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陸上競技会での写真撮影の在り方を考える

2023年6月1日〜4日に行われた陸上競技の日本選手権。

撮影規制が非常に厳しく、開催前から写真撮影をするファンの間で話題になっていました。

具体的な撮影に関する規制等は以下の通りです。

・通路を挟んだ前方の座席ではスマートフォン/タブレット端末でのみ撮影可能

・通路を挟んだ後方の座席では一眼レフ等のカメラも使用可能

・スタート後方の一部エリアはスマートフォンやタブレット端末を含め一切の撮影が禁止

・1日15席、女性限定のカメラ女子席が新設され、ここでのみ通路より前方から一眼レフ等のカメラを使用した撮影が可能

これらは、日本陸連からの明確な言及こそはありませんが、近年取り組みが強化されている迷惑撮影(※)への対策と考えられます。

※ ~迷惑撮影とは~

迷惑撮影は、競技会での撮影(一次被害)と、インターネットやソーシャルメディア上での写真の活用方法(二次被害)の両者を表す。

競技会での撮影は、密かに撮影を行ったか否かだけではなく(盗撮であったかどうかではなく)、わいせつな撮影であったか、またはそれらを目的とする撮影であったかどうかが問題となる。

https://www.jaaf.or.jp/jch/107/news/article/18043/

今大会に限らず、陸上競技会全般での撮影規制は年々厳しくなっており、撮影をするファンとしては以前から非常にやきもきしていました。

今回は日本選手権での撮影規制を中心に、以前からの疑問等を絡めつつ陸上競技会での写真撮影の在り方を考えます。

現地で感じたこと

まず冒頭で触れた日本選手権での厳しい撮影規制について、迷惑撮影対策としてはほぼ無意味と感じました。

通路後方からであれば一眼レフを使えてしまう時点で、選手をアップで撮影することは可能だからです。

今回の撮影規制を見るに、陸連は恐らくスタート後方からの撮影さえ全面禁止にすれば迷惑撮影に対して一定の効果があると考えたのではないでしょうか。

私自身の体験から、それはとても甘い考えだと思っています。

私は以前、女子選手の写真もSNSに掲載しており、男子選手以上に配慮して競技者としての魅力が伝わるような写真を載せていたつもりでした。

しかし残念なことに、女子選手のユニフォーム姿目的のアカウントからのいいねやフォローがやまず(見つけ次第ブロック・通報をしていました)、
昨年の関東インカレを最後に女子選手の競技中の写真の掲載は取りやめ、過去の写真もすべて削除という対応をせざるを得ませんでした。

配慮、検討を重ねた上で掲載した写真がそういった目的のアカウントに目をつけられてしまったことは凄くショックでしたし、
それらのアカウントはもはや女子選手のユニフォーム姿であればどんな写真でも構わない、と思っているように感じました。

競技場へ足を運ぶ迷惑撮影者も同様で、女子選手のユニフォーム姿なら何でもいい、というスタンスではないでしょうか。

そうであれば、迷惑撮影対策という観点では今回の規制は不十分で、迷惑撮影をさせない、迷惑撮影目的の客をそもそも会場に入れない、といった環境整備を引き続き行う必要があると感じています。

また、今回の観戦中にとても心苦しい現場に遭遇しました。

私がS席の後方で撮影していた際に、すぐ側で撮影をしていた男性が会場スタッフに撮影した写真の確認を求められていました。

挙動やシャッターを切るタイミング、カメラを向ける角度などから一切不審な点がなく、私には純粋なファンの方に見えていたので、この方でも疑われてしまうんだと正直驚きました。

実際に確認後はお咎めなどもなくスタッフが去ったので、盗撮目的ではなかったようです。

カメラを持った男性というだけで疑われてしまうのは、さぞ居心地の悪さを感じたことでしょう。

迷惑撮影者が会場にいることで、純粋な男性ファンまで男性であるというだけで疑いをかけられてしまう現状は、早急に改善の必要があると感じました。

カメラ女子席への真の疑問


ネーミングについての批判は日本選手権のチケット情報が発表された際にTwitterにて言及済みのため今回は触れません。
また、当日の運用でも撮影可能エリアがころころ変わるなど不可解な点が多々あったそうですが、こちらも置いておきます。

ここで言及したいことは2点あります。

まず1点目は、カメラ席を女性限定にしたことで、善良な男性ファンを蔑ろにしてしまったうえで、男性ファンと女性ファンの対立構造を生んでしまった点です。

前項でも触れたように、競技場で写真撮影をしているすべての男性が迷惑撮影をしている訳などなく、純粋に選手を応援する気持ちでカメラを構える男性ファンは沢山います。

私の周りにもそういった方たちがいらっしゃいます。

カメラ女子席が発表された際にTwitter上で様々な意見を見ました。
その中で見られたのが「女はいいよな」「女だけずるい」といった男性ファンと思わしきアカウントのツイートです。

