#一日一短歌 2022年1月分
勝手に設定した正月休みののち、11日からは欠詠なしで続いています。引き続き頑張っていけるといいな。
1/11 流れてくことばを星に変えながら世界に少し色を落として
ポルノグラフィティの昭仁さんについてはよく短歌にしちゃうんだけど、晴一さんについてはあんまりしないなあ、と思って詠んだ。わたしにとって彼は、なんでもないことにことばで色をつける魔法使いみたいな人だ。
1/12 隊列はかがやくいのち美しく並ぶ園児のしんがりをゆく
通勤途中で登園中の園児の列に出くわす。毎朝新鮮に涙が出ちゃうくらいまぶしくてかわいい。
1/13 俯いて小さな世界に籠もるときぼくらのいのちはこんなに無防備
電車内で無差別殺人未遂事件が起きた数日後だった。電車通勤の自分にとっても他人事ではない。この短歌も電車内で詠んでいる。ふと顔を上げれば、乗客はみな俯いていた。その無防備さに、少しぞっとした。
1/14 ねぶられてひたひたになる耳たぶの拾った音は海のさざめき
「そういうシチュエーションが好きです」を短歌にしてみたかった(突然の性癖暴露)。
1/17 幼さをゆるしてもいい 君の住む世界の空はいまだ薄明
薄明=日の入りのすぐあと。トワイライト。
1/17 ぶつかって壊れてまるくなるとして抱きしめられた傷の痛みも
「こどものおもちゃ」の番外編で、「とげとげの心もそのうち丸くなる」ってモノローグが好きだ。事あるごとに思い出してお守りにしている。
1/17 首筋にきみの熱まだくすぶってつめたい陰を選んで歩く
「そういうシチュエーションが好きです」(略)
1/18 リセットのためのボタンに指を乗せいつか死ぬなら今は生きよう
自分も含めて、生きづらい人が多い日のタイムラインだった。
1/19 ゆるされぬ素肌にふれて やわらかい果物を剥くときの振動
全然関係ないけど「振動」の予測変換で心臓が跳ねた、しんどうはあかん
1/20 うやむやにしてていいって言ったのに無理に名前をつけたりしないで
ポルノグラフィティ『メビウス(仮)』の「そのくせなんども 名まえをほしがり」のフレーズを思い出しながら詠んだ。
1/21 ポジティブな歌のすべてが敵になるそういう朝の果てしない青
信じられないかもしれないけどポルノグラフィティをどうしても聴けない瞬間があるんだよ。わたしにとってあのボーカルは光だから、眩しすぎて苦しくなってしまう。
1/24 休校の報せを聞いて焦るよりほっとするべき失格の母
オミクロンが猛威を振るい始めた頃、娘の通う小学校も休校が続いた。ほっとするよりも「仕事どうしよう」って焦る自分に、「ああやっぱ母親向いてないな」って思った。
1/24 イヤホンを忘れた朝のいつもより静かなホーム各停を待つ
そのまんまを詠んだだけなんだけど、最寄りのホーム人がたくさんいても本当に静かでびっくりする。
1/24 それぞれに乗換駅があればなおおおさか東線のかなしさ
おおさか東線って、他の路線に乗り換えるための連絡線のような役割を担っているらしい。駅を出ても他に目的地がある人が多くて、なんかちょっとさみしい。
1/25 フロントの白いライトは正しさを正しさとして主張しており
ホームに入ってくる電車のライトがやたらまぶしかった。
1/26 存在を確かめながら少しずつ離れる練習していよう、月
似たような語尾の歌を年末に詠んでた。「落ちるのと離れてゆくのとより一人淋しくなるのはどっちだろう、月」の続きみたいだ。無意識であった。
1/28 引いたまま帰ってこない波の間にさらわれていく冬の青空
冬の海と空も好き。さすがの瀬戸内海も冬は寒々しい。
1/28 こぼれおちる星の数々 アルバムに入らない曲ばかり愛する
ポルノグラフィティもaikoもカップリングベストアルバムを作ってください。すべてわたしの星なので。
1/29 知らずとも生きてはゆける世の中のはしっこたぐり寄せればひかり
歴史なんて知らなくても食ってはいけるんだけど、知ってた方が世界が広がるぞ、と言いながら今年度は頑張りました。知識は武器にも盾にもなる、ということが理解してもらえてたらうれしい。
1/31 無機質にしたためられた戦争の墓標のような年表を抱く
歴史を教えているとたくさん戦争の名前が出てきて、その多くが猛スピードで通り過ぎていくけど、そこにはたくさんの失われた命があるんだよなあと思う。「仕方なかった」と言えば易いが、仕方ないことにはしたくないよね。
1/31 建てば敗け興れば滅ぶさだめならぼくらの末もそう遠くない
歴史を教えているとたくさんの国が出ちゃ消えの繰り返しでうんざりする。「どんな民族でも、どんな言語でも、どんな神を信じていても、仲良く暮らしましょうや!!」ってなるのに、あと何百年かかるのだろう。それまで、文明ごと滅ばずにいられるんだろうか。歴史を学ぶ悲しさは、人類が同じ過ちを繰り返し続けているって知ってしまうことだ。そして、それが仕方のないことだとどこかで思ってしまうことだ。自分たちから遠いことだと感じているから、そう思っちゃうんだろうなあ、と自戒も込めて。
寒かったからか時世のせいか、暗い歌ばっかり詠んでる1月でした。今読み返しても暗いねえ。
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