宮尾登美子 著 「朱夏」

この時期なので、こちらの本をご紹介

宮尾登美子 著   「朱夏」

著者の自伝的小説で、
「櫂」「春燈」からの連作で
「仁淀川」へと続く。

どれをとっても名作に思える
宮尾文学の中でも、
最高峰と言われている。


宮尾文学は大好きで
ほとんどを読みましたが、
その中でも、「櫂」と、
この「朱夏」は強烈に
印象に残っています。

宮尾文学は、あっという間に
グイグイとその世界に
引き込まれてしまう。

そして私の場合は、
頭の中にパァーっと映像が広がるのだが、とくに宮尾文学はイメージが早い。

「朱夏」はやはり時代背景というより、
主人公の背後にあるものが
まず特殊というか、強烈。

戦争、それも、乳飲み子を抱えて
満州に渡り、奇跡的に家族揃って
日本に帰国するという体験なのだ。

ほかにも戦争を扱った作品は多くあるが、
この「朱夏」は
妻であり、母であり、主婦であり、
という視点から描かれる。

作者本人の実体験に基づいているので、
生々しいかもしれないし、生き生きとしているかもしれない。

そもそも戦争体験が、
私にとっては想像を絶する苦難なのだが、
そこにお嬢様育ちという要素が加わったら…と思うと筆舌に尽くし難い。

戦争を知る、という面もあるが、
勇気や元気をもらえる作品でもある。

何より、素晴らしい宮尾文学を
堪能してください。


読んでくださり、ありがとうございます。

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