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役所に行く休日

たまに役所に行く用事があって、役所に行く。

前の家も引っ越した今の家も、自分が行くべき役所から徒歩20分以内で行ける距離にある。役所というのは平日の、みんなが働いている時間に開いていることがほとんどだが、私は平日のほうが休みが多いため、なんにも予定のない休みにふらりと思い立って行くことができる。

以前に身分証を作るために何度も何度も往復してから、役所に行くハードルがグッと下がったようだ。そのときの記事がこちら↓

身分証がある今は、だいたい役所に行くときは身分証になるものをいくつかと、ハンコを持っていけばだいたい用事が済ませられそうなので、必ずそれらが入ったポーチを持って行くことにしている。


今日も役所に行った。今日は国民健康保険の脱退手続きをするため。

12月の頭に行ったときは「新しい社会保険の保険証を持ってこないとできません」と言われてしまった。入社してから1ヶ月経っていたけど、新しい職場に提出しなきゃいけない書類が前職の会社から届いていなかったりして、保険証を作るのが遅くなっていたのだった。

その日は何もできずに帰った。家から近くてよかったと思った。そのすぐ後に保険証は家に届いたんだけど、仕事が忙しかったり休みの日に予定が入っていたりでなかなか行けなかった。




役所の人は前まで、私とは生きる世界が違うひとばかりで、なんだか馬鹿にされているような気持ちになりそうで行くのが嫌だった。だって公務員ってお給料が安定しているって言うから、生活に不自由がないだろうから私の気持ちや不自由さなんてわからないだろうと。

それに前に行ったときに、胸の谷間丸出し(の谷間の上にハートのネックレスが乗っかっている)ニットを着た、髪の毛サラサラツヤツヤのぴったり膝上丈スカートを履いたおねえさんに担当された際に、すごく冷ややかな目つきで対応されて、しかも持ち物に不備があって結局その日は門前払いを食らったから。そのあたりから私の中の役所のイメージはかなり悪い。

だけど何度も往復したりするうちに、毎回違う人が出てきて対応することが多いし、中の人はいろんな人がいる。何もかもわからない私に親切に3枚もメモ書きを渡してくれる人がいたり、「そんな感じのテンションで」「オッケーて感じのノリだと思います」とかの言葉で説明してくれる坂本龍一似の冷静なおじさんがいたり、個性で溢れた現場だと思うようになってから、今は抵抗感がなくなった。

何より役所に行くと、ネットで検索かけてもよくわからなかったことを「私のパターン」で質問できてそれを親身に答えてくれるので助かる。社会をうまくやっていけない私だけど、ここにくるとよくわからなかったことを消化して帰れるのがすっきりする。どうしたらとりあえず"真っ当な"道を歩めるのか、道しるべを教えてくれる。


保険料も税金も滞納しすぎて踏み倒そうと何度も思ったし、家に来る払込用紙の山やかかってくる電話を何度も無視し続けたけど、ハサミで切り刻むのも追いつかなさすぎるし、もうどうしたらいいのかわからなくなりすぎて最終的に逃げるのをやめた。だからこうして役所に来て、どうしたら大丈夫なのかを一緒に考えてもらってきた。そのほうが気持ちがずっと楽だと知った。

生活保護とかも考えたこともあった(ちょうど上に貼り付けた記事のときとか)。前の街の生活保護の相談窓口をこっそり探してうろうろした日もある。だけどどうにかこうにかして、新しい街では役所にあんまりお世話になりすぎずにやって来れている。

逆に役所に来ると最近は、自己肯定感が爆上がりして機嫌が良くなる。自分でも全然わけわからないけど。社会に一歩近づいた!みたいな感じなのかもしれない。




今の職場の保険証が届いてからかなり遅くなってしまったが、繁忙期も落ち着いてきたから休みも動けるようになり、やっと行くかという気になった。

汚れがついてしまった白いニットを手洗いしたあと、他の洗濯物も洗濯機で洗う。その間にお昼ご飯を作って食べる。干した後に身支度をととのえる。小さな鞄にハンコのポーチと財布、一応通帳と、マスクの入ったポーチとハンカチなどをぽいぽいと入れる。仕事の日は着れる服が決まってるので、休みの日は好きな服を着る。その好きな服というのもだいたい決まってきてしまっているので、最近は迷う時間も減った。今日行くところはすぐそこだし。


休みの日に散歩をするのは楽しい。何も用事がなくても外に出たりして、適当に歩くのが好きだ。歩くスピードが自然と遅くなるのがいい。景色が流れるのがゆっくり。通勤のときや予定があるときは無意識に早歩きだ。それに荷物も多めなので、最寄駅に着く頃などは体がぽかぽかしている。でも今日は休みだから、ゆっくり歩くし急いでいない。だからあたたかい格好をする。寒い時期のお休みはあたたかい格好をするのが好き。外に長時間いても大丈夫なくらいの。

家を出て住宅街を抜け、車通りの多めの道を歩いていくと役所がある。今日も役所はいろいろな人が出入りしていた。そういえばこないだ行ったとき、対応してくれたおにいさんが月曜日は混みやすいって言ってたっけな。まあ暇だしいいか。

