最近のイチオシ本まとめ(2023/10)

読書には波がある。
本を読む手が止まらない時期、何を手にしても読み進めるには億劫な時期。読む本読む本ことごとく心に響く時期、掘れども掘れども自分好みの作品に出会えない時期。
そう思うと、この夏〜秋は、読書意欲あり&当たり作品出会い率高し、と恵まれたシーズンでした。
特に、初読作家が自分の好みドンピシャだったときの興奮といったら、読書好き冥利に尽きます。

また、自治体の電子図書館を初めて使ったのですが、電子書籍に抵抗がない私にはとても便利。
貸出返却が気楽にできるので、試し読み感覚であれこれ借りられるのが嬉しいです。

では、本の感想です。

⚫︎『さようなら、私たちに優しくなかった、すべての人々』(中西鼎)

初っ端からアレですが、リストに入れるかすごく悩みました。
閉鎖的な村で起こった陰湿ないじめ、自殺した姉の復讐のため加害者を殺害していく少女……読み進めるのがすごくしんどかったし、再読もできないと思います。
それでも挙げざるをえなかったのは、陰惨な内容とは相反した静謐な文章と、ラストの美しさが圧倒的だったから。
《救い》とは何か、考えさせられました。

⚫︎『お探し物は図書室まで』(青山美智子)

電子図書館にあったので読んでみたら、めちゃくちゃハマってしまいました。
図書室に鎮座するマツコデラックスのごとき存在感の司書。来客に『お探し物は?』と尋ね、本と手作りの羊毛フェルトを渡す。
優しい世界観に、ゆるりと繋がる人の縁。心地よい世界にずっと浸っていたくなります。

⚫︎『月の立つ林で』(青山美智子)

ポッドキャストの主『タケトリ・オキナ』によって繋がる縁と月の話。
上記の作品と読み味は似ているのですが、こちらは更に『タケトリ・オキナは誰なのか』という謎が物語を引っ張っています。

個人的には子持ちのアクセサリー作家の話が胸に来ました。自分の世界を全うしたい一方で、子供を可愛く思い、でもその儘ならさに苛ついてしまい……。
ハンドメイドに限らず、自分の世界に入り込まないと完成できない趣味ってありますよね。一人になりたい自分と家族と共にいたい自分。その両立について考えさせられました。

⚫︎『わたしの美しい庭』(凪良ゆう)

凪良ゆうさん初読。
表紙が美しい。タイトルも美しい。文章も美しい。物語も美しい。こんなの最強じゃないか。
特に、小学生の百音ちゃんの、素直だけど鋭くて、はっと本質をつくような台詞が面白い。

あとは路有くんの話が辛かったなぁ。
同性愛者であることが友達にバレてしまった高校時代。友達から距離を置かれるようになり、彼らからは『一緒にいられなくてごめん』と謝られ……。
路有はもちろん、理解できない友達も悪くない。そんな場面で、統理の『理解できないなら黙って通り過ぎればいいんだ』という言葉がすごくしっくりきました。
ネット民には特に痛い言葉。

⚫︎『没落令嬢のためのレディ入門』(ソフィー・アーウィン)

(リンクうまく貼れませんでした)

英米のベストセラー小説、しかも私の大好きな19世紀英国を舞台にしていると帯に書かれていて、久々に本屋で衝動買い。

美人で貴族の血統だけど、亡き両親の行いが原因で、地方で貧しい暮らしを送るキティ。
妹たちのためにロンドンで婚活を始めるが、その行手に伯爵家当主・ラドクリフが立ちはだかる。

先が読めてしまう王道の展開。それでも楽しめるのは、キャラクターが魅力に溢れていて、かつ貴族社会の描き方がリアルに感じられるから。
メイン二人のもどかしい恋愛模様と、約束されたハッピーエンドが心地良かったです。

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