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コロナ感染者数の人口数比化について

 今日は、「感染者数が人口数比化すること」についてまとめました。このテーマについて述べますと、屡々その出典元を求められますので、一度まとめておけば、今後はそれをもって出典元に代用可を期待してのことです。
 本論に入る前に、感染者数が人口数比化することを、ある日突然当シリーズが思いついたわけではないのをお断りしておかねばと思います。大都市圏に圧倒的に多かったコロナ感染者数が、1年余を経て中小都市圏に波及し、やがて都市人口に比例する時期を経て、最終的に人口数比化を示すに至ったことを知る経過があるのです。その間の経過については、今回は触れておりませんのをご理解頂ければと思います。
 以下、Ⅰ~Ⅲの少々長文になりますのをご容赦下さい。
 
 都道府県とその人口数(降順)を基に、上記テーマ検討に必要な各種平均感染者数 A、B、C をオ-プンデータから、平均患者数 Dを定点観測用データベースから抽出して表1としました。目的は、各都道府県とその人口数を基にして各種平均感染者数をグラフ化し、各種平均感染者数の比較検討しつつ、感染者数が人口数比化する背景の説明に供することです。

         表1:都道府県人口と各種平均感染者数

*人口は×1000.2022年国勢調査、総務省。
*平均感染者数=オープンデータ全経過の一日平均感染者数
    *都道府県47を、赤=大都市圏(9)、青=中都市圏(17)、黒=小都市圏(22)に区分
   *計・平均、計は人口のみ、平均は該当期間内の各種感染者数

 各種平均の感染者数算出に該当する期間は、
 A=2020/1/16~2023/5/8、 オープンデータ全期間
 B=2020/10/1~2021/11/20,オープンデータ第3波~デルタ波
 C=2022/1/20~2023/5/8、 オープンデータオミクロン波
 D=2023/5/19~2024/1/21   定点観測期間
 となります。
         
 表1の都道府県の赤青黒の三色区分は、当シリーズの定点観測識別データベースで示す都道府県区分に等しく、区分基準を人口数範囲、感染者数範囲を共に満たすことを条件にして、都市規模を大中小の3群に分けたものです。この区分は、当シリーズではコロナ感染以来屡々使用し、本文でも使用機会を多とするものです。
 D に関しては、一医療機関の平均患者数ですので、raw data であることを尊重して、表1はそのままの値を記載しました。A、B、C と同基準で比較するには補正が必要ですが、補正の手技等についてはⅡで説明します。
 以下本論Ⅰ~Ⅲに入ります。

Ⅰ:都道府県人口と各種平均感染者数との関係をグラフ化

 感染者数比が人口数比に等しくなる場合の条件を、グラフ上ながら定義しておきます。人口数比化の条件は、
 ①:両者の波形は可能な限り等しくなること、
 ②:両者の重ね合わせで余剰が生じないこと。
になります。A、B、Cがその定義を満たすか否かは、それぞれ①、②を満たすか否かを検討することになります。

 表1の A、B、C、D を、都道府県とその人口を共通背景にして、それぞれをグラフ化して図1としました。A、B、C は似たような波形ですが、人口数比化は①、②の検討を経てからになります。
 Dは、補正波形図(=図2左参照)での検討を要するものとなります。  

     図1:都道府県人口数と各種平均感染者数とのグラフ

*スケールは全て左=都道府県人口数、右=平均患者数です。
*人口数は青の棒グラフ、平均感染者数は赤の線グラフです。

 検討の順序として、図1B 波形の第3波~デルタ波のグラフ説明で、全体が分かり易くなると思われますので、図1B 波形の説明から始めます。

 図1B の赤線グラフ=感染者数波形は、第3波、アルファ波、デルタ波の3波をまとめたものです。波形は人口数波形よりほぼ一貫して低く、東京都、神奈川県、大阪府等の大都市圏では逆転して急上昇します。右軸のスケール幅を変えても、大都市圏感染者数は反応して増減しますが中小都市圏では応じる気配がなく、大都市圏と中小都市圏が別ものの如き反応を示します。
 参考に、図2左の第3波~デルタ波の都市規模別感染者数グラフを別掲しますと、感染者数は3波とも圧倒的に大都市圏が多く(75%)、中小都市圏では少ない(25%)ことが明らかで、図1 Bグラフの感染者数曲線そのものを示しています、人口数波形とはどうしても一致しません。従ってこの波形は、大まかにいえば人口数波形をなぞってはいますが、波形自体が等しくなく、且つ平均感染者数波形と人口数波形を重ね合わすと、人口数波形に余剰部分を多く認めますので、この感染者数は、人口数比化の条件を満たすものではないと判断されます。

