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映画ワースWORTHを観て 2023/3/9


#映画感想文

映画の日の前日にふと思い立ち、
観たい映画が上映されていたので
久しぶりに映画館で映画を観た。

アメリカの映画「WORTH」ワース

2001.9.11航空機テロ事件の犠牲者に対する
政府の被害者補償基金特別チーム
責任者にマイケル・キートンが扮し、
事件の大きさ、重さ、被害者の数に
これまで培ってきた
調停のやり方が通用しない。

冷静さを要求される仕事の内容と
人としての感情の間で
もがき苦しみ、悩み、
自身の信条を変えながら
問題に取り組んでいく
姿を描いた実話の物語。

常に次期選挙を考えて
大企業寄りの政府 対
様々な人種の一般市民
という対比の形ではなく、
大きなオフィスを構える
リッチな調停専門弁護士の
感情の揺れを通して、
他者と敵対するのではなく
一人の人として
相手の話をじっくり聞き、
共感することの大切さを
伝えていると感じた。

そして様々な許しも
大きなテーマだった。
どうしても許せないままの人。
許せないようなことを
涙を流しながら許す人。
色々な人達がそこに居た。

動き回る子供達の世話をしていて
「行ってくるよ」と
出かける夫の顔を見る
暇が無かった女性。

デスク作業に忙しく
冷蔵庫におかずがある、
そう言って出かける女性に
顔を向けなかった夫。

映画の初めに流れる
後の被害者と思われる人達の
事件当日の
いつも通りの何気ない
朝の風景。

喪失感から少し立ち直り、
何日も、もしくは何週間も
全く手をつけていなかったであろう
おかずのタッパが並ぶ
冷蔵庫の食べ物を処分する男性。

一つ一つ開けては捨てて行く中
「チキンピカタ」と書かれた
テープが貼られたタッパを出して
手が止まる。

「冷蔵庫にチキンピカタがあるわよ」
事件当日の朝、妻の最後の言葉だった。

普通の日常が最後になるとは
誰も思わないことを物語る
シーンで印象的だった。

被害者の最後のメッセージだと
手渡された留守録の録音を
何度も聞きながら
何とか遺族に手厚い補償だけでも
渡したいと悩む女性弁護士。

弁護士とは訴訟に勝つためには
どんなことでもする。
そんなステレオタイプではない
彼らも感情を持ったひとりの人間。

被害者達の深い悲しみに触れながら
それでも生きている人達が
前を向いて歩んで行くために
必要なできる限りの補償金を
手渡すのが自分たちの仕事だと
奔走するチームの弁護士達に
人としての希望を感じた作品だった。


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