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Pec-ceP

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****このページに迷い込んで来られた方達へのメッセージ***

私達は一般社団法人「赤道水素の会」と申します。
よろしくお願いいたします。                                   本文中アンダーラインを引いてあるところは出典を明らかにしたり、詳細な内容や関連事項の説明をするために外部にリンクしていることを示しています。ご利用ください。  

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私達がこれから紹介させていただく『ペクセップ(Pec-ceP)』と呼ぶ構想は、地球温暖化防止の一方策として、琵琶湖の十倍の広さに匹敵する超巨大な浮遊体(フロート)を、太平洋赤道北側を西から東に流れる北赤道反流と、その東端で合流し反転する南赤道海流とでできる循環海流に浮かべて、動力を使わずに循環させながら、そこから得られる太陽光エネルギーでH2を大量に生産し、世界中で消費されている発電用の化石燃料によるCO2の排出を大幅に節減するものです。
                                  正面からこういう言い方をすると大風呂敷に聞こえるでしょうが、実際には『従来の常識を覆す斬新な構想』というわけではありません。
所詮は既にある知見や技術の延長によって、H2を『超大量』に生産をするシステムを提案しているだけです。敢えて言うなら「斬新でも何でもない既存の技術の集積で、世界中で叫ばれている脱炭素社会を実現可能にする構想の一端を形にしているからこそ斬新である」ということでしかありません。

工事完成時点でのフロートの敷設面積6,000k㎡というのは見方によってはとんでもなく巨大です。この面積は琵琶湖の10倍近く、茨城県の全面積に匹敵します。しかし、フロートの浮遊するこの海域は赤道付近に位置するために大気に渦を作ることがなく、したがって台風やハリケーンが発生しないことで知られています。(太平洋での台風・ハリケーンの発生場所と進路を示した上図を見ていただければ一目瞭然です。)           そのことはフロートに特別に頑丈な台風対策を施す必要がなく、したがって敷設費用も面積に比べれば非常に安くつくことを示しています。     たしかに、フロート敷設の資材や、そこに据えつけるソーラーパネルや電解槽といった生産設備はすべて現地まで運んで組み立てなければなりません。しかし、一方でフロートが浮遊する赤道反流の上は一面の平面で山も谷も、何よりも島もなく人も陸上動物も住んでいません。コンクリートも一切不要です。この海域はどこの国にも属さない「公海」ですから、用地買収交渉も補償も要りません。トンネルも鉄橋も市街地を走るための高架設備も要りません。フロートの面積は6,000k㎡と申しあげましたが、日本の高速道路の総延長は約10,000㎞ありますから、その敷地幅が平均600mあると考えればフロートと同じ面積になります。中国の新幹線は総距離が日本の十倍あるそうですから、それを例に引けばフロート面積は中国新幹線を作った敷地の数分の一しかないことになります。                    話が長くなりすぎるので数字の根拠は割愛しますが、フロートの屋根部分には市販サイズ(1m×1.5m)で言えば約40億枚に相当するソーラーパネルが 設置され、発電された電力のほとんどはフロートの水面下に設置するボディ(船の船腹のようなもの)に備えられた電解槽で水の電気分解エネルギーになり、膨大な量のH2になります。H2を作るのには電力の他に水が必要ですが太平洋の赤道の上ですから水は無限にあります。赤道反流や南赤道海流の北の部分は雲がかからないために日照時間も長く、赤道直下で日射量も多いですから、発電効率は日本に設置した場合の3倍から10倍程度になると予想され、H2は年間で40000万㌧~60000万㌧に達すると思われます。言うまでもないことですが、水素が燃えてもCO2は発生しません。                                この大量の水素は陸上での発電に用いられます。排出されているCO2の半分近くが火力発電(石炭や天然ガス)によるものですから、ここに手をつけなければ問題は解決しません。前述の年間6000万㌧(第一期)のH2生産が達成されれば、それだけで中国の現存の石炭火力発電所をすべて再生メタンアンモニアを燃料とする発電に切り替えることができます。再生メタンを作る材料はH2と二酸化炭素CO2です。アンモニアはH2と窒素ガスです。これらの原料はみんなフロートで用意できます。反応に必要な高温高圧も問題ありません。メタンガスは天然ガスの主成分(95%くらい含まれている。)ですから、生産した再生メタンガスは既製品の天然ガスタンカーで運ぶことが出来ます。                               フロートは第一期工事600k㎡の敷設が完了次第第二期に移ります。敷地の心配はありません。フロートが循環する海域は700.000k㎡(日本国土の二倍弱)あります。第一期敷設で使用するのはそのうちの0.09% です。もちろん完成までには長い時間がかかります。しかし、愚公移山の喩えもあります。おそらく完成までに100年以上かかるかと思いますが、千里の道も一歩からです。

