打もしない。感情を抑えて淡々と打っていると思う。おそらく、「フェアな試合にしたい」という気持ちから、余計な情報や誤解させる可能性のある情報を出さないように注意しているのではなかろうか。「そうか、タッキーは侍だったのか・・・」と。堀内の所作が許せなかった当時の滝沢の気持ちも今なら理解できる気がする。


勝又健志 +66.1pt
「軍師」とか「IQ220」とかいう呼び名がスマートで格好良すぎてずるい。鳳凰位のタイトルもあり、プロ連盟の中でもエース格の一人。解説がダントツ最高で好み。人読みの要素をいれつつ細かいところまで打ち手の思考に入っていきどこまでも喋りまくる。塾講師をやっていたということで、まるで問題の構造や意図を生徒に教えているような語り口でとにかくわかりやすい。実況の言うことを「それは違いますね」とナチュラルに否定したりするのはどうなのかなと思うけど、それぐらいガチ勢気質なのだろう。打ち手としては理知的な一面だけでなく、強引に染め手に持って行ったり、親のリーチにカンチャン待ちで真っ向勝負したり、時に荒々しい一面も見せる。頭の回転の速さゆえかシビアな状況でもノータイムで選択してくるので、見ている方は「えっ」となりがちだがそれも一興。個人的にはMリーグが始まって勝又の解説及び麻雀を見る機会が増えたのが、一番の収穫と言っても良い。


チーム評価 A
3人のバランスが良い。4人になって純度が下がったチームが多い中で、少数精鋭の3人体制を維持しているがゆえの強みがある。Mリーグはどうしても女流がウィークポイントになりがちだが、風林火山の二階堂は安定感があり大崩れしないという点で他チームと比べて相対的に有利。他2名の滝沢・勝又はMリーグ屈指の実力者なので、他チームからどんなメンバーが出てきても互角以上に戦える。
自分はもちろん彼らの名前は知っていたものの、連盟ということで敬遠していた部分があった。それがMリーグで麻雀や解説を見て魅力を感じるようになったメンバー・チームであり、応援している。週刊誌の報道などもあったが、当事者が否定しているし、いずれにしても麻雀にはまったく関係がない。気にせず集中して勝ち進んで欲しいと思う。


TEAM RAIDEN/雷電 -34.2pt

萩原聖人 -173.4pt
Mリーグへの貢献度の高さは素晴らしく、欠かせない選手であることは間違いない。なんだかんだで、彼が登場すると盛り上がる。ましかし、麻雀はやはり拙いと言わざるを得ない。強引な三色狙いがよく指摘されているが、それ以前に初歩的な牌理が理解できていない。絶対的にスピードが求められる局面でロスのある手組をしてアガりを逃しているシーンを今シーズンだけでも何度も見た。
打牌選択は各自のスタイルなのでまだ許容できるとしても、マナーが悪いのは頂けない。顔芸、ため息、リーチ後のツモを手牌につける(年明けの試合では改善されていた)、盲牌気味のツモ、アガった時に手牌を山のギリギリ手前であけるので他家から見えづらい、などなど、とにかく格好が良くない。俳優なのだから格好良さにこだわって欲しいところである。
文句ばかり書いてしまったが、Mリーグが盛り上がる為には、ボケ役が必要とも言える。そういう意味ではツッコミどころをふんだんに用意してくれる萩原の存在は必要。引き続き萩原の麻雀を貫いて欲しいと思う。

瀬戸熊直樹 +165pt
昨シーズンはボロ負けだったが、今年は修正してきたのか絶好調。雷電の中ではエース的な存在で、実際にその役割を果たしている。自分もまだ測りかねている部分があるのだが、評価が難しいタイプの打ち手。昔ながらの流れ派な発言もあるし、割と慎重派で勝ち味に遅いようなところもある。しかし、いざという時は思い切った攻撃で大物手をものにするし、クマクマタイムになって素点稼ぎまくりの大トップを取ったりする。獲得タイトルも多いし、やはり何かを持っているのだろう。固定メンツでの駆け引きが得意なタイプなのかもしれない。まだ自分の中では謎の多い打ち手なので、引き続きウォッチしていきたい。

黒沢咲 -25.8pt
セレブ打法ということで、とにかくメンゼンにこだわって進める打ち手。「これが出たらさすがに鉄鳴きだろ」という時でも鳴かなかったりする。「どう考えても損じゃないの?」と思うこともあるが、ここまで徹底されるとすがすがしさすら感じる。リーチはだいたい好形で打点もあるので威圧感がある。荒い攻撃型タイプという印象もあるが、例の「当たり牌の9sを切らず5mを切って放銃回避」という神技もあったように、繊細な守備もするタイプ。そもそも基本メンゼンなのでオリの局面で手詰まりすることも少ない。逆転でA1昇格も決めて、来期は唯一の女性A1リーガーに。男子プロの中でも実力を発揮できるタイプか。いずれにしても、個性があって貴重な打ち手。

チーム評価C
萩原、瀬戸熊、黒沢と個性のある打ち手が揃っていて、まさに「面白い」チームである。瀬戸熊、黒沢がプロ連盟のベテランかつ現役バリバリ勢。上下に振れやすいスタイルだが、ツボにハマった時の爆発力は半端ない。萩原も含めて、見ていて華のある麻雀をするチームである。ただ、いかんせんトッププロの中に入ると萩原の力量が見劣りするのも事実。シビアな言い方をすれば、他チームに比べるとハンデを背負っているとも言える。Mリーグも短期戦と言えば短期戦なので、上振れすれば十分勝ち残れると思うが、ファイナルの舞台までいくとさすがに苦しくなるのではないか。ただ、このチームも雰囲気の良さを感じる。3人の関係性の良さが麻雀の結果にもつながると思うので、もしかしたら一発もあるかもしれない。


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