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怖くなるまで待っていて

長いようで短い時間から少しずつ遠ざかっていく。2回寝て、これから3度目の睡眠に入ろうとしている。時間が経ち過ぎたら、わたしは忘れっぽいから、全てを思い出せなくなる。だからその前に、自分の記録として文章を書いておこうかなって。


排気口新作公演「怖くなるまで待っていて」終演いたしました。ご来場いただいた方々も、観に来れなかった方々も、本当にありがとうございました。そして、排気口のみんな、客演で今回出てくださった素敵な役者さん、わたしのことを気にかけてくれた友達や先輩、バイト先のみなさん、Twitterで見守ってくれてるみんな、本当にありがとうございました。

2019年4月の排気口「群れたち」で役者として舞台に立ち、どうにかこうにか終演したはいいけど、体調が絶不調の中でやった演劇の稽古と本番には納得いかないことだらけで、そもそも役者というものをどうやってやったらいいのかわからなくなってしまったわたしは、公演が終わってすぐ、役者を少しお休みしたくて主宰の穂波さんに相談を持ちかけました。ただ、排気口には携わりたいって気持ちはあって、どうやって関わろうかなって思って出てきた答えが「制作」でした。

正直制作の仕事をそのときは把握していなくて、穂波さんは「いいじゃん」の一言でわたしが制作をやることを賛成してくれました。それからいろんな話を聞いていくと、すごく大変な仕事を名乗り出てしまったなという気持ちに変わっていきました。ただ、それらの仕事は役者などを兼任しない形で制作がやることで、作品の質は格段に上がると思ったので、一度やると言ったことだし、ちゃんと最後までやり遂げたいなって思って、期間限定で制作をやろうと決意しました。


自分のスケジュールの管理すらできないわたしが十数名のスケジュールを管理するのはすごく難しくて、そこに小道具の作成や調達とか、小屋との連絡でのハプニングとかをこなさなきゃいけない。そして公演2週間前、突然にチケットが完売。馬鹿なことにそんなに早く完売を予想していなかったわたしは準備不足で、キャンセル待ちってどんな制度なの、当日券の有無なんてわかんないし、整理番号ってなに?状態。完売はとっても喜ばしいことで本当によかったんだけど、右も左も初めてすぎて、チケットが売れた日からの二週間、毎朝起きると眉間にくっきりシワができてて、緊張しっぱなしの日々。役者の人たちとも仲良くなりたいのに、自分に余裕がなさすぎて全然話しかけられない。

だけど自分が制作を期間限定でやるからには何かしらしたくて、台本販売だけはやろうってずっと思ってて、本番当日の朝に準備して間に合わせました。だって穂波さんの言葉はいろんな人が読みたいって思うだろうから。配布しようって意見も出たけど、価値を下げたくなかったし、価値が低いものでは絶対にないからお金は1円でもいいから取らなきゃって。結果としてたくさんの方がご購入してくださいました。いま送るために準備してるところなのでお待ちください。ご購入いただいた方々、本当にありがとうございます。

初回公演の後説でその台本販売の告知を言いそびれたり、演劇界隈では滅多にない(と後から知った)10分押しをさらりと宣言して会場をざわつかせたり、全体に共有しなきゃいけない大事なことを大事だと思わなくて共有せず怒られたり、後説言うのを緊張しすぎてクライマックスの大事なシーンで後説をブツブツ練習してる声が会場に若干漏れて怒られたり、お客さんに対しても内部に対してもめちゃくちゃダメダメすぎる制作だったんだけど、公演を最後まで終わらせられて本当に良かったって、ほっとしています。

今回の客演の方々はほとんどがオーディションで選ばせていただいた方達で、オーディションに来る意欲がちゃんとあるからそりゃあわたしよりも経験値がある人がたくさんで、わたしに対して思うことが1000個くらいあっただろうなって思うんだけど、それでも最後までどうにかわたしにやらせてくれて、本当にありがとうございました。何かを言われても受け止められる余裕がなくて、怖くて全然話しかけられなかったけど、本当は客演の人たち全員ともっともっと仲良くなりたかった。時間がもっとあったらいいのにって思ったけど、この時間の中でやることがわたしたちは最良の運命だったはずだから、これで良かったんだろう。もしもまた機会があれば、次は制作と役者としてではなく、一人の人間同士として楽しく接したい。


公演期間中、一人の人間がわたしに放った言葉で「何もやってないくせに」っていうのがあった。この言葉を言われたとき、まさかそんなこと言われると思ってなくて、わたしはカッとなって怒鳴ってしまったんだけど、後で冷静になって制作という仕事は多分そういうことなんだろうって思った。いや絶対に何もやらない役職ではないから言われた言葉は間違いなんだけども。

「制作はスポット当たらないんすよ」って打ち上げで静かに言った中村ちゃん。言葉の重みが違った。彼女はそれでもずっとこの仕事を静かにやり続けてきた。排気口がいまこうやって存在しているのも、見えないところで彼女が支えていたからだろう。わたしは何も知らなかった。知らなかった過去の自分がとっても恥ずかしい、でももう恥ずかしいって思う必要はない。1ミリくらいかもしれないけど経験して知れたから。もっと知らなきゃなって思うけど。

「こんなに素敵な作品が世の中にはあるんだからみんな観てくれ」って堂々と宣言してやれるのが制作という仕事のいいところ。でも一番スポットが当たらないから伝わりにくいかもしれない。もっと余裕を持って、どうやって魅力を伝えようかなってところまで考えながらやれたら良かったな。反省点は尽きなくて、次チャンスが来るかどうかはわからないけど、それでもやれる機会があったら次はああしたい、こうしたい、っていう欲はすでにいっぱい。もしかしたらまた余裕がなくなっちゃうかもしれないけど。


全然文章がまとまらなくて、まだまだいっぱい言いたいこともあるんだけど、あえてこのまだ熱い状態の感情をそのまま残しておこうと思います。制作って仕事を、この排気口の「怖くなるまで待っていて」で初めてやれて、本当に良かったってわたしは思ってます。改めて、わたしが見えないところでわたしなりに努力して作り上げたこの公演に携わってくださった役者、スタッフ、お客様、全ての方々に感謝申し上げます。そしていろんなことを考えながら最後までやらせてくれた排気口の中村ちゃん、田んぼくん、和さん、あきら、カズマさん、そして穂波さん、本当にありがとうございました。

次は役者としてまた舞台に立ちます。また会いたい。

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排気口制作の中村ボリと、酔って前髪が無防備なわたし。いつもありがとう。


排気口 制作 水野谷みき


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