『でぃすぺる』(今村昌弘)青春✖️オカルト✖️本格ミステリ

『でぃすぺる』(今村昌弘)を読みました。

今村昌弘といえば『屍人荘の殺人』シリーズが有名。《非現実的存在・現象が実在するという前提で事件を推理する》、いわゆる特殊設定ミステリブームのきっかけを作ったシリーズであり、ミステリとしての完成度の高さも広く評価されています。

そんな彼の新作は、【青春】✖️【オカルト】✖️【本格ミステリ】の合わせ技。
小学生の壁新聞作りと、死んだ姉が残した《七不思議》に隠されたミステリがバランスよく絡み合っています。

①小学6年生男女の【青春】
メインの人物は3人。
オカルト好きな男の子・ユースケ。
優等生の女子・サツキ。
地味で掴みどころのない転校生女子・ミナ。

物語は、サツキの従姉の死(後述)の真相を突き止めようとする彼らの視点で進みます。
オカルトを信じるユースケと、あくまで現実主義のサツキの対立。クラスで浮いているミナへの心配。女子2人に対する男子としての距離感。卒業後都会に出るサツキに対する寂しさ。大人に対する不満や不審。
メインである壁新聞作りを中心にしつつも、小学生ならではの人間関係や悩みが丁寧に描かれています。

②謎の死と七不思議、黒い影や怪奇現象が絡む【オカルト】
未解決事件となっているサツキの従姉・マリ姉の死。
解決の鍵となるのは、彼女がパソコンに残した《七不思議》というファイル。
《七不思議》なのに、収められている怪談は6つのみ。更に、調査のため舞台となる心霊スポットを訪れるユースケたちに、不思議な出来事が次々と降りかかる。

町に隠された歴史、かつて祀られていた神。
事件の陰にあるのは、人間か、あるいはそれ以外のものか。

③マリ姉が遺した【ミステリ】
マリ姉が遺した《七不思議》。
6つの物語には、それぞれに矛盾や謎が隠れています。
マリ姉がなぜそのような仕込みをしたのか。
そして何より、彼女はなぜ死んだのか。

《七不思議》という小さな謎解き要素と、マリ姉の死の謎。大小の謎解きが気になり、あっという間に読んでしまいました。


※※※

【青春】✖️【オカルト】は王道。
(ホラー苦手なのであんまり読みませんが、幽霊ものとか)
【青春】✖️【ミステリ】も、私の敬愛する『氷菓シリーズ』他多数。
【ミステリ】✖️【オカルト】は、それこそ『屍人荘の殺人』シリーズですね。流行りの『近畿地方のある場所について』もちょっと近い。

が、【青春】✖️【オカルト】✖️【ミステリ】がこれほどまでに相乗効果を生んでいる小説を、私は他に知りません。
どのジャンルのファンが読んでも、間違いなく楽しめる作品だと思います。

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