今、地球温暖化を防止しなければならないこと、温暖化の主原因が化石燃料による温暖化ガス(特にCO2とCH4)の排出にある、という認識は世界中大多数の人に共有されています。
既に問題の重要性は認識されているのですから、次の問題はこれらの温暖化ガスの排出削減をどのように具体化するか、ということでしょう。
この点についても、効率化によるCO2排出量削減の努力や再生可能エネルギー源を開発し実用化するなどさまざまな試みが家庭から国家レベルまでたゆまず行われていますが、そんな個々の集積がある程度の成果を生んでいるものの、それだけでは問題が充分に解決しないことも分かっています。(今日でも、増加率は鈍っていても世界のCO2の総排出量は増加の一途を辿っています。註:皮肉なことに新型コロナの流行により2020年のCO2の世界排出量は例外的に減少しました。出典:BBC

自然再生エネルギーを取り出す手段としては自然エネルギーを太陽光発電、風力発電といったふうに、「電力」として取り出すのが一般的ですが、それは言い方を換えれば自然再生エネルギーは「電力」としてしか取り出せないということですから、再生エネルギーをもっと幅広い用途を確保するためにはこの電気エネルギーを燃料など別の形に変換させて利用する必要があります。化石エネルギーであれば、もともとが燃料ですからこんな持って回ったような利用法を考える必要がありません。炭化水素や炭素そのものを酸素と化合させて二酸化炭素CO2を作り、その際に発生する熱エネルギーを使って暖を取ったり、鉄鉱石を溶かしたり、水を沸騰させて動力エネルギーにして蒸気機関を作ったり、発電したりすることですから、これらを行う設備のほとんどは実質的にはCO2の生産工場であり、大気中のCO2濃度を上げることに貢献しています。
この状態を脱する「脱炭素社会」を構築するには炭化水素を酸化してCO2を生産する社会そのものを変える必要があります。一つの方法は生産されたCO2を大気中に排出せずに閉じ込めてしまうこと、あるいはCO2を原料にして別の物質をつくってしまうこと、そしてもう一つの方法は人類が消費しているエネルギーを炭化水素に代わる熱エネルギーに置き換えることです。 その熱エネルギー置き換えの最上流に位置するのが核分裂エネルギーか水素H2の化学エネルギーなのです。
H2の利用は水素自動車だけではありません。現在製鉄やセメント鉱業などの産業では膨大な量のH2が使われており、そのH2を獲得するためにコークスや天然ガスなどを消費するため莫大な量のCO2が同時に副生されています。つまり、せっかくH2を使っていてもCO2の削減どころかその増加に役立っているのです。たとえば天然ガス(メタンガス)から水素2gを作ると44gのCO2が発生します。                         言い方を変えれば現在の化石燃料由来のH2をCO2を排出しないH2(クリーン水素)に置き換えるだけで世界では年間百億トン以上のCO2の排出を削減できます。

しかし、現況は化石燃料に頼りきっているさまざまな産業をクリーン水素に切り替えていくのには、その産業を経営する企業にコストを含めた総体的なメリットが必要です。                        ですから、脱・化石燃料のためには化石燃料由来より生産コストの安いH2を大量に安定して供給できなければすべてが絵に描いた餅になりますが、現状ではこの水素の価格競争力が実現していないことが普及のネックになっています。今、福島県では復興の証としてクリーンな水素を作る実証プラントを稼動させました。そこでは毎時1200N㎥(10.8kg)の水素を作ることが出来るそうです。つまり、一日に20時間機械を稼動させて20kg強、一年で7.3㌧の水素を生産できます。赤道のフロートの上で作れば6000㌧です。


