高橋優の #推し短歌 を詠む

　「お前が2023年に出会ったアーティストでいちばん衝撃を受けたのは誰だ？！」と背中に銃を突きつけられたら、両手を高く挙げて「高橋優です！！！！」と叫ぶ。ライヴってすごい、これまでほとんど聴いてこなかったアーティストの曲がこんなにぶっ刺さっちゃうんだから。

　今年3月に両国国技館で開催されたTOKYO GUITAR JAMBOREEの1日目、大好きなポルノグラフィティの岡野昭仁さんがひとりで出演するってんでひとり日帰りで行ってきた。いろんなアーティストが舞台に立つタイプのライヴは初めてで、演者全員の熱量にただただ圧倒された幸せな時間だった。

　ライヴも終盤、トリの昭仁さんの出番まであとわずかでそわそわしていた。高橋優は昭仁さんと旧知のアーティストというのは知っていたので、有名どころは何回か聴いていたけど、特にしっかり予習もしないままステージが始まった。

　1曲目は『福笑い』。初めて聴く曲だった。でもあの一音目の「あ」で息が止まった。今思い出してもぞくぞくする「あ」だった。

　続く『微笑みのリズム』『勿忘草』も聴いたことのない曲だった。なのに、歌詞がきちんとこちらに届いて聴こえてくる。まっすぐな声に鼓膜が、心臓が震えた。

　『明日はきっといい日になる』、これは知ってる曲だった。でも、ライヴで聴いたら音源よりもずっとずっとその歌詞が刺さってしまう。「明日はきっといい日になる」、なんて高橋優以外に言われたら怒り狂っていただろう。「お前に何がわかんだよ！！いい日にならなかったら責任取ってくれんのかよ！！」って喚いても、高橋優ならきっと「俺がなるっつったら、なるんだよ！！」って笑い飛ばしてくれそうだ。そしてたとえいい日にならなかったとしても、なんか笑い飛ばしてくれそうだ。

　最後の『HIGH FIVE』、これもやっぱり知らない。でも分かる、これはいい曲だ。不思議と涙が止まらなかった。初めて聴く曲であんなに泣いてしまうのは、この曲が初めてだった。土俵の上でひとり、指が千切れそうなほどギターをかき鳴らして歌う高橋優、めっちゃかっこよかった。すごい説得力だった。

　ギタージャンボリーが終わって現実に戻っても、高橋優の凄まじさが忘れられなかった。すぐに行けそうなライヴを見つけて、チケットを取った。5月の京都公演、また高橋優の歌声を浴びたかった。浴びたらなんか、明日はきっといい日になる気がした。

　そんな「おれの背中をはちゃめちゃに押してくる高橋優セトリ」を浴びた直後に聴いた最新アルバム「ReLOVE & RePEACE」、あまりにもぶっ飛んでて高低差で風邪引くかと思った。高橋優がそういうひとだったってちゃんと教えといてくれませんか？！噂には聞いていましたが？！

　この曲が最新アルバム1曲目、再生してしばらくまじで固まってしまった。この歌詞に、この曲に、『あいのうた』ってタイトルをつけるんだ。高橋優凄すぎる。あまりにも打ちのめされすぎた。好きだ、好きすぎる。すべてが本心のような、すべてが嘘のような、まごうことなきラブソングだ。その歌詞の言葉のすべてに説得力が添えられた歌声だ。そりゃあんだけ力強く、明日はきっといい日になる、って歌えるはずだ。

　笑ってしまった。こんなアーティスト、他に知らない。

　このアルバムを聴いて5月、ロームシアター京都の公演に行った。一般で取ったのでギタージャンボリーの時ほど近くはなかったけど、大きな声で、3階席の奥まで歌を届けてくれていた。アルバムの曲を全部演ってくれて、アルバムの解像度がぐっと上がった。何気に声出し解禁後初めてのライヴだったので、多少声を出せたのも嬉しかった。

　新しいアーティストを好きになるあのわくわく感を、久しぶりに感じさせてもらえた。今、ひとつずつ過去作をじっくり聴いている途中だ。

　高橋優の歌う愛は、正直でまっすぐだ。それは時に心のいちばん弱いところに深く刺さって痛いけど、それすらも面白い。痛いくらいの愛を歌う高橋優、きっとこれからもずっと好き。とりあえずまたライヴに行きたい。

世の中を鋭く抉る切っ先で歌うのは愛、暗がりにある
遠くても言葉は届くまっすぐに刺さって抜けない錨みたいに
放たれる声は重くて無防備な心の薄い氷を踏み抜く
かき鳴らす六弦そこにひとり立つことをものともしない笑顔で
その熱を鎮めるためのひと呼吸　折り目正しく一礼をして
生きる＜LIVE＞ってこういうことだ心地よく音に言葉に声に溺れて