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鏡の中の、くるま

前にどんな車がいるか気になる。
どうしてかというと、その車はわたしの車を映す鏡だから。

黒色の車ならアタリ。トランクドアがフラットなら尚よい。
でも、少し膨らんだドアもまたよい。
肉眼では見られない、少しゆがんだわたしの車が愛おしい。

急ぎでなかったら、しばらく追尾しそうになるのが鏡面のトレーラー。あれこそまさに鏡。
それでいながら絶妙に魚眼レンズのように見える仕様になっており、ヘッドライトがクリクリッとして見える。ちいかわみたい。
信号待ちのあいだ、ニヤニヤが止まらない。
赤信号が苦痛じゃなくなる唯一の瞬間。むしろ赤になれ、と祈る。

何年も乗り続けているとしょっちゅうは愛車の写真を撮らなくなるが、前の車に映る愛車の写真はつい撮ってしまう。
ショウインドウに映る自分が、光の加減を受けていつもよりシュッとして見えるのと似ているかもしれない。

リアルだけど、リアルじゃない。
少しゆがんだくらいがちょうどいいのかもしれない。

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