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Copilot+ PC と ARM版Windows について解りやすく

現在、新型のノートパソコンとして「Copilot+ PC」というものが盛んに売り出されています。
しかしこれは、普通のノートパソコンとは違う、要注意なパソコンです。

この点に関する初心者向けの説明が乏しい気がしたので、note をご覧の方に、できるだけ解りやすく説明しておきたいと思います。

なお、この記事は実際に Copilot+ PC を試用したうえで書いています。
そのレビュー記事については以下をご覧ください。

= Copilot+ PC ってなに?=

マイクロソフトが新たに作った「AI に強いノートパソコン」の規格です。

パソコンの頭脳である CPU に、新型の AI 専用の処理装置(NPU)が入っているものが使用されています。

今年の初めから見かけるようになった Core Ultra や、Ryzen 8040 シリーズという CPU にも AI 専用機能(NPU)が入っているのですが、これらは NPU の性能がそれほど高くありません。
Core Ultra は 10TOPS、Ryzen 8040 シリーズは 16TOPS という能力値なのですが、Copilot+ PC に認定されるには 40TOPS 以上が必要です。

そして2024年5月、「Snapdragon X Elite」という NPU 45TOPS の性能を持つ CPU が登場しました。
今のところ(6月時点で)Copilot+ PC には、Snapdragon X を使ったノートパソコンしか認定されていません。

Copilot+ PC に認定されるには、メモリ(一時的なデータ置き場)が 16GB 以上、ストレージ(長期的なデータ倉庫)が 256GB 以上と言う条件もあるのですが、この辺は今どきのノートパソコンなら(安物でなければ)普通に備わっています。

しかし Snapdragon X は、制約の多い ARM版Windows しか使うことができない欠点があります……

= ARM版Windows ってなに?=

Snapdragon(スナップドラゴン)という CPU は ARMプロセッサ と呼ばれるタイプで、これは普通の Windows では動きません。
ARM版Windows というものが必要になります。

これは、ファミコンとメガドライブの違い、iPhone と Android の違い、と例えるのがわかりやすいでしょうか。
ファミコンのゲームはメガドライブやプレステでは動きません。
iPhone のアプリは Android では動きません。
Android のアプリを動かすには Android 用に作られていないといけません。

同様に、Windows のCPUやソフトウェアは、ARM用の環境では動きません。
ARMのソフトやCPUは、一般の Windows では動きません。
ARM用のソフトを使うには ARM版Windows でなければなりません。

ちなみに、Apple の Mac というパソコンもARM系になります。
ですから当然、Apple のパソコンで Windows のソフトは使えません。

いま Copilot+ PC に使われている Snapdragon X Elite というCPUはARMプロセッサですから、ARM版Windows しか使えないのですが、普通の Windows のソフトが ARM版Windows では動かないということは……

現在(6月時点で)発売されている Copilot+ PC は全て、動かない Windows のソフトがとても多いということになります。

一応、ARM版Windows も Windows なので、全部のソフトがダメというわけではありません。
古いものなら動きますし、ワードやエクセルなどを含む Office や、フォトショップなどはARM対応版が公開されています。

しかし、新しいソフトやゲームに非対応なので、色々なことをやろうとすると出来ない、ということになりがちです。

=Snapdragon X Elite の利点は?=

じゃあ、なんでそんな不便なARMプロセッサを使ってるの? という話になりますが、大きな理由は消費電力の少なさ。

ARMプロセッサは元は家電用だったので、性能は低めでしたが、消費電力が低く、発熱も低く、安定して動きました。
Snapdragon や Apple のCPUはそれをすごーくパワーアップさせたもので、省電力で静かに効率よくパワーを出すことができるのです。

また、Snapdragon は Android スマホに使われていたCPUなので、少ない待機電力でネット回線に常時接続でき、起動も早いといった、スマホの特性を引き継いでいます。

現時点で最後発のCPUなので性能が高く、先ほど述べたように高い AI 機能も持つため、マイクロソフトが Copilot+ PC の先鋒にこれを選んだのも納得できます。

それでも、動かないソフトウェアが多いという不便さは大きな難点で、いま Copilot+ PC を選ぶなら、それが自分に合っているかどうかしっかり判断する必要があります。

例えば、ゲームはしない、ビジネスで Office を使うのがメインという人なら、むしろ普通の Windows 機より向いています。
SNSやNote、ブログの更新ぐらいしかしない、あとは動画やウェブサイトを見るだけ、といった人にも良いです。

逆に、ゲームをしたい人はダメです。
また、色々なソフトウェアを使っている、多様な作業や創作を行いたい、といった人は避けるべきです。

これから普通の Windows が使える Copilot+ PC も登場します。
日本での普及は秋~冬以降になると思いますが、ノートパソコンが欲しい方でも早急に必要でないなら、そちらを待って判断する方が無難でしょう。

最後に、改めてになりますが、もっと詳しく Snapdragon X Elite 搭載の Copilot+ PC について知りたい方は、以下のレビューをご覧ください。
既存のCPUとの性能比較、約20タイトルのゲームの動作報告なども行っています。

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