 図1A、C は、全く等しいといってもよいくらいの波形同士で、人口数比化の条件を共に満たしている様に見えます。しかしグラフを拡大して、人口数波形と患者数波形をなぞるように重ねますと、A の両波形に大~中都市規模圏で不一致部分が C よりも多くなります。人口数比化の条件を当てはめますと、 C にその条件がより満たされていることになります。
 A、C 両者の相違の原因は、A の期間中に B の期間 が含まれている故と思われます。図2左の第3波~デルタ波のグラフを参考に載せましたが、オミクロン波の圧倒的な感染者数の多さは、表1によりますと第3波~デルタ波の感染者数の17倍強になり、逆にA、B の違いは僅少差ということで、両波形の酷似が頷けます。

   図2:第3波~デルタ波の感染者数と図1Bの補正後(参考図)

*左右のグラフは参考のため載せた別のグラフです。スケールはそれぞれ異なります。

 以上のことを踏まえますと、グラフ上の波形から判断して、平均感染者数の人口数比化はオミクロン波によってもたらされた可能性が高いという結論に至ります。
 患者数の人口数比化が、定点観測下でも持続している否かは、オープンデータ終了直後の都市規模別感染者数比が持続していることから、感染状況に大きな変化はなく、人口数比化も持続しているものと推測しています。

Ⅱ:患者数の補正について

 患者数が人口数比に等しくなると分かれば、理論的には人口数最小の鳥取県もしくは最大の東京都を基準にして人口数差に基づく換算表をつくり、週ごとの定点観測患者数を当て嵌めれば、補正データベース作成が容易になります。当シリーズとしては、定点数配分が小都市圏都道府県に手厚く、それ故に患者数値も正確さが期待されたこと、定点配分に少なからずばらつきがあり得ることを想定し、8行政ブロックごとにその最小人口数県を基にして患者数を換算し、8ブロックをまとめて全国版補正データベースを作成しました。図2右はその補正データベースによるものです。 

 図1Dの補正について述べます。
 図1Dは、定点観測下の患者数データベースから、一医療機関の平均患者数を都道府県ごとにグラフ化したものです。都道府県の定点ごとの平均患者数を並べた波形ですから、A、B、C のように人口差を反映した患者数ではありません。唯一の公的患者数報告による実測値ですから、不具合があればそこからコロナ感染の実態を知る工夫が必要になります。

 ここで、定点観測の問題点を指摘して、その補正の必要性を説明します。
 定点観測では、定点数5000を都道府県47で割り振りした定点数、つまり5000/47≒100を1都道府県あたりの医療機関と定め、その医療機関に受診した患者数から一医療機関の平均患者数を求めたものと当シリーズでは解釈しています。過去の実績(=感染者数)に配慮した配分でなく、機械的な割り当ての定点数ですから、結果的に人口の少ない小都市圏都道府県に手厚く、大都市圏には手薄な定点配分になったと思われます。  
 図3に、その結果得られた4グラフを示します。

  図3:オープンデータ時と定点観察の平均患者数と都道府県人口

*上段はオミクロン第8波の都市規模別感染者数、下段は定点観測第9波の都市規模別患者数。
  *左上下図は、期間約7ケ月の感染者(患者)数、右上下図白線はその結果の感染者(患者)数、
*2023/5/9、突如上→下に変わる整合性について、定点観測は説明義務ありと思われます。

 図3左の上下図は、感染者数の人口数比化に伴い、都市規模別患者数比が全経過でほぼ一定比を維持されることを示します。オープンデータ時の上段図では、常時大都市圏>中都市圏>小都市圏を示しましたが、下段の定点観測では、逆転して小都市圏>中都市圏>大都市圏になります。オープンデータ終了と同時突如変わるのは、定点観測の定点配分に原因すると思われますが、この違いの結果、定点観測開始から現在までの平均患者数が、日本で最大人口1300万人余の東京都で一医療機関あたり6.56人、最小人口数57万人余の鳥取県で9.44人という信じ難い患者数差の報告が続くことになります。

 図3右の上下図は、第8波と第9波の平均感染者(患者)数を、期間をほぼ等しくして都市規模別に示したものです。
 右上図では、人口数に比例する感染者数対応が認められますが、右下図の小都市圏では、定点配分が人口数に比して過剰な手厚さが推測されるものの、大都市圏では人口数が求める定点数が手薄な対応に至っていることを示しています。定点配分がもたらしたなんとも不都合な結果を、図3右下段は示していると思われます。