行くべきフロアに行くと、受け付ける前に何人か対応してくれる人が立っていて、声かける前に様子を伺ってくれる。私はもう慣れたので保険とかの窓口にまっすぐ歩いていき、ボタンを押して受付番号をとる。立ってる人に国保の加入ですかと聞かれ、いえ脱退ですと答えると、じゃあこちらに記入してくださいと言われて、ペンと用紙がある立って書ける机みたいなとこに案内される。

前まではこういう公的な紙を書くときに、しょっちゅう下の名前をひらがなで書きそうになったりした。でも最近はそういうこともなく、スラスラと本名を書くことができる。水野谷みきと書く機会が減っているみたいだ。ちょっとだけ寂しい。

3人ぐらい待っているようだったので、椅子に座ってハンドクリームを塗っていると意外にもすぐに呼ばれてしまった。ハンドクリームでこってりとした手で書類をつまむように持ち、まごまごとカウンターへ向かう。

今日は役所の名前が入った作業着のようなものを着たおじさんが対応してくれた。ちょうど数字を読み上げる電光掲示板の横の席で、おじさんは少し声が小さかったので、アクリル板の下にある書類などをやりとりするための10センチくらいの隙間に耳を近づけて話を聞く。穏やかな話し方。私も(行儀が良くない状態なため)より失礼のないように相槌を打ち、いつもより多めに礼を言う。


私の最近の保険事情はちょっと複雑だ。

7月末までは前の街の国保
8月は新しい街の国保
9月は前職の社保
10月の半ばに退職したため社保引かれておらず国保
11月から新しい職場の社保

という感じで、国保の加入脱退をしなかった間に結構面倒臭い感じになってしまっていた。なので私も家に来ている国保の請求が合っているかわからず、ちょっと保険料を滞納してしまっていた。

「あのすみません、ちょっと何かいらない紙とかってありますか?」と私が言う。目の前にあった、裏紙を小さく切ったものの束から一枚ハイと渡してくれて、そこに時系列に沿って上記のようなことを書いた。そしてそれを見せながら説明をする。

「それで保険料、まだ払えてないのがあるんですけど、この感じだと結局どのぐらいの額払ったらいいでしょうか?」

おじさんは首を少し傾げて、お待ちくださいと言って席を立つ。それからしばらくして戻ってきた。

「本当は○月までの間に○円ぐらい払うことになってるんですが、国保の脱退もするので、この感じだと、○円ちょっとで大丈夫です。で、○円は9月にもう払っているので、あとこのぐらいですね」

書類を指差して数字を見せてくれる。この分の払い込み用紙を今お渡ししちゃいますのでコンビニとかで払ってもらう感じで大丈夫です、と言ってまた裏に消えていく。すぐに専用の払込用紙を渡してくれて、今日はこれでおしまいです、と言う。

払込用紙がすぐに出てくるの、すごいなあと思う。払込用紙が印刷できる印刷機が奥にあるのだろう。事務用品とかが無駄にすごく好きで、大きな文房具屋に行くと毎回事務用品のコーナーで家にあるといいなと思い眺めている。複写になる領収書とか、A3くらいまで切れる裁断機とか、方眼紙とか、印鑑押すときに下に敷く小さな緑色の下敷きとか。払込用紙の印刷機も家に欲しいと思ってしまった。全く必要ないのに。払込用紙なんか生成したって払える金はないのに。


できたてほやほやの払込用紙を手に、深く頭を下げてありがとうございましたと言い、まごまごと席を立ち役所を出た。もうしばらくは役所に行く用事がない。見込みよりも3割ぐらい安く済んで嬉しかった。払込用紙を手に持ちながら、役所の通りに出て左右を見ると、コンビニの看板があったのでそこへ向かって歩く。すぐに保険料を払い込んだ。

これで滞納はなしになった。滞納がないって本当に嬉しいし、奇跡みたいだ。

役所の近くにファミレスもあって、そこに入りたくなった。少し浮いたお金で今日のお休みをゆったり過ごせるなと思ったり。ホットケーキとココアを飲んで帰るのもいいなと思ったり。だけどやめた。家にホットケーキミックスもココアもあるから、歩いて帰って自分で作ったらいいじゃんと思った。だって今日はお休みだから、時間もある。


引っ越して数ヶ月した、まだ少し見慣れない街に西陽が射す。きっとさっき干した洗濯物も西陽に照らされてるだろう。ホットケーキにかけたメープルシロップの匂いを思い出しながら、ゆっくりと家に向かって歩き出す。




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私はシンガーソングライターです。うたを作って歌っています。

ここ2~3年ほど、なかなかうたが書けなくてかなり悩んでいました。心を病んだり、コロナもあったりでライブ活動もほぼお休み状態でした。

心の病がここ一年ほどでかなり回復してきました。薬ももう何も飲んでいません。曲はまだまだ書けるようになっていませんが、悩んでてもしょうがないし、好きなことをやることで気持ちが前向きになって明るく暮らせることに気付いたので、noteを書いたりユニットでカバー曲を歌ったりしています。

そのうちライブ活動も少しずつ復帰する予定なので、以後お見知りおきいただけると嬉しいです。


私が書いた曲のミュージックビデオです。昔住んでいた大好きな街で撮影していただきました。もしよかったら見て・聴いてみてください。


それではまた更新しますね。

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