SWPBS導入の鍵:未来を見据えたビジョンの共有
学校規模ポジティブ行動支援(School-Wide Positive Behavior Support; SWPBS)の実施に向けて、最初に取り組むべきことの一つはチームを作って議論することです。議論を通して明確になっていくビジョンは、単なる目標設定というだけでなく、学校全体がどのような環境を目指し、そこで育つ子どもたちにどのような力を身に付けてもらいたいかを示す大きな指針です。だから、議論の中に未来の社会を見据えた視点があると、今の時代にフィットしたビジョンを描くことができるでしょう。
学校教育に求められるビジョン
ビジョンを描こうとするとき、子どもたちと日々向き合いながら見える課題や行動は、重要なヒントとなります。ただし、そうした日々の積み重ねから、子どもたちに身につけてほしいことは何でしょうか?これからの時代、予測困難な変動や複雑さが増す「VUCA時代」と呼ばれています。この時代を生き抜くために、学校は子どもたちに何をしてあげられるのでしょうか?
学校では、これまでも子どもの知識や技能の習得を支える存在でした。しかし、これからの時代にあって子どもたちに役立つ学校であり続けようとするならば、私たちが考えるべきは、知識を詰め込む方法に留まりません。未知の状況に柔軟に対応し、自ら課題を見つけ解決する力をどうやって身にけてあげるか、ということではないでしょうか。変動性(Volatility)や不確実性(Uncertainty)に対応するためには、頭でっかちになるのではなく、行動力や適応力が必要です。複雑性(Complexity)や曖昧性(Ambiguity)の中でも自信をもって自分の行動を決める意思決定の力こそ、次世代の子どもたちに求められるスキルではないでしょうか。
巨視的なビジョンの重要性
実は、SWPBSを導入するにあたっても、こうした社会情勢は無縁ではありません。子どもたちの長期的な成長を見据えた支援体制づくりの議論には、子どもたちが生きる社会がどのようにあるか、という視点が重要になります。大人たちが真剣に「この子どもたちはどんな未来に向かって成長すべきか」を議論できれば、ビジョンは自然と明確になり、より強固な支援体制が築けるはずです。
そしてそのビジョンは一度決めたら終わりではなく、組織が進化するたびに見直し、新たな教職員と共に再確認するものです。これにより、変わりゆく環境にも柔軟に対応できる組織を作り上げることができるのです。
SWPBSが提供する枠組み
SWPBSには、こうしたビジョンを実現するための実践、システム、そしてデータに基づく枠組みがすでに備わっています。技術的なステップも大切ですが、出発点として「どんなビジョンを描くか」「そのビジョンをどう共有していくか」が、何よりも大事です。学校全体で描くビジョンが明確であれば、SWPBSの導入が一時の組織改革ではなく、子どもたちの未来に真に貢献する実践となるのです。
まとめ
SWPBSを成功させるためには、具体的な手法だけではなく、未来を見据えたビジョンを学校全体で共有し、継続して見直すことが鍵です。VUCA時代に求められる力を育むために、どんな学校環境を整えるべきか。そしてその環境を作り上げるためにSWPBSがどう役立つのか。SWPBSを導入するときには、子どもの未来につながる学校のビジョンについて、チーム全員で一緒に描き出してみませんか?