見出し画像

おやゆびちーちゃん


今日はちょっと遠出して群馬県の館林美術館へ行った。現在行われている「堀内誠一 絵の世界」展(10月7日〜12月17日)を観るためだ。

堀内誠一さんといえば、「てがみのえほん」や「パリからの手紙」の著者として存じ上げているイラストレーターであるが、展覧会を見て分かったのは、私自身つゆとも知らずに子供の頃からそのイラストや挿絵に親しんでいたことだった。

「あ!」と思わず声が出そうになったのは、絵本「おやゆびちーちゃん」の原画である。子供の頃、この絵本が大好きで、何度も繰り返し読んでいた。「おやゆびちーちゃん」は堀内さんが、アンデルセンの原作に忠実にちいちゃんの可憐な佇まいや優しく美しい心をイメージ通りに描きたいという思いから生まれたという。

花の中から生まれたちいちゃんにとって、くるみの殻がゆりかごになり、青いスミレの花びらがしきぶとん、バラの花びらがかけぶとん…そうそう、そうだった。堀内さんの、鉛筆と色鉛筆で描かれたようなタッチの夢のあるイラストを見るたびにときめいていた気持ちも一緒に蘇ってくる。原画を前にして懐かしさで胸がいっぱいになった。

「おやゆびちいちゃん」のポストカード

実際に絵本を読めるコーナーがあり、そこに「おやゆびちーちゃん」も置いてあったので、手に取って最初から最後まで読んだ。大人になった今読むと、ちーちゃんの体験はなかなか過酷だ。最後はほれぼれするような美しいツバメに導かれて王子様と出会いハッピーエンドになるが、王子様が「ちーちゃんという名前は良くないから、今日からきみをマーヤと呼ぼう」と言う場面には正直「え?」となった。今読むと違和感しかないこの場面で物語は終わる。ちいちゃんの先行きが不安になる終わり方でハッピーエンドにも疑問符が…。アンデルセンさん、これでいいの?

そんなわけで、子どもの頃から親しんでいた絵本を描いていた人だったと分かり、まさに遠くまで観に行った甲斐があったというものだ。
他にも堀内誠一さんの「てがみのえほん」の原画や直筆の手紙、今の私に取って興味深いものがたくさん展示されていたが、それについてはお手紙ブログの方に詳しく書くつもりだ。