#一日一短歌 2022年4月分
新年度の忙しさにかまけていたら数日分の辻褄合わせができなかったので、1首足りなかった……無念
4/2 ちょうどいい嘘を探してまだきみに求めてもらいたかっただけなの
エイプリルフールだったので、嘘をテーマに。
4/2 全身をくまなく撫でていくようにきみへの愛をことばにするね
比喩の使い方とても難しい。直情的な人間なので。
4/4 太陽を宿したように咲くきみの桜に会いにここまで来たよ
因島には「岡野昭仁が植樹した桜」があるんだけど、この春に初めて見に行った。この日は晴天で、濃い水色の空に満開の桜が咲き誇り、ほどよく春の風が吹いて最高の桜日和だった。散歩に来られていた地元の方とも言葉を交わして、とてもあったかい気持ちになった。
4/6 その熱で溶けたチョコレートを掬うなにも救えぬ恋だったのに
掛け言葉もとても難しい。ひらめきが足りない人間なので。
4/6 寄り添って見えるでしょうか月と星ほんとはこんな遠くにいるのに
当人同士にしか分からないことを外部からごちゃごちゃ言いがち、みたいな気持ちだったのかもしれん。
4/7 困らせるつもりはなくて 彼岸花、綺麗に咲いてるところ、知ってる
ひがんばな、という言葉の力が凄まじい。これだけであの赤の毒々しさが伝わる。
4/7 好きなのに会えない人のいる夜の月よ おまえもひとりのひかり
月の詩情も半端ない。お気に入りの歌です。5月の月刊うたらばに採用されました。久しぶりなのでめっちゃ嬉しかった。
4/8 自転車の後ろに君を乗せてゆく春も今年で最後 おもたい
昨年引っ越してから初めて、いわゆる子乗せ自転車デビューした。それまでは車移動だったので、自転車生活に慣れなくてイライラすることも多かった(マナー最悪地域なので)。でもこれも今年度いっぱい。終わりが分かっているから、存分に楽しみたい。
4/11 不安なら明日のわたしが壊すだろうほろほろ崩れるフォーチュンクッキー
全然関係ないけど食べ物の中におみくじを入れるの、衛生的に大丈夫だろうかと思ってしまう。
4/11 熟れすぎたレモンを絞るいつだって霞んだ空の奥に太陽
レモンの捨て時が分からない。レモンって腐るのか?
4/11 崩れ落ちそうになったら思い出せあの海の色と手ざわりと音
仕事始まって早々に崩れ落ちそうになった日だったんだな……わたしが思い出す海は瀬戸内海です。
4/13 あれもこれも嘘だったのに手の中に残る熱だけ本当にして
そうしてしまったのは自分か相手か。
4/14 地下鉄が誰も載せずに走る日もホームの端に構える撮り鉄
オタクってそういうもんだよな。
4/15 もういないあなたの名前をつぶやけばつまさきを撫でるように、さざなみ
真夜中にドライヤーかけてると足元に触れるぬるい風があるんだけどあれはなんなんだ。
4/15 たましいがぶつかり響く音 合わせ鏡を覗き込んだ先には
ポルノグラフィティのシングル「オー!リバル」のリリース日だったのでポルノ短歌を。もう一度ポルノグラフィティに落ちた曲です。
4/17 気まぐれに重ねた肌が渇くからまた気まぐれに触れにおいでよ
わるいやつだ……
4/17 恋 それは奪われること、ありとあらゆる感情がたやすく動く
だとすれば、いつだって恋に落ちる可能性があるのはこわい。
4/20 目覚めれば忘れてしまう輝きを宿した瞳 きみは明星
だからいつまでも夢を見続けていなきゃきみに会えない。
4/20 この川を何度も渡る人々の生活映し揺れる水面は
運河としての歴史があるあの淀川を毎日往復するとは思ってなかった。人生、何が起こるか分からんな。
4/20 ポルノグラフィティのアルバム「THUMPχ」のリリース日だったので、収録曲をモチーフにしたポルノ短歌を詠みました。
4/24 悪者にしてしまうかもしれなくてかさつくきみの背中を撫でる
だからと言って離れることなんてできないままで。
4/24 どうですか そちらの夢は甘いですか ひとりで夜を小さく折って
夢を見てもひとり
4/25 朝も昼も夜も飲み込む海だから青いわたしもいっしょに溶けたい
海にそこまでの包容力があるかどうか。
4/25 ピスタチオ、アーモンド、ピーナッツ まだ知らない味を探す街角
「SPY×FAMILY」が好きすぎて短歌にした。ピスタチオはロイドのカラー、アーモンドは毒物と同じ香りのヨル、ピーナッツはアーニャの好物。アニメも最高に良い出来だよね。
4/26 何度でも思い出せるの 夜の熱、明け方の夢、まひるのくちづけ
そうやって反芻できるほどの記憶があるからなんとかやってけるんだよ。
4/26 春の雨はやわらかな牙 きみの頬穿ちて涙のふりをしている
さらさらした雨がさーっと降ってった日だった。
4/28 丁寧に噛み砕かれて潰されて、いいなあ きみの主食になりたい
もうそうすることでしかひとつになれない気がするんだ。
4/28 からっぽの空き缶だから蹴飛ばしちゃだめだよきみの水で満たして
きみを満たすか、きみに満たされるか、お好きな方をどうぞ。
4/30 大阪にほんとの海がないと言うわたしに毎年海を見せてね
高校生の頃、高村光太郎の「智恵子抄」が好きで何度も読み返した。この歌はその中の一編『あどけない話』を下敷きにした。
東京に空がないと言う智恵子の気持ち、大阪に来たわたしもよく分かる。大阪にはほんとの海がない。わたしの海は瀬戸内海のあの海だけだ。わたしがそう言うと、夫は「じゃあ今度、みんなで行こうね」って言ってくれる。夫はいつも、わたしの大切なものを大切にしてくれる。得難いひとだ。愛し続けなければ、と毎日思っている。
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