撮影をする女性の立場から言わせてもらうと、

女性にだけ撮影用の特等席をくれだなんて願ったことは一度もありません。

それなのに「女性だから」という理由で特等席の権利を勝手に与えられ、男性からは「女はいいよな」と妬まれてしまう。

あまりに理不尽です。

日本陸連によるカメラ女子席の案内文を読む限り、よかれと思ってやったことと推察しますが(よかれと思ってないのにやるはずないか)、

少なくとも私の周りにはカメラ女子席の存在を喜ぶ女性ファンなんてほぼいませんでした。

ここまで読み進めて、

「迷惑撮影をするのは男性ファンなんだから男性ファンを切り離すのは妥当なのでは?」

と思われた方がいるかも知れません。

そこで触れたいのがもう1つ、女性ファンだから安心とも限らない、という点です。

これは今回の日本選手権での話ではないですが、走り終わった男子選手がユニフォームを捲り上半身が見えている瞬間や、競技後に目立たない場所で着替えてるシーンといった写真がSNS上で出回っているのを過去に何度も見かけてきました。

男性が女子選手の同様のシーンを撮っていたら確実にアウトなのに、なぜ女性が男子選手のこのような写真を撮ってSNSに載せるのは黙認されているのか、以前から疑問でした。
撮られた選手がこのような写真が出回ることを良しとしているかも、甚だ疑問です。

最近社会問題として頻繁に取り上げられていますが、女性が加害者、男性が被害者パターンの性加害は、女性が被害者のパターン以上に男性は被害を打ち明けにくいと一般的には言われています。

女性ファンに写真を撮られることが本当は嫌だと思っていても、言い出せない男子選手だって中にはいるのではないでしょうか。

以前からこのように思っていたこともあり、前述の側にいた男性が写真の確認を求められた際には、

「ちょっとスタッフ、私の写真も確認しなさいよ!」

と、内心では若干謎の方向にキレてました。笑
積極的に見せたいとは思わないですけどね。

このような理由から、女性にのみ特等席を与えて撮影を行わせるという発想に至った日本陸連は、善良な男性ファンの存在女性ファンによる写真撮影の実態が見えていないように思えてとても残念でした。

理想的な撮影規制の提言


私自身を含め写真撮影をするファンにとって、写真撮影の可否は競技会に足を運ぶか否かに大きく関係します。

今年は特に、いつも競技場へ写真を撮りに来ているファンたちを現地で見かけないように感じました。

今年の日本選手権に関しては天候不良など他にも悪条件があったとはいえ、メインスタンドの空席が非常に目立ちました。
これでは出場する選手たちのモチベーションも上がらないのではないでしょうか。

撮影規制の強化と集客は反比例の関係にあり、迷惑撮影対策は選手を守るために必要不可欠な一方、ただただ撮影規制を厳しくするだけでは会場へ赴くファンは減ってしまいます。

では、撮影規制はどうあるべきか。

先ほど触れたカメラ女子席に関してはネーミング、女性限定である点、実際の運用など個人的には多くの疑問が残った一方で、一眼レフを持った観客を一箇所に集約するという点だけは非常に良い着眼点だったと感じています。

撮影者が特定の場所にいれば監視の目が行き届きやすく、迷惑撮影対策として一定の効果が得られるはずです。

これらを踏まえて私が考えたのが、
競技場内に撮影可能エリアを複数設け、そのエリア内でのみ撮影可能
という方法です。

具体的には、メインスタンドのスタート周辺、ゴール周辺、表彰台周辺、サイドスタンドのゴールが正面から見える箇所(今回カメラ女子席が設置された辺り)、など、幾つかのエリアを設け、そこに監視スタッフを配置し監視下のもとでなら自由に撮影OK、といったことを想定しています。

もちろん撮影者の性別は問わず、です。

跳躍や投擲種目の最中にはサイドやバックスタンドにエリアを設けたり、あとは3000mSCで水濠撮影エリアなんてあったら面白いなあとか、勝手に妄想が膨らんでいます。

これなら迷惑撮影対策をしつつ、撮影したいファンもある程度満足できるのではないかと考えています。

日本陸連が今回の撮影規制の成果をどう捉えているかは私には分かりかねますが、間違っても成功だったとは思わずに、今後も撮影規制と集客の黄金比を模索してほしいです。

私の提言が最適解だなんて思っていません。
この投稿をきっかけに多種多様な意見が生まれれば幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。