このPec-ceP構想は後に説明するように、無限無料の太陽光エネルギーと海水、そしてほぼ無限の工場設置スペースを材料として無限無料の電気分解水素を作るものですから、CO2を副生しないだけでなく化石燃料や核燃料への価格競争力を持ったH2を供給することが出来ます。

この原稿の前編では本構想の内容について理解をしていただき、後編では本構想の実現方法について考察をしてまいります。

実現の可能性は二つの面から考察されなければなりません。       構想の技術的な可能性と収益事業としての可能性です。
既に述べた一節をお読みいただくだけでも想像いただけるように、本構想の実現には多方面の技術と大量の資金を必要とします。
事業として成立させるためには、H2や二次製品を生産後の流通システム(特に太平洋赤道上から需要地までの経済的な長距離輸送システム)まで考えなければなりません。

私達では本構想を世に問うにあたって、構想の独自性が私達にあることを明確にするために構想の要所要所を特許申請していますが、それだけではただの自己満足です。本構想によって水素の生産コストを劇的に下げることが可能であり、収益事業として魅力的であることを疎明する資料を用意しなければなりません。

以上の次第で、後編は主に資金問題の面から本構想の実現性を示すことを 目的としています。
前編だけをお読みになった方の反応は十中八九「そんなこと言ったって、 資金がなければ何も始まらないじゃないの」といった冷ややかなものになるのは目に見えていますから、そんな見方を打ち消すための説明でもあると お考えください。

ただ、いずれにしても本構想が未だ存在しないものについて語っている以上、読者の方にも想像力を飛翔させて、私達の説明の至らなさを補って いただく必要があります。よろしくお願いいたします。

前置きが長くなりましたが、それでは本文にお進みください。

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前編目次
《本構想の概要》
1 太平洋赤道反流とはなにか?
 位置・規模などの概要
 潮流、気象条件などの特異な環境

2 赤道反流上に浮かべるフロートとはなにか?            フロートの構造・規模                        

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前編1 太平洋赤道反流とはなにか?

この構想の第一歩は太平洋赤道反流に始まります。
赤道反流とは東から西に流れる赤道海流とは逆方向に幅30~50km、深さ100~200mしかない流れる細長いリボンのような表層海流です。
赤道反流には他の海の海面にはないさまざまの太陽光発電に適した気象条件(広大な平面を確保できるので発電効率がよい、日中雨が降らないので日照時間が多い、光量が多いなど)の特徴があり、ここでの発電は日本での平均的太陽光発電環境に比べて300%程度の面積効率を持つと推測されます。
また、赤道を跨いだ南半球側の南太平洋海流の北端と接して、北半球では西から東に、そして反流が南米大陸に到達すると南から流れてきている南太平洋潮流と合流して、今度は東から西に向きを変え、さらに西端ミンダナオ海域東側では再び赤道反流になってもう一度南米大陸を目指します。
つまり、太平洋の赤道付近には長さ14,000㎞の海流が循環しているということです。
そして、驚くべきことにこの広い海域はその東西端を除いて人の住む島がありません。
このことはこの海域に利害関係を持つ国々と調整をする必要があっても純粋な領海(陸から最大12海里。約22.2㎞)問題は発生しないということです。

もう少し詳しく・・
http://sekido-suiso.main.jp/yy/equatorial%20countercurrent.html

<循環海流>
太平洋赤道反流とは、太平洋の北緯5°付近を西から東に流れる暖流で流域は年々少しずつ変わるものの、東西14.000㎞の長さに対し南北の幅は30~50km、深さも100~200mしかない、まるで海の中を流れる川のような表層海流です。
この海流はそのコースや流量が変化することでエルニーニョやラニーニャ現象の発生規模を決定する要因の一つになることが知られています。
また、この海流は南米大陸に突き当たる手前で南北に別れ、南側の半流は南から北に流れている南赤道海流と合流すると今度は東から西に流れ、西端のミンダナオ海域で再び赤道反流の起点となって循環海流を構成しています。
したがって、この海流上に置かれた浮遊体は二年ほどの周期で太平洋赤道付近で東端⇔西端の循環を繰り返すことになります。

