夢見の彼
今日の夢。
夜、ガラス張りの近未来的なビルの中で。
昔色々あった人と。
話した。一緒に歩いた。
夢の中の彼は、数年前に比べ大人っぽくなっていた。
髪をきちんとセットして、私の記憶では着そうもない黒のタートルネックを着こなして。
思わずドキッとした。
だけど、年下なのになんか偉そうだったり、哲学的なことを急に言ってきたり、ちょっと大胆だったりするとこは、昔のまま。
目が覚める。
夢の中で味わった心地よい懐かしさと心拍数が惜しくなり、もう少し寝てればよかったと後悔する。
彼は幾度も私の夢に登場する。
その中でも、今日のはうんとリアルだったな。
好きだったけど、たくさん傷つけて、お別れした人。当時の私は心がグチャグチャで、覚悟もないまま始めて、綺麗に終わらせることができなかった。完全なる黒歴史。彼は墓場まで持ってくなんて言ってたっけ。
最近星に詳しくなった私は、彼が生まれた日のホロスコープを調べてみる。
月と海王星の合。きみは幻想の星と仲良しなんだね。だからよく夢に出てくるの?
太陽と月の星座のエレメントが私と一緒。気が合ったのはそのせいかも。
分析をやめる。
彼と会う気はもうない。
だからこんなこと、今更分かっても何の意味もない。
今の私にはまっすぐでかわいい夫が隣にいるんだ。普段きみのことを思い出すことはないのに、夢に出てくるとか、そんな卑怯な真似しないで欲しい。
というか、なんでこんなに心を揺さぶられているんだろう。たかが夢、平安時代の人じゃあるまいしと自分で自分に呆れる。
「でもねえ、僕は思うんですよ。人は、目に見える世界だけで生きているわけじゃないって。」
幻になったきみは、そう言って私を縛る。
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