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毎日童話『葉っぱまみれの電車』

ここは街路樹の中の、ある駅

人間さんからは葉っぱに隠れて見えない

葉っぱまみれの電車が停車中

決して人間さんには見つかってはいけない

そんな危険な運行が今日も始まる

「ご乗車になられるお客様は人間さんに見つからないようにご乗車ください」

スーツ姿のコオロギさんが乗り

学校の制服を着たモンシロチョウさんが乗り

赤ちゃんを乗せた乳母車を押してるアリさんが乗り

杖をついたカブトムシさんが乗る

「閉まるドアと人間さんにはご注意下さい」

葉っぱまみれの電車が出発

街路樹の中にある次の駅へ向けて動き出す

「次は街路樹2丁目、街路樹2丁目」

数人の昆虫さんが下車し、違う昆虫さんが乗車する

それの繰り返し

唯一、気を付けなければならないのは、人間さんに見つからない事

「街路樹と街路樹の間を通ります」

街路樹の切れ目に差し掛かる

「静かに通りますので、鳴くのはお控えください」

人間さんの目には、葉っぱが舞っているだけ

人間さんに見つかってはマズイ

葉っぱまみれの電車が進む

『カーン カーン カーン カーン』

踏切の音が鳴った

「人間さんが通ります。絶対に鳴かないでください。」

人間さんが葉っぱまみれの電車の前を横切る

電車内はとても静かで物音ひとつしない

見つかっては大変な事になる

人間さんが一時停止した

電車の音もストップ

車内の音もストップ

無音が続く

人間さんは物を落としたようだ

落とし物を拾って人間さんはまた歩き出した

街路樹の中へ進入した

電車内の昆虫さん達は一安心

今日も葉っぱまみれの電車は運行を続ける

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