 以上のことから、定点観測下の数値は、オープンデータによる他結果と比較するには全てに補正が不可欠であり、従って全ての患者数を補正したデータベースによる比較検討が必要と判断しました。
 補正後の図2右は、人口数比化の条件からみて、図1 Bよりも図1Cに近づいているかに見えますが、波形上の違いは明らかで、人口数比化の条件を満たすものではなく、換算表に更なる工夫の検討余地があると思われます。
 註:図3は、2024/3/5まで下段図のみ表示でした。説明不足を指摘され、同日上段図を追加し、追加説明をしましたが文意に変更はありません。
 
Ⅲ:オミクロン波で患者数が人口数比化することの意味

 患者数が人口数比化する過程を確かめるには、オミクロン波での大都市圏患者数率(=大都市圏患者数/中小都市圏患者数)が、大都市圏人口数率1.2に等しくなる過程を求めればよいことになります。というのは、大都市圏人口数率1.2は人口数比の常態を表すからです。
 
       図4:オミクロン波の感染者数と大都市圏率

*左図の各波形は、右図の濃青部分と淡青部分の各波を合わせたものになります。
*大都市圏患者率は、第6波後半から上下変動しながら1.2に向かって一定化します。
*大都市圏人口率1.2は、大都市圏人口数/中~小都市圏人口数を意味します。

    図4は、患者数が大都市圏率1.2に等しくなる過程を、線グラフ(左)と面グラフ(右)で示したものです。図右の濃淡の両面グラフの合成が、図左の各波形に相当します。図4左の大都市圏率(橙色線グラフ)の減少過程は、図4右の中小都市圏患者数(淡青色面グラフ)の増大に反比例しています。従って、人口数比化=図1Cの主要因は、中小都市圏感染者数増加によることを示しています。 

    以上で本論は終わります。
 以下は、感染者数の人口数比化がもたらした現状についての試論です。
 
 感染の人口数比化の典型を示す図1Cを見ますと、月日をかけた人口数比化は、全ての人、全ての都道府県に等しく作用する何らかの背景の関与を推測させます。例えば集団免疫の如きなんらかの免疫機構が推測されますが、具体的な証明はできません。当然、証明不可なものを説明の糧にするのは避けたいものです。一価~二価ワクチンの蓄積効果を考え、感染制御に働く大きな抑制機構が関与したとしておきますが、地方の隅々まで感染が浸透する様を彷彿させながら、タイミングを合わせたように第8波の感染者数は、第7波より減少します。

    第7波の後半期頃だったと思いますが、アメリカCDCのファウチさんが、ワクチンのターゲットを感染拡大防止から感染重症化防止に切り代えたことを紙上が伝えていた記憶があります。当時から、感染拡大防止は至難の課題だったと思われます。感染拡大防止を諦めたこのワクチンの重症化防止説を踏まえますと、第8波以降の感染者数減は、人口数比化に伴う何らかの免疫機構がもたらした変化の可能性を、逆に推測させることになります。
 
    けれども、もしそうならば、何故感染者数がゼロの事態に至らないのか、何故だらだらと少数者の感染が続くのか、何故、変異株エリス、HN.3型変異株感染、変異株ピロラ等の洗礼が続くのかの説明が必要になります。
 如何なる社会的現象も、その進行過程に表裏一体を伴うことがあるなら、ワクチンにも同じ両面があると思われます。

    表裏一体のワクチンの裏面として、当シリーズとしては、ワクチンによる変異株輩出常態化の可能性を考えます。ウイルスが自らの増殖に、100を超える数多の変異株を輩出する必然性があるとは思えません。何らかの免疫機構成立の脅威に抗して、繁殖力旺盛な子孫を作ることにその生存を掛けるからと思われます。従って、変異株輩出は人類がワクチンを続ければ続くことになり、他方、ワクチンは人類生存に必要な感染防止の役割も提供し続けることにもなるのです。矛盾した論理ですが、この矛盾こそ現在のコロナ感染の現実を物語っているように思われます。
 
    変異株輩出と患者数または死亡者数との関係解明が残されています。二価ワクチン後、急激な変異株数増が見られ、第8波の終わりにかけて死亡者数が急増したことは明らかです。二価ワクチンの発想源であるアメリカは、思うところがあってのことでしょうが、二価ワクチンは一回で中止し、以後一価ワクチンに切り替えています。忙しいアメリカは、都合の悪かったことを態々報告するほどの閑はないのです。
 
 表裏を見極めながらコントロールするのが人類の知恵と思います。ワクチン万能説への傾きに危うさを感じます。新たな資料、新たなものの見方が求められていると当シリーズは考えます。
 
                       2024/2/10
                       精神科 木暮龍雄


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