白石一文「彼が通る不思議なコースを私も」
物語の中で林太郎が霧子に対して、人間が生き延びる為に必要なことは「自分が好きだってことなんだよ。他の誰でもない、とにかく自分自身が大好きで、超愛してるって思えることだよ。自分が大事で大事でたまらないって思えれば、その子供は絶対に死なない。それはそうだろう。世界で一番大事なものを失いたいって思う人間はいないからね。」という場面がある。
それを読んだ瞬間に頭を殴られたような衝撃を受けた。
ナルシストという言葉自体が、自己愛を否定する意味合いで使われる。ただ、自分に自信を持つ、とか、自分を信じる、っていう行為や態度は、根底に「自分が大好き」という事が必要なんだと、唐突に気付く。
自分を愛せない人間が、果たして他人を愛する事ができるのか?
今まで、今でも、自分を好きになろうとする自分を無意識に否定する自分がいる。
どこかで「自分を疑う」事で自分を貶め、安心している自分がいる。
自分なんて全然駄目だ、という感じを常に持ちながら。
勿論、自分を必要以上に過信すれば良いと言っている訳ではなく、もっと素直に自分を大好きだ、と思う事が出来たら、世界はどんなに素晴らしくなるのか、という事。
そんな事を考えさせられる、非常に刺激的なお話。
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