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ピロラ波

 37週目の2024/2/4識別データベースは、当シリーズの「コロナ感染者数の人口数比化について」投稿のためお休みを頂きました。その間の2024/2/8、都健安研センターは、JN.1型変異株ピロラ波が、全国コロナ変異株数一位になったことを告げています。東京都は、その2週間前にピロラ波が変異株数一位になっていたので、いずれ全国の一位は間近と思っていました。当シリーズも、2週間前から今後のピロラ波感染者数増に備えました。
 ところが、表1の38週目の2024/2/11識別データベース患者数が大~中都市圏の都道府県で減少し、小都市圏で中規模の増加を認めるだけでした。さては新型コロナ感染も、年貢の収め時の兆候かと喜んだのですが、世界の変異株流行状況を見ますと、JN.1型変異株はまだまだ最盛期のようです。暫くは、識別データーベースで様子見する以外にありません。

       表1定点観測下の一医療機関の平均患者数

*赤数字は前週患者数より増えたor等しかったことを表します。38週の黒字圏拡大に注目。
*20週目は2023/10/1~2023/10/8の定点観測下による平均患者数です。
*都道府県名は人口降順。赤は大都市圏、青は中都市圏、黒は小都市圏を表します。

 それでも、JN.1型変異株が国内変異株覇権レースを制したことは事実ですから、日本がピロラ感染下に入ったのも事実となります。来ることが分かっていた疫病神のようなものですから、来たらさっさと消えて貰いたいものですが、やっと来た感じのピロラ波でした。38週目の患者数報告の際に、厚労省は2024/2/8のピロラ感染開始を宣言するかと思ってましたが、変異株への関心は薄いらしく、38週目の患者数減でそんな気も無くなったようです。

 感染波命名が、グラフ上のピークで決められた以前に比べ、ピロラ風に変異株覇権レースで感染波が決まるとなれば時代の進歩を感じます。所詮グラフ上のピークなるものの多くは合成波形ですから、分解すると多峰性になったりしますので、後になって命名がどのピークに該当するのかが屡々問題になりかねないのです。感染波命名が人の判断でなく覇権変異株で決まるとなれば、それだけ自然科学に順じた気がしますが、波名はより複雑になる可能性もあり異論もあることと思われます。いずれせよ、勝手に呼び名をつけるわけにはいきませんので、命名なるものは Authority に定義を委託する時がくるのでしょう。

 エリス波の患者数グラフのピークも、合成波であることを図1で示します。補正後の患者数を東西日本に分け、部分的ながら2023/12/7にエリス波形2024/2/5で変異株覇権レースをグラフ化しましたが、前後関係を見るには俯瞰的に見る必要を感じましたので、補正後の全経過をグラフ化して図1としました。

     図1:補正後の日本東西とその行政ブロック別の平均患者数

*上段図は補正後の東西平均患者数で、ピロラ感染は上下図とも右端ピークが表します。
*上段図はエリス波ピークが、東西でほぼ4週間ずれることを示し、
*下段図の各行政ブロック別患者数ピークは、左図から右図への移動を示し、
*下段右図の関東地方の急峻な立ち上がりは、背景に東京都のピロラ感染を示します。

 普段よく見かける全患者数棒グラフなるものは、図1では省略しましたが、図1上段グラフの青線、赤線両グラフを合算したものを示しています。その上段グラフは下段2グラフを合成したものであり、下段グラフはその中にある各地方患者数それぞれ4グラフを合成したものになります。棒グラフだけでは、上段グラフの二峰性ピーク構成は分かりようがありません。
 従って合成波は、何を基にしての合成したものか常に断りを入れる必要があり、命名の際には、多くの場面で共用されう可能があることを念頭に置く必があります。波名でいろんな解釈がされる命名はルール違反です。
 
 次回以降の報告で、ピロラ波が表1に示すような黒字圏拡大と共に衰退するのか、エリス波の如き東西の違いを示しながらの波形変化に進むのか、いずれかの可能性が推測されます。前者ならば感染者数ゼロの都道府県出現待ちになりますが、後者なら変異株覇権レースを再び見守ることになります。
 エリス波が日本の東西でピークを異にする多峰性を述べましたが、前提は東西のピークが同じ変異株であることです。第7波、第8波の如き変異株の多頭制感染の場合も、多峰性ピークとして容易に表れたことに要注意です。これについては別な機会に述べることにします。

 図1の出典元である「定点観測下の一医療機関の平均患者数」のグラフ化については、2023/12/7エリス波形、2024/2/5覇権レース波形のいずれでも未掲載でしたので、今日は、出典元の raw data への敬意を表し、図2として掲載しました。図1は図2の補正によるものですが、raw data の補正については、前回の「コロナ感染者数の人口数比化について」をご参照頂ければ幸いです。
 図1と図2の違い、良し悪しは見ての通りです。

    図2:定点観測下の日本東西とその行政ブロック別の平均患者数 

*波形概要は、大まかには図1でほぼ説明されていると思われます。

 患者数が、部分的にしろ変異株数と関連していることが分かりますと、グラフは説明力を増し、俄然迫力を帯びます。患者数報告は都道府県ごとが基調ですから、変異株数に都道府県が関連性する可能性を推測される場合が増えますと、患者数報告はより現実味を増すことになります。当シリーズとしては、都健安研に期待しています。

                  2023/2/20        
                  精神科 木暮龍雄

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