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下記に述べているように、この海流々域は極大規模な太陽光発電を行う上できわめて恵まれた条件を備えています。ここに巨大な浮遊体(フロート)を設置して、海流にしたがって漂流させれば、そこに数十億枚のソーラーパネルなどを設置することで得られる電力を使い、水素や水素を原料とする二次製品を作るプラント工場を作ることができます。

<広大な設置可能面積>
赤道反流の一部はその東端で南米大陸に突き当たると南下して南赤道海流に合流し、今度は東から西に流れる。また南赤道海流の西端の一部ははミンダナオ付近で北上し赤道反流に合流します。
この流域を最大で見積もると約70万平方キロメートルであり、これは日本の国土の二倍弱に相当します。
そのすべてが穏やかな海面であり、台風やハリケーンが発生しませんから、フロート本体の構造も簡単で済みます。

<赤道と熱帯低気圧>
北半球と南半球では流れる渦の向きが逆になることはよく知られています。
そのために赤道の真上の上昇気流には台風やハリケーン生成の原因になる気流の渦が発生しません。下図は太平洋上の台風やハリケーンの発生地点、進路、強度(色が赤いほど強い)を示したものです。           赤道に台風が発生していないことが一目瞭然で分かります。

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公海航行の自由>                         この海域の平均深度は4,000mです。巨大な海底山脈もないため、赤道反流々域には東西端をのぞき島嶼が存在しません。したがって領海問題も存在しません。利用の対象に考えている海域はすべて公海です。フロートには自力航行の設備がないと言っても船舶の一種ですから航行の自由は保障されています。もちろん、船舶同士の航行や漁業への影響などで利害関係国との調整は必要です。

<豊富な太陽光エネルギーと穏やかな海>
赤道のほぼ真下にあるので一年中日射量が多い上に、晴天が続くので日照時間が長くなります。
また、赤道反流々域では空気が渦を作らないために海が穏やかで一年中ほとんどが晴天です。スコールはありますが、下が海面のため夕方になっても地表温度が下がる地域ではないので雨量は多くありません。また、スコールが降っても夕方からが多いので太陽の日照時間には関係ないうえに、スコールは淡水ですからソーラーパネルに付着する空中の飛沫塩分の洗浄に使われるほか、天水として保存すればさまざまな用途に利用できます。フロート完成時には上昇気流の流れが変わるのでスコールも強くなる可能性はあります。

<豊富な太陽光エネルギー>                     豊富な太陽光エネルギーは太陽光発電だけでなく、簡単な集光装置を施すことによって後述の再生CH4その他の化学製品製造の際の加熱装置、蒸留水の製造などにそのまま熱源として利用できます。

<豊富な水>
周囲はすべて水。電気分解はどれだけ大規模になっても電解槽設置の制約になりません。

<生態系や経済への影響>
☆フロートの漂流域には島嶼が存在しないだけでなく、平均水深4000mの深度があるので、フロートの漂流による環境への影響は極めて軽微です。
たとえば、電気分解のために除去するNaClも漂流中に徐々に廃棄しますが、すぐに深海層に達するので海水の塩分濃度に与える影響はほとんどありません。。
☆赤道反流の東西端は魚類などが豊富に生息しますがフロートはこの海域に進入しません。他の部分については湧昇流が存在しないので生物層は貧弱であり漁業に与える影響もないと思われます。
☆現場で生活する作業員の排泄物や生ゴミなどはメタン生成菌を培養する貯蔵槽に投入することで再利用できます。
☆フロートの建設に伴う生態系への影響として敢えて取り上げれば、水深1000メートルまで潜って餌を探すとされるマッコウクジラが広大な浮遊体の下に紛れ込んでしまうと息継ぎが出来なくなる恐れが考えられないわけではありません。可能性としては非常に低いもののゼロではないとしても、対応策としてフロート周縁で警戒音響波を発することで迷入を防ぐことができると考えられます。(未実証)
また、フロートの随所に設置される水上飛行機用の離発着スペースやトルエンプールなども、万一のときのクジラの息継ぎ避難場所になり得ると期待されます。(未実証)

前編2 赤道反流上に浮かべるフロートとは何か?         

