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思てたんとちがーう!

昔からお笑い芸人が語り合うテレビ番組が好きでよく見ています。古くは笑福亭鶴瓶とウッチャンナンチャン(後に今田東野)がやっていた「いろもん」。本当に熱かった「ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!」。いまだと「あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~」など。

いま1番楽しみにしているのは「やすとものいたって真剣です」です。大阪朝日放送制作の番組ですがTVerの見逃し配信で毎週見ています。タイトル通り海原やすよ・ともことゲストが真剣に語り合うトーク番組。関西の芸人は旧知の仲のやすともにリラックスした雰囲気で、関東の芸人は関西の番組で肩の力が抜けているからか、いつも本音だだ洩れの熱いトークが展開されます。


11月12日(木)放送回のゲストは銀シャリで、お互い何人も相方を変えた結成秘話や、M-1時の貴重な話しなど、今回も面白かったと満足していましたが、ハイライトはまだ後にありました。

この番組、最初のうちはスタジオのトークだけでしたが、しばらく前から芸人に密着するロケのコーナーが出来ました。ロケのコーナーが増えたりすると面白くなくなる番組も多いので不安に思っていましたが、それは杞憂に終わりました。ロケのディレクターが笑い飯の西田や天竺鼠の川原など、一筋縄ではいかない芸人でVTRでも爆笑させてくれ、ますますこの番組が好きになりました。

今週のディレクターも笑い飯西田でスリムクラブに密着します。ラストイヤーとなるM-1グランプリの打ち合わせをする会議室のスリムクラブに向けてカメラが回ります。島田洋七とのすべらない美談を語るスリムクラブ真栄田に対して、金髪のカツラをかぶり、胸筋でぱつんぱつんのスーツを着て1億点とパネルを出して審査員の松本人志を真似る西田。どちらもキレイに笑いを取ります。

しかし神懸かった展開はここからでした。西田がラグビー部だったという真栄田のために準備したラグビー場で、真栄田がM-1に向けての秘策と豪語するメンタルトレーニングを唐突にやりはじめます。真栄田は胸の前で手で円を描きながら嫌な記憶を口に出していきます。目を瞑り「お金に対してポジティブなイメージを得ることを望みます」などヤバめの言葉を連発します。ワイプの中の銀シャリとやすともは苦笑しているのですが、西田は笑うでもなく、困惑するでもなく無の表情で真栄田を見つめます。そしてその一連の流れが終わると「雷が鳴り鳥たちが逃げて行ってるけど」と言いながら暗雲立ち込める空が映し出されます。

スチャダラパーの悪夢で新興宗教にのめり込むANIのような、カンヌ映画祭を目指す山田孝之のような鬼気迫る演技に見える真栄田でしたが、これがこの二つと違うのはフェイクドキュメンタリーではなくガチだということ。事実は小説より奇なり、というのを見せつけられ戦慄しました。


悪天候のため選手控室に場所を移し、お酒を飲みながら二人が語りはじめます。笑い飯のM-1優勝シーン、2位で悔しかったはずなのに後ろから肩を叩き「おめでとうございます」と声をかける真栄田のVTRが流れます。そこに「あれから10年、今だからこそ話せる話しもある」という西田本人のナレーションがかぶさります。

そこからは西田の独壇場。「(M-1は)知ってるやつが出るのを見るほうが緊張する」、「おふざけ感に重きを置いていた。そうしないと呑まれる雰囲気あるから」と戦友だからこそ語れるパンチラインのオンパレード。西田と話して「ひとつ自分の中に柱がはしりました」、と目に涙を浮かべながら答える真栄田。僕も知らぬうちに涙がボロボロこぼれました。西田本人が「久しぶりにお酒を飲みすぎて楽しすぎてだいぶしゃべっています」とナレーションしているように、ちょっと照れ臭かったのか「俺 今何考えてるか言うたら 仕事で酒飲めて最高やな 自分でカルパスとか買っといたら良かったな」と大オチをつけていて、僕もさっきまで泣いていたのに爆笑していました。二人の芸人スピリッツを堪能できた、今年見たテレビ番組の中で一番面白かった神回でした。

TVerの見逃し配信は20日までなのでお早めにどうぞ。

座王の鬼・笑い飯西田にまさか泣かされることになるとは。思てたんとちがーう!と叫びたいのは僕のほうでした。

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