見出し画像

夏の終わりに。

9月の最初の週は、ツアーガイドで雲ノ平周辺に入る予定でしたが、強烈に発達した台風10号が西日本に近づいていました。入山日前日午前中まで天気予報を詳細にチェックしながら、悪天候になった場合を想定したツアー行程をシミレーションしました。もちろん中止という判断もあったわけですが、台風の進路が西にずれことと、山域が北アルプスの北部の西側で南東の風の影響を受けにくいエリアであることを考えて、実施を決めました。

画像1


想定された行程の変更を箇条書きにしてお客様に連絡すると、1名のキャンセルが出たものの、残りのお客様は参加の意思を示されました。旅行代理店が主催するトレッキングツアーの場合、個人ガイドと違って臨機応変な対応がしにくく、直前になって天候による行程や日程の変更は、よほどのことがないと出来ないし、しないのが常です。台風が来ていようが、安全が担保されるなら実施するのが、この業界のやり方です。致し方ないこととは思いますが、個人的には、ツアーのこの常識慣例は、代理店側もお客様側も見直した方が良いように思います。

画像2


さて、今回のツアー、台風の影響はどうだったかというと、3泊4日のうち、雨に降られたのはほんの一瞬でした。初日、登山口の折立から太郎平小屋まで順調にコースタイムで登り、二日目は太郎平小屋から黒部五郎岳へ。山頂からの下りで天気が少し怪しくなり始め、黒部五郎小舎に着く5分ほど前に夕立に遭いましたが、急いで雨具を羽織って小屋に駆け込んでギリギリセーフ。その夕立も1時間ほどで上がりました。8月末から午前中は晴れで午後に雨というパターンが多く、なるべく午後2時ごろまでに行動を終えるようにペース配分を心がけたおかげで、今回も雨に濡れることなく行動ができました。
それでも空を見上げると台風の影響か、雲の勢力はもの凄くは迫力がありました。まるで雲の博覧会のようでした。

画像4

今回は雲ノ平を時計逆回りに周遊するコース設定。このコースの良いところのひとつは、スタートである太郎平からこれから歩く山稜が全て見渡せるところです。また黒部五郎岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、祖父岳など眺望が素晴らしいピークを踏んで行けることです。そしてもちろん雲ノ平を存分に楽しむことができます。

参加されたお客様の中には、かなりの距離を歩くことに少し不安を持たれていた方もいらしたようですが、皆さん元気に余力を残して歩き通されました。最終日こそ、台風の強い風に悩まされましたが、それも貴重な経験となったことでしょう。

画像5

黒部五郎小舎では、私たちよりもかなり遅くに到着した単独の男性がいらしたのですが、じつは遭難されたと思われて捜索にヘリまで出動する騒ぎになっていた方でした。後で知ったのですが、4名パーティーで赤木沢に入渓。F2あたりの高巻きでパーティーが右岸と左岸に分かれて登った後に、一人はぐれてしまったそうです。パーティーはその方を捜索しても見つからなかったため、そこから薬師沢小屋に引き返し警察に捜索要請をしたようです。結局、遭難したと思われた男性は単独で予定のコースを歩いて黒部五郎小舎に到着。仲間は先行して自分より先に小屋に着いていると思っていた様子です。
先に述べた激しい夕立があって雷鳴も轟いていたので、間違えば本当に危険な状況になっていたかもしれなかったわけで、何より無事で良かったですが、はぐれてしまった状況が少し解せない気がします、赤木沢はそう見通しが効かない場所ではないですし。また赤木沢など沢筋では携帯電話も通じませんが、稜線にでれば連絡は取れたはずです。

山はすっかり秋。後一か月もすれば雲ノ平でも雪が降り始めます。今年の夏山はいろんなことがありました。後もう少し、事故も遭難も、それから新型コロナによるトラブルがどうか起きませんように。

Peak2Peakではこの後、9月の連休には雲ノ平方面、今年最後の赤木沢、北穂高岳、大キレット、剱岳北方稜線、裏剱などのガイド公募企画を用意しております。詳細はいずれもお問い合わせください。→ peaknipeak@gmail.com

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?