見出し画像

そらのしたでスコーンを食べるだけでもひとはみたされるよ、という童話。


雨あがりのさわやかな晴れ間は、みずたまりの水面を、きんきろりときらめかせます。

やわらかな風は、木々や葉をゆらし、しずくをいくつか、ぱたぽとぷちゅんと落とすのでした。

みあげれば、雨であらわれた空を、雨であらわれた雲が、雨であらわれた風に押され、すいすいと笹舟のように、ながれてゆきます。

とても気持ちのよい日です。

そんな日の公園をゆっくり歩いていると、柳のきりかぶから、あたしい柳の木が生えていました。


画像2


新しくやわらかい葉は、願いをのせた短冊みたいに、やさしくゆれています。
きりかぶに目をやると、苔がびっしりと生えていて、なにやら柔らかそうです。






おや?






画像1


あ、この子、どこかで見たことありますね。

あ、こちらにも。


画像3


あ、ここにもいました。


画像4


この子たちはどうやら、わたしに伝えたいことがあるようです。でも、なにしろ彼らのことばは、ぴこぴこぷこぴぷ言っているだけなので、まるでわからないのです。

だからわたしは、その子たちに曖昧に笑いかけて、その場をあとにしました。


それでもまたしばらく歩いていると、さっきの色のついた子たちがいそぎ足で追いかけてきました。



次は何やら、背中にかかえています。


画像5


この子も。

画像6

この子はずいずい近づいてきます。

画像7


そしてこの子も。


画像8


みんな、わたしにたべものをくれました。
スコーンやグラノラです。


画像12





透明なあおぞらのした、あおいベンチに座り、スコーンをひとつ齧ってみます。

すると、小麦を挽く風車小屋の中にいるみたいに、小麦のかおりで満たされました。

そしてしっとりとした塩味が風のようにすぎてゆき、星空みたいにじんわりとあまみがひろがります。

気づけば、そらをみあげて、風にふかれて、ゆっくりもぐもぐしているわたしがいました。


たったひとつの小さなスコーン。


それだけでもひとはみたされるのだと、いろの子たちが教えてくれたのです。





あ、そうそう、いろの子たちがさいごに教えてくれました。

彼らがくれたたべものは、ここでも見つけることができるそうですよ。








画像9

↑すでに売り切れっ!

画像10

↑麦のかおり

画像11

↑歯ごたえと旨味の二重奏!もはやスルメ!もはや商品名「スルメ」!スルメ!!!

もしサポートして頂けた暁には、 幸せな酒を買ってあなたの幸せを願って幸せに酒を飲みます。