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小さくてもいいものはいい!富山のお土産プロジェクト。

この事業を通して、新たな取り組みに自ら挑戦を始めた人がいる。自分たちがかかわることで、誰かに変化が訪れることは、とても素敵な出来事でした。今回はそんなプロジェクトをご紹介します。

本記事は、株式会社PCOがこれまで取り組んだ事業について、より深く知っていただきたいと考え、担当者がプロジェクトへの想いや物語をお伝えするシリーズです。そんなところが伝われば嬉しいです。

初回は、2015年の北陸新幹線開業にあわせて実施された「べつばら富山」をご紹介します。

+++本プロジェクトの担当者をご紹介!+++
千田英弥(Emi Senda)
株式会社PCO 取締役・クリエイティブディレクター。
本職はコピーライター。2016年に開催されたG7環境大臣会合の富山県歓迎事業のクリエイティブディレクションおよびコピーライティングを担当。
株式会社PCO・クリエイティブを総括している。

北陸新幹線開業に向けた富山のお土産プロジェクト

ー「べつばら富山」って、どんなプロジェクトでしたか?

北陸新幹線開業に向けて、増加が期待される観光客の皆様が手に取りたくなるお土産づくりを行うプロジェクト。県内のデザイナーとのマッチングを行い、既存商品のパッケージリニューアルや新商品の開発を女性ならではの視点でサポートしました。

プロジェクトには、15事業者が参加し、21アイテムが誕生。商品の発売以降は、「べつばら富山」をキーワードに県内・首都圏で販売キャンペーン、ワークショップ開催などを通じPR活動を行いました。

実はこのプロジェクト、2021年現在も、地道に継続しています。

プロジェクトのはじまり

ー長くつづいているプロジェクトなんですね。プロジェクトの始まりや目的はどのようなものでしたか?

最初に「べつばら富山」のプロジェクトが立ち上がったのは2012年。2015年3月の北陸新幹線開業に向け、富山のお土産をブラッシュアップすることが目的でした。

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それまで、富山といえば寒ブリや白エビ、ホタルイカ等、海産物のイメージが強く、お土産として手軽に渡せるものは限られていました。しかし、旅行する人のお土産として選ばれるのはやはりお菓子や雑貨が主流。

北陸新幹線開業によって首都圏からの旅行客が見込まれるなか、『プチギフト』をコンセプトに、お菓子を中心とした富山らしいお土産の開発がスタートしたのです。

メインターゲットは30~40代女性。おしゃれで思わず手に取りたくなるような商品を目指し、デザイン面を主なサポートとしながら既存商品のパッケージリニューアルや新商品の開発を進めていきました。

ーなるほど!デザインのディレクションが中心のプロジェクトですね。担当者としてこだわりポイントはありましたか?

商品開発の大きな目的の一つとして、商品を通してその土地の魅力を伝え、個々の地域経済の活性化につなげるというねらいがありました。けれど、富山には『いいもの』はたくさんあるのに、それを売り出したり発信したりすることがあまり得意ではないんですね。

北陸新幹線開業を機に、”富山のいいもの”を広く知ってもらい、実際現地に足を運んで体感したいと思ってもらえるような商品づくりや見せ方が求められていました。

そんな中、私たちがこだわったのは、「べつばら富山」を単なる一過性のプロジェクトに終わらせるのではなく、これをきっかけに事業者さんが先へ進めるような仕組みを提供することと考えたんです。

事業者さんが納得して商品開発を進め、それぞれの思いを形にできるよう裏方としてサポートを万全にする。このプロジェクトでの経験を、その後の商品開発や販路開拓への足掛かりにしてもらいたいという想いがありました。

ー実際のプロジェクトはどのように進んだんでしょうか?

一般公募から選定された県内のお土産品生産事業者さんに商品に対する思いやどんな商品をつくりたいかなど、ヒアリングを進めていきました。並行して、事業者さんと富山県内デザイナーをマッチングし、商品開発を進めていきました。

パッケージリニューアルや商品開発に際してデザイナーさんと進めていくのは初めてという事業者さんがほとんど。事業者さんの納得のいくまでマッチングをし、デザイナーさんとのやり取りをスムーズに進められるようにサポートしていくのが私たちの役割でした。

新しい取り組みを進めることに戸惑いう事業者さんたちも、対話をかさねることで、少しずつ自分たちからアイデアを出してくれるようになり、形が見えてくるのを楽しんでくれている様子が見られたのはとても印象に残っています。

短期間・試行錯誤で進んでいった商品開発

ーなんだかワクワクしますね。でも、これだけたくさんの方々とのコミュニケーションはかなり労力がかかることですね。

事業者さん、デザイナーさん、ご依頼主である富山県の担当者さんと、スケジュール管理から意見のすり合わせまで短期間での様々な調整が必要でした。みなさんそれぞれに思いがある中で、「“富山のいいもの”をたくさんの人に届けたい」という共通のゴールを目指して進めていった形です。

パッケージデザインや商品それぞれのコンセプトは「べつばら富山」として統一デザインというわけではなく、事業者さんそれぞれの思いを乗せた個性あふれるものに仕上がりました。

2013年4月に行われた商品発表会では、参加した15事業者から誕生した21アイテムがお披露目となりました。

ーこれだけのアイテムが出そろうなんて、感無量ですね。このプロジェクトは販売まで扱っていらっしゃったんですよね?

そうなんです。商品完成後には、県内や首都圏での販売キャンペーンもプロデュースしました。実際手に取って体験してもらわないことには人々の記憶に残らないだろうということで、大々的な販売キャンペーンの実施を提案させていただきました。

ちなみにこのキャンペーンは、担当スタッフが東京駅のコンコースで数日間はりついて商品の売り子をやるというもの。自らが直接現場に立つことで、顧客の反応をキャッチしたかったので、プロジェクトリーダーの私自身も売り子として現場に入りました。

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ープロジェクトの成果はいかがでしたか?

プロジェクトの狙いである“おしゃれな富山”を発信するという点においては、様々なPRキャンペーンや販売店の拡大などを通して少しずつ認知度が上がっていき、2015年と2020年にそれぞれ新商品を追加し、現在でも県内外で注目を集める存在になりました。

なによりも、このプロジェクトに参画することで、事業者さんの意識が変わっていったことが嬉しいでき事でした。

ーそれは嬉しいですね。具体的にどんな変化でしたか?

プロジェクトを通して新たな「売り方」や「発信の仕方」を経験したことをきっかけに、新たな商品開発を独自に進めていく事業者さんも出始めました。そして、プロジェクトの商品が認知されることによって、既存商品の販路拡大につながった例もみられました。

商品開発を通して県内の魅力ある事業者さんに新しい可能性を開くことができたのではないかと思っています。

ーでは、最後にこのプロジェクトのこれからに一言おねがいします。

私たちはこのプロジェクトを通して、富山県でこだわりを持ってモノづくりをしている事業者さん、職人さんの思いをたくさん聞くことができました。
「べつばら富山」を土台にして羽ばたいていく事業者さんがさらに増え、このプロジェクトが引き続き富山の魅力を押し上げてくれることを願っています。

ーあとがき
2012年から現在に至るまで進化を続けながら発展している「べつばら富山」プロジェクト。今回千田さんのお話を伺って、商品だけでなく、その開発事業者さんたちにもうれしい変化が見られたというのがこのプロジェクトの最大の成果だったのではと感じました。

プロジェクト詳細 https://pcojapan.jp/works/309
話し手:千田英弥(株式会社PCO 取締役 クリエイティブディレクター)
取材・ライティング:東 るに(フリーライター)

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