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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、…
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#連載小説

「つくね小隊、応答せよ、」(四)

その3つの影を見て、恐怖が弁存を包みました。 みっつの影は、薄くぼんやり白く光っています…

「つくね小隊、応答せよ、」(伍)

「…で?娘は、食われたのか?」 夜の闇の中で、仲村が訊く。 「ああ、そうだな。食われた。…

「つくね小隊、応答せよ、」(六)

光前寺は、信州駒ヶ根の山の麓の寺です。苔むす石垣と林の中の石畳。その長い道の先に、本堂が…

「つくね小隊、応答せよ、」(七)

夏の真夜中。 密林。 這って進む渡邉の耳には、誰かが小声で言い争って、そしてそれを誰かが…

「つくね小隊、応答せよ、」(八)

「久や、久、これ、久蔵、こっちよ」 「え、ここ人んちじゃないの?」 「うん、人様のお店じ…

「つくね小隊、応答せよ、」(九)

天保といやあ、まあ今からだいたい100年くらい前だな。ばあさんが話してくれた話っていうの…

「つくね小隊、応答せよ、」(十)

「道雄、おい、道雄、大丈夫か?」 渡邉道雄はゆっくりと目を開ける。 目の前には、心配そうに道雄を覗き込む甚がいた。 道雄は、ぼんやりと甚の顔を見る。 すごく懐かしいような、不思議な気持ちだ。 「あれ、え、これは、え?えっと、俺、どうしたんだっけ?」 道雄はぼんやりとした顔で、甚に尋ねた。すると甚はあきれた顔で笑う。 「お前がまた喧嘩した。で、俺がまた加勢した。っていう、いつものやつだよ。いい加減飽きたんだけど、そういうの」 甚は頭をかきながら、道雄に手を差し伸

「つくね小隊、応答せよ、」(十伍)

どうやら狒狒たちには、なにか策があるようです。 それぞれが石畳を振りかぶり、本殿の早太郎…

「つくね小隊、応答せよ、」(十七)

「渡邉、頼みがある」 秋月が、渡邉を睨み付けるようにして言う。 「なんだ」 「…殺して……

「つくね小隊、応答せよ、」(十八)

ジャングルの暗闇の中、渡邉、清水、仲村の三人が、話しています。 焼きもぐらと、砂飯の夕食…

「つくね小隊、応答せよ、」(十九)

翌日。雨が降りました。 渡邉たち三人が服を脱いで雨を浴び、清水が女風呂について語り、仲村…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿四)

兄、九右衛門、片頬で、にやりと笑います。 「六右衛門さまの顔に泥をぬっときながら、何事も…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿伍)

朝捕まえたターシャの毛を、火で炙り、焼けた毛を銃剣で削ぎ落とす。硬くなった皮膚と、炭化し…

「つくね小隊、応答せよ、」(廿六)

「そしたらそこに、大将が現れたのよ。 俺より年下。しかも小柄。そのくせ、大熊を見てもびびりもしねえ。 でよ、腰の抜けそうな俺見て、お袋見て、最後に大熊見て、大将言ったのよ。 “あーあ、目、合っちゃったなぁ…立ち去ることは、もうできないなぁ…” 何言ってんだこいつって、思ったよ。俺よりも年下のくせしてよ、ちいせえくせによ、何ができんだよ、って。とっとと逃げろよって。 そしたら大将、みるみるうちに二頭の熊を越えるようなヒグマになってよ、雷みてえに吠えるのよ。 俺は、動