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夢のような1日 ③

トークショーの後半は、楽しみにしていたお茶会である。それぞれのテーブルには外で詰んできたと思われる青々としたシダや可愛らしい野の花が飾られており、今回の催しのポストカードとプリンスエドワード島(P.E.I.)に売っている棒付きチョコレートのお土産が置かれていた。

P.E.I.から取り寄せたというクッキーとショートブレッド

メインのケーキは、現地の方が実際に作っているレシピで再現したオールドスタイルのショートケーキが忘れな草模様のお皿に盛り付けられて登場。
飲み物はこれまたP.E.I.の有名な紅茶・キャベンディッシュ・サンセット・ティーと小説にも登場する”いちご水(ラズベリー・コーディアル)”である。
どちらも懐かしい味わいで、P.E.I.へ行ったときのことが思い出された。

ケーキは、クッキーの間にバタークリームといちごが挟んであったが、クリームの水分がクッキーに移って柔らかく、心地よい食感となっていた。クリームはほどよい甘さでいちごのみずみずしさを引き立てていた。アンが初めて食べたチョコレートキャラメルを味わうシーンのように、心ゆくまで味わった。

お茶会のあとは、軽井沢駅行きのバスの時間まで1時間以上もあったので、タリアセンを散策することになった。15分ほどで”輝く湖水”ならぬ塩沢湖を一周し、イングリッシュ・ローズ・ガーデンへ。バラはまだ咲いていなかったが、小さな野の花々が目を楽しませてくれ、モネの庭を彷彿とさせる池ではカエルの歌声が響いていた。

すれ違った人が「この先にニリンソウが咲いていますよ」と教えてくれたのでローズガーデンの先まで行ってみる。すると陽の光を受けて真っ白に浮かび上がるニリンソウの群生。近づいて視線をあげると斜面一帯に顔を寄せ合うようにして咲いているニリンソウが見え、思わずみんなで歓声をあげたのだった。

軽井沢在住の方が、1年で1番良い日かもしれないとおっしゃるほど素晴らしいお日柄で、水も空気もすべてがきらめいて、自然からのご褒美を受け取っているような春の日。今日のような1日をアンだったらなんと表現するだろうか。私には適当な言葉が思いつかないが、忘れられない1日になったことだけは確かである。

おしまい
2024年5月11日