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中から泡が必要だった

とにかく削られた一週間だった。
あともうひと削りされたら、大切に守られてきた芯が見えてしまうくらいギリギリまで削られた。

「華金」という言葉に今ひとつピンと来ていないわたしだったが、今週は仕事先の玄関を出た瞬間にからだの周りにフワァ〜っと花開くのが分かった。
削られてボロボロになった木屑のようなわたしに、花が添えられた。
月曜日の朝まで枯れないで、と願う。

行きたかった店々を回って、自宅に帰り泥のように横たわるわたしには、泡が必要だった。
今日は、中から泡が必要だった。
というのも、ストレスメーターが90を超えると無性に炭酸飲料が飲みたくなる。
喉を痛いくらい刺激されることで、耳の穴から体中の毒々しいものが全部出ていく感覚がするのだ。

今日はどうしてもメロンソーダが飲みたかった。
木屑と化して泥のように動けないわたしにも、自分を回復させるだけの体力は残されていた。
残された力を振り絞って、5分かかるコンビニまで歩いた。
素足みたいな薄いストッキングを履いたOL二人組はタクシーを探して右往左往していた。
OLから少し離れた場所で停車中のタクシーの運転手は、起きているのか寝ているのかわからなかった。
タクシーは半分の明るさでライトをつけていた。タクシーも起きているのか寝ているのかわからなかった。

帰宅して、メロンソーダをグラスに移す。
メロンソーダは緑色でも黄緑色でも黄色でもない不思議な色をしていた。
グラスに注ぐと、ぷちゅぷちゃぷちょ…と閉じ込められていた泡たちが騒ぎ出した。わたしの華金を祝って躍ってくれていた。
一昨日飲んだメロンフラペチーノよりもうんと安いけれど、わたしの体力も気力もぐんと回復させてくれた。
ああ、これだ。わたしは中から泡が必要だったんだ。

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