『アリアドネの声』(井上真偽)盲目の迷宮を導く【アリアドネの糸】とは。

井上真偽さんの『アリアドネの声』を読みました。


著作はほぼ読んでるくらい井上真偽さんのファンなのですが、いつも外れなく傑作を発表してくれるので安心しております。

『ベーシック・インカムの祈り』という近未来SFミステリの短編集があるのですが、今回の作品はその流れで出来たものかな、と勝手ながら思いました。

舞台は、複層階の地下に主たる施設を置く実験都市。
障害者が暮らしやすい街並みを目指して作られた都市でしたが、地震が起き、皮肉なことに障害者の女性が地下深くに閉じ込められてしまいました。
しかも女性が抱えているのは、見えない、聞こえない、(ほぼ)喋れないという、ヘレンケラーを思わせる三重苦。

1人取り残された彼女をどうやって安全地帯まで導くか。
ドローン技術を利用した誘導、あらゆる技術を利用してのトラブルへの対処に、現代技術の凄さを思い知らされます。

帯には【どんでん返し】と銘打たれているものの、終盤まではあまりミステリ要素は表に出ていません。
女性に対するある疑惑が持ち上がったり、彼女の行動に不可解な点が散見されたりもしますが、あくまでメインは地下からの救助。

が、終盤で明かされるある真実が、それまで見えていた景色を一変させます。
是非ともじっくり読み進めて、驚いてほしい作品です。

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