1<フロートの構造・規模>                      フロートは文字どおり浮遊体ですが、海水面に拡がる筏の集合体だと想像してください。フロートの最小単位はセルであり、30m*20mと小さなものですが、それが無数の細胞のように(但し平面的に)相互に繋がり、海面に薄く広がってメガフロートを形成します。接続面には自在継ぎ手による「遊び」を設け、波やうねりを吸収するように作られます。

メガフロートは300㎞*20kmの広さを持ちます。つまり縦がセルフロートの10000倍、幅が1000倍ですから10,000,000倍。10,000,000個のセルの集合体ということになります。そのフロートの上部にはソーラーパネルを敷き詰めるように設置するための屋根部分(フレーム)があります。ソーラーパネルの大きさを市販のものなみに1.5m*1.0mを例に計算すると1セルに40枚設置できますから、メガフロートの上には400,000,000枚のパネルを置けることになります。屋根の高さは屋根の下の海水面の用途によって多少変更されますが大体3m~4mといったところです。300㎞*20kmといえば300,000m*20,000mですが、それに対しての高さ4mですから、人工衛星から見たメガフロートは広い海に浮かんだ光を照り返す大きな薄い膜のような感じになるでしょう。

海がいつも穏やかな赤道反流上の海では、台風などに耐える強度は要らないのでフロートの海水面の筏部分についてはソーラーパネルの重さを支えるだけの支柱と枠組みがあればよく、さほど堅固な建築を必要としません。筏部分の用途によっては木材と孟宗竹を利用することが考えられます。

このフロートを水面に浮かべるための浮力には二つの方法があります。  一つはフロートの枠に合わせて水面下に鉄製のボディを設置するものです。ボディとは船で言えば船腹にあたるもので、小さいものは一つのセルに一つ設置されますが、大きなボディはいくつものセル・フロートに囲まれる形で設置されます。セルフロートはボディの深さを調整することでいくらでも浮力を得ることが出来ますが、ボディの目的はそれだけでなく、ボディの内部空間によって浮力を調整しながら、その空間に電解槽のような各種の器械を設置したり、作業員の宿泊設備、部品や生活物資の貯蔵スペースなどに利用することです。水面下のスペースはその他電解で生成した水素や再生メタンガスの一時保管場所としても使われ、浮力の保持にも役立ちます。

もう一つの浮力獲得装置はフロートから水中に沈める直径2m深さ20mほどの多数の大きなエアバッグです。メガフロートは広大であり、ソーラーパネルを敷き詰めた下の水面面積でボディを利用できる設備は面積比率的にはごく僅かですから、他の方法で浮力を確保する必要があります。それがこのエアバッグです。エアバッグに充填する空気は海水中の水圧とのバランスで20気圧ほどが適正かと思われますがいくらでも加圧して保管することができます。CO2は不燃性でありエアバッグ同士はお互いに独立していますから、もし万一バッグが水中で破損しても危険はありません。貯留するCO2は後述する液化メタン運搬タンカーがフロートで製造した再生メタンを陸揚げして空いた帰路のスペースを活用し、陸上の産業設備から回収したドライアイス形状のCO2です。つまり、このCO2はフロートの浮力として使われる一方で、フロートで生産される合成メタンの原料に供されます。CO2エアバッグを密集して設置するとその浮力でフロートが浮いてしまうため、フロート内枠には海水を入れたり出したりして浮力を調節出来る水槽を用意します。        また、大気中に0.3-0.4%程度の濃度でしか存在しないCO2も、フロート上にCO2回収装置(特許申請中)を設置すれば効率的経済的に大量を回収することが可能です。また、合成メタンの原料としてのCO2は、前述のようにメタン・タンカーの復路に積み込むことができます。メタン・タンカーにはもともと冷却設備がありますから、それを利用してCO2を冷却しドライアイスにして運ぶことに無理はありません。天然ガスの輸送タンカーは片道が空荷になりますが、赤道反流との往復ならCO2を運べるだけメタンガスの輸送コストが軽減されます。

メガフロートでは最終的にはこのCO2を年間合計数十億㌧程度は貯留し一部は発電燃料としての再生メタンを生産する見通しです。この再生メタンを利用すれば中国の火力発電所から排出されているCO2を大きく削減できますし、家庭用暖房などに使われている石炭の使用量も削減できますから、中国の掲げる2060年までに脱炭素社会を作るという目標に大きく貢献できます。    但し、火力発電所から上記のような大量のCO2を回収できる設備は存在しませんから、火力発電所を改装して回収設備を作る必要がありますが、今まではCO2を回収しても効率的な貯蔵方法がなかったから作らなかっただけで技術的には難しくありません。ちなみに、再生メタン燃料に水素ガスH2を加えて混焼すれば、燃焼効率を上げることも出来ます。またCO2以外に排出されるSOx,NOxはCO2をドライアイス化する際に分離させることが出来ます。 この方法は高温の排出時に回収する方法に比べれば遥かに簡便に行うことができます。

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 <フロート上の生産設備・生活設備>                フロート上にはいろいろな生産設備や生活設備が必要です。


1 ソーラーパネルによる太陽光発電設備               メガフロート(6000平方㎞)に1.5m*1.0mパネル換算で○○○万枚を設置。年間発電能力は○○○○Mwh

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これに似た風景が長さ300km幅20kmにわたって続きます。

http://sekido-suiso.main.jp/index.html

2 電気分解槽の多目的使用                           上記の発電能力を海水または淡水の電気分解に振り向けて、年間○○○㌧のH2を生産します。必要な電解槽設備は市販品を参考にして○○○○台。  

なお、電気分解後の残液を二次使用して①軽水と重水の電解スピードの差に注目し、海水に一定濃度含まれる重水素の含有率を上げる「濃重水素水」を製造し、水中のバッグに充填して保管する設備、及び②(①のプロセスにより電解残液中で濃度を増した)リチウムの析出設備を併設します。    ①においては多数の電解槽に電解残液を次々と供給し重水含有率を上げるだけのいわば単純な方法で、従来の重水素水生産方法ではコスト的に多大な負担になっている電力コストを実質0にできること、また製造された重水素水はフロート下の海水中に設置する貯蔵バッグに大量かつ長時間貯留できることから、将来的に核融合発電技術での需要に備えることができ、②においてはリチウム電池などへの応用拡大によって今後益々需給関係が逼迫するであろうリチウムを安価かつ環境破壊を生じることなしに提供する目的を持つものです。①②共、技術的に解決できない難関があるわけではなく、コスト0の電力と広大な敷地があれば(つまり非効率な生産コストを無視することができれば)現在でも実用化は可能です。リチウムは核融合発電には必須のトリチウム(三重水素)の唯一の生産原料でもあります。

海水からのリチウム回収

海水淡水化装置 における重水の濃縮

電解槽のイメージ http://sekido-suiso.main.jp/yy/electrolysis.jpg

3 生産された水素の輸送                      水素は液化すると体積が1/800になりますが、液化温度がー253℃と極端に低く、また金属に対する脆化作用があることから、専用船を作って大量の水素を赤道からの長距離を運ぶのにはコスト合理性に疑問符がつきます。そのために、本構想では生産された水素を有機ハイドライドとして運ぶ方法、フロート上でメタンガスCH4やアンモニアNH3などを生産しH2キャリアとしてからタンカーで輸送する方式を併用します。 これらの基本的な技術は確立されていますから、あとは海上のフロートという特殊な環境の下でその大量生産プラントをどう作るかということになります。しかし、私達ではこの問題は大きくないと認識しています。プラントの敷地面積に制限がない上に、生産効率を極限まで高める必要がありません。原料のH2はほぼ無料ですし、CO2に到っては「産廃」として引き取り手数料を徴収しながら、つまりマイナス原価で使うことも考えられるからです。

CO2の貯蔵について

大量の水素の海上長距離輸送

合成メタンの生産方法

フロート上でのアンモニア生産の得失

4 エアバッグ                                   電解槽で生産される水素はソーラーパネルからの電力をそのまま使うので夜間は活動を停止します。リチウム電池に蓄電して24h稼動させるよりソーラーパネルの面積を増やして昼間だけ電解した方がずっと効率的だからです。生産されたH2は海水中のエアバッグに貯留するので、引火の心配はありません。H2は20気圧ほどに圧縮されますが、水圧があるのでエアバッグの素材は大気中に置くような耐圧性を持つ必要がありません。         CH4 は生産時に高温で排出されるので海水中のダクトを通して常温にもどしてからエアバッグで加圧貯蔵し、その後液化設備に送られます。       

5 フロートに付属する設備                      

①太陽光発電と電気分解設備一式                                                                  ②CH4の生産設備と液化冷却設備一式、タンカーへのメタンガス充填パイプを備えた接舷設備一式。MCHコンテナーの積み込みやフロートの必要部品を荷卸するカーゴ・シップ用接舷設備一式                 ③フロート全域への電気配線。小型船が通れる運搬用区割り運河、モノレールなどの運搬設備 水中の空気輸送管(CO2,H2,CH4,NH3など)     ④二期工事としてNH3生産設備一式

6. リチウム電池                           フロート上で夜間に使用する生活電力電池 電動自動車 タグボート

7. 液化メタンガスタンカー                     傭船での運用では不足する場合、自社でメタン動力による新造船も考える。

10 現場作業員の生活設備

11 <ギガ・フロート単位で設置するもの>              病院、水上飛行機、コントロールセンター フロート進行方法のスイッチング用タグボート

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自然再生エネルギーを取り出す手段としては再生エネルギーを太陽光発電、風力発電といったふうに、「電力」として取り出すのが一般的ですが、それは言い方を換えれば自然再生エネルギーは「電力」としてしか取り出せないということですから、もっと幅広い用途を確保するためにはこの電気エネルギーを別の形に変換させて利用する必要があります。
そのときの最上流に位置するのがH2なのです。
H2の用途は水素自動車だけではありません。現在製鉄やセメント鉱業などの産業では莫大な量のH2が使われており、そのH2を獲得するためにコークスや天然ガスなどを消費するため莫大な量のCO2が同時に副生されています。つまり、現在の化石燃料由来のH2をCO2を排出しないH2(クリーン水素)に置き換えるだけで世界では年間数十億トンのCO2の排出を削減できます。

しかし、現況は化石燃料に頼りきっているさまざまな産業をクリーン水素に切り替えていくのには、その産業を経営する企業にコストを含めた総体的なメリットが必要です。

この原稿の前編では本構想の内容について理解をしていただき、後編では本構想の実現方法について考察をしてまいります。

実現の可能性は二つの面から考察されなければなりません。構想の技術的な可能性と収益事業としての可能性です。
既に述べた一節をお読みいただくだけでもお分かりのように、本構想の実現には多方面の技術と大量の資金を必要とします。
事業として成立させるためには、H2や二次製品を生産後の流通システムまで考えなければなりません。

私達では本構想を世に問うにあたって、構想の独創性が私達にあることを明確にするために構想の要所要所を特許申請していますが、本構想を情報発信する目的は、本構想の実現による豊富なクリーン水素の供給によって地球環境の改善が可能であり、また長期にわたる収益事業として非常に魅力的であることを理解していただくことにあります。

以上の次第で、後編は主に資金問題の面から本構想の実現性を示すことを 目的としています。
前編だけをお読みになった方の反応は十中八九「そんなこと言ったって、 資金がなければ何も始まらないじゃないの」といった冷ややかなものになるのは目に見えていますから、そんな見方を打ち消すための説明であるということです。

ただ、いずれにしても本構想が未だ存在しないものについて語っている以上、読者の方にも想像力を羽ばたかして、私達の説明の至らなさを補って いただく必要があります。よろしくお願いいたします。


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当法人の概要

名称  一般社団法人 赤道で水素を作る会
所在地  静岡県熱海市熱海1739-34 パサニアクラブ1910
代表理事 吉田峰男                          業務執行理事 岩井俊樹 藤原光利  監事  滝沢正          設立 任意の研究会として2011年有志により活動開始           2019年11月一般社団法人設立     

後編 事業計画のページに https://note.com/pec_cep/n/n5d5839d5082a

続編 なぜ中国か? 近日中公開予定

続編 本構想への事業計画(中国向け) 近日中に公開予定

続編 仕事依頼 ホームページ制作


            

               








 


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