キサンジイシミガキ
心の隅に埃が溜まると、石を磨きに広島県へ。
柔らかな風が吹く丘を歩き、街を見おろす石の前に立つ。
そうして私は、その石を磨く。まるで子供が砂場で、トンネルを掘るみたいに、無心に石を磨く。
父に話しかける。無口な父は、頷き笑う。今も昔も、ずっと父は無口だ。
木々が梢を鳴らす。
雲を見上げ、深く息を吸う。
風がおいしい。
10代の私は、心の埃が溜まると、父にあたった。そういう時父は怒ったような顔をした後に、悲しい顔をして、やっぱり黙った。
ねぇ、言いたいことあるならちゃんと言ってよ。
処理できない自分の感情、検品もせず父にぶつけていた。
ねぇ、あの時どんな気持ちだったの。
そして今、私は石を磨く。
石に青空が映り輝くと
心にこの丘と同じ風が吹く
いつの間にか埃も消える
父は黙って笑う
石磨きは、私の気散じ。
気散じ